第29話・播磨動く
【天正5年・羽柴秀吉】
「うむー」
「どうしたしましたか?秀吉様」
「官兵衛か。
西播磨をほぼ支配下に収めたが上月城の赤松政範が従わん。
どうしたものか・・・」
「そうなれば攻め滅ぼすしかございません。
一刻も早く上月城へ向かいましょう」
「そうだな。
今すぐ上月城へ向かうぞ」
【天正5年・毛利元広】
我々毛利軍は播磨から撤退し、備中松山城にいた。
「元広、上月城が織田に狙われている」
「叔父上、何が言いたいのですか?」
「そう慌てるな。
隆景と相談したが、上月城に援軍を送る。
大半が宇喜多の軍勢だが、宇喜多は何かと信用ならない。
それでお前には宇喜多の監視という役をしてもらいたい」
「監視ですね。わかりました」
「頼んだぞ」
「はい」
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それから幾日後、
俺は兵を率いて宇喜多の居城・岡山城にいた。
「元広殿、お待ちしておりました」
「忠家殿ですか。
毛利元広で御座います」
「宇喜多忠家で御座います。
このたびは宇喜多軍の総指揮を務めさせていただきます」
「宜しくお願いします。忠家殿」
【天正5年・小寺官兵衛】
「官兵衛、なかなか落ちんな。この城」
「官兵衛殿、このままでは毛利の援軍が来てしまう。
そうなるとさらに攻略が難しくなりましょう」
「半兵衛殿の言い分はもっとも。
この先毛利が来ては落とすことはまず不可能。
兵をまとめて一気に攻めのぼりましょう」
「それでは今までと一緒ではないか」
「秀吉様、それはこの官兵衛にお任せを」
【天正5年・毛利元広】
「わしは兄を信用できぬ」
「直家殿をですか」
「ああ。あの人の考えておることがまるで分らん」
「私の兄も優柔不断なところがありなかなか難しい」
「お互い。そのような兄を持ち大変だな」
「そうですね」
「忠家殿」
「どうしました。明石殿」
「織田が上月の一斉攻撃を始めたと、手の者が知らせてきた」
「元広殿、これは急いだほうがよろしいな」
「ですね」
【天正5年・三木城】
「長治殿、今立ち上がれば播磨一国を貴殿に」
「何を申すか。我が別所家は織田に他意はない。
このような話、受けるはずが無かろう」
「叔父殿にはもう話は通してある。
別所家内も、それに向けて動いでいるであろう。
長治殿さえ承認していただければ、
我らも一気に立ち上がりますゆえ」
「何を・・・」
「今立たねば、機を逃すこととなりますぞ」
「どういう意味だ?」
「それは、いずれわかります」
「・・・」




