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衆の子、毛利の子  作者: ルビー
第4章・播磨動乱
34/55

第30話・救援の宇喜多軍

【天正5年・毛利元広】


「間に合いますか?」

「いくら総攻撃を始めたとはいえ、

 今まで落とせなかった城をすぐ落とすことはできないだろう」

「忠家殿、兵がついてきてませんが」

「えっ?

 おい、何をやっているのだ」

「忠家殿、もうちょっとゆっくり行けば良いのでは」

「そうだな。少し進軍の速さを緩めよう。

 今度はついてこい」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「そろそろ上月城です。忠家殿」

「そうか。気を引き締めねばな」

「「ガシャガシャ」」


何の音だ?


「何者だ」


忠家殿が訪ねた瞬間、草むらから男たちが出てきた。


「あっ」

「ん?」


これは、桐の紋。

ということは・・・。


「羽柴軍だ」

「おぬしら何者だ。

 わしは羽柴家家臣・蜂須賀小六」

「わしは宇喜多直家が弟・宇喜多忠家である」

「宇喜多か。ならばここを行かせるわけにはいかぬ。

 いざ勝負」

「受けて立つ」


やるんですか?


「覚悟っ」


その言葉とともにそこは戦場と化した。

男たちが暴れまわり、敵味方区別が全くつかない。


「元広殿、早く刀を抜きなされ」

「えっ?」


あっ、そうだ。


「首、貰ったー」

「そうはさせない」


「「カキン」」


やはり最近刀を使っていなかったからこちらが不利か。

だが、向こうは徒歩、こちらは馬に乗っている。

ならばここは押しとおす。


「あーー」


勝ったか。


「覚悟せよ」

「またか」


これじゃ、いくら戦ってもきりがない。


「元広殿、元広殿は何処じゃ」

「忠家殿、ここです」

「元広殿、ここは撤退じゃ」

「はい」


仕方ない。


【天正5年・小寺官兵衛】


「蜂須賀軍が宇喜多とぶつかったらしい。

 何とか勝利したそうだが」

「秀吉様、勝ったのであればこの作戦に支障はありません」

「金で雇ったものを城内に入れ兵糧を減らし、指揮を落としたうえで攻め落とす。

 その上、宇喜多の援軍まで来ないとなれば、これほど都合のいいことはないであろう」

「戦はいつ戦況が変わるやもしれませぬ。

 油断は禁物ですぞ」

「わかっておるわ。官兵衛」

「これで播磨における織田の影響力は決定的となるでしょう」


【天正5年・上月城内】


「抵抗ももはやこれまで」

「殿、後追いさせていただきます」

「済まぬな。このような主で」

「何を仰せでありますか」

「正澄、あの世でうまい酒を飲もうぞ」

「ははー」


【天正5年・毛利元広】


「申し上げます。上月城落城。

 城主・赤松正範殿、御自害」

「下がってよいぞ」

「はは」

「元広殿、この場合はどうする」

「織田の軍勢に負けたうえその直後に上月城が落城するとは、

 兄上や叔父上になんて言えばいいのか」

「これはただでは済まされないでありましょうな」


これは目出度くない正月を迎えそうだ・・・。

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