第30話・救援の宇喜多軍
【天正5年・毛利元広】
「間に合いますか?」
「いくら総攻撃を始めたとはいえ、
今まで落とせなかった城をすぐ落とすことはできないだろう」
「忠家殿、兵がついてきてませんが」
「えっ?
おい、何をやっているのだ」
「忠家殿、もうちょっとゆっくり行けば良いのでは」
「そうだな。少し進軍の速さを緩めよう。
今度はついてこい」
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「そろそろ上月城です。忠家殿」
「そうか。気を引き締めねばな」
「「ガシャガシャ」」
何の音だ?
「何者だ」
忠家殿が訪ねた瞬間、草むらから男たちが出てきた。
「あっ」
「ん?」
これは、桐の紋。
ということは・・・。
「羽柴軍だ」
「おぬしら何者だ。
わしは羽柴家家臣・蜂須賀小六」
「わしは宇喜多直家が弟・宇喜多忠家である」
「宇喜多か。ならばここを行かせるわけにはいかぬ。
いざ勝負」
「受けて立つ」
やるんですか?
「覚悟っ」
その言葉とともにそこは戦場と化した。
男たちが暴れまわり、敵味方区別が全くつかない。
「元広殿、早く刀を抜きなされ」
「えっ?」
あっ、そうだ。
「首、貰ったー」
「そうはさせない」
「「カキン」」
やはり最近刀を使っていなかったからこちらが不利か。
だが、向こうは徒歩、こちらは馬に乗っている。
ならばここは押しとおす。
「あーー」
勝ったか。
「覚悟せよ」
「またか」
これじゃ、いくら戦ってもきりがない。
「元広殿、元広殿は何処じゃ」
「忠家殿、ここです」
「元広殿、ここは撤退じゃ」
「はい」
仕方ない。
【天正5年・小寺官兵衛】
「蜂須賀軍が宇喜多とぶつかったらしい。
何とか勝利したそうだが」
「秀吉様、勝ったのであればこの作戦に支障はありません」
「金で雇ったものを城内に入れ兵糧を減らし、指揮を落としたうえで攻め落とす。
その上、宇喜多の援軍まで来ないとなれば、これほど都合のいいことはないであろう」
「戦はいつ戦況が変わるやもしれませぬ。
油断は禁物ですぞ」
「わかっておるわ。官兵衛」
「これで播磨における織田の影響力は決定的となるでしょう」
【天正5年・上月城内】
「抵抗ももはやこれまで」
「殿、後追いさせていただきます」
「済まぬな。このような主で」
「何を仰せでありますか」
「正澄、あの世でうまい酒を飲もうぞ」
「ははー」
【天正5年・毛利元広】
「申し上げます。上月城落城。
城主・赤松正範殿、御自害」
「下がってよいぞ」
「はは」
「元広殿、この場合はどうする」
「織田の軍勢に負けたうえその直後に上月城が落城するとは、
兄上や叔父上になんて言えばいいのか」
「これはただでは済まされないでありましょうな」
これは目出度くない正月を迎えそうだ・・・。




