第2話・毛利隆元に拾われて
時は戦国時代
中国地方では栄華を極めていた周防の大内義隆が
家臣・陶晴賢に討たれいた。
陶晴賢は安芸の豪族・毛利元就に協力を求めるも毛利元就がそれを拒否。
それに怒った晴賢は2万の軍勢を率い厳島に出兵する。
しかし毛利元就の奇襲にやぶれ晴賢は討ち死。
毛利元就は中国地方中に名の知れるところとなった。
永禄5年
その毛利元就率いる毛利軍が月山富田城下に侵攻という噂が
城下を駆け回った。
あれ?毛利軍が月山富田城を攻めるのはもっと後のはずじゃ・・・
それはいっか。それより、このことを母上に知らせないと。
「母上~」
「どうしたの?そんなに慌てて」
「この城下で戦が起こるよ」
「そうかい」
「そうかいって、戦だよ」
「戦って言ったって、こんな奥まったところまで、
攻めては来ないよ。
それより、水汲み、ちゃんとしたの?」
「してません」
「じゃあ、早くやっちゃいなさい」
これで油断したのがいけなかったのだろうか。
一週間後、毛利軍が月山富田城下に侵攻。
この奥のほうまで兵士が流れ込んできたのだ。
尼子家の将兵が逃げ込んできたらしい。
もう、全く持って迷惑だ。
その逃げてきた将兵の人は、
人に迷惑をかけることをわかっていないのか。
こういうのを自己中心的っていうんじゃないのか?
「頼もう」
なんだ?
俺は玄関を少し覗くと、
甲冑に兜をかぶった完全に戦国武将っていう人が数人立っていた。
その先頭に立っているおじさんは
毛利家の家紋がついている甲冑をつけているので、
毛利家の人だろう。
ああ、なんで俺はこういう人たちに転生できなかったんだ・・・
「はい」
少し遅れて母上が玄関に出ていく。
「お前、ここに尼子の兵をかくまっていないだ・・・」
なんだ?なぜ黙る。
もしかして母上に一目ぼれ?
ヒューヒュー。
まあ、確かに母上は年の割にきれいだけど・・・
「福・・・」
「隆元様・・・」
えっ?なに?知り合い?
「ごめんなさい」
しばらくすると、母上が家の奥の部屋に逃げて行ってしまう。
「待って・・・」
すると、一番前にいるおじさんが母上を追って家の奥に。
せめて草履は脱いでくれませんか・・・
まあ、しばらく二人を観察・・・
そう思い、俺は二人のいる部屋を覗く。
すると、二人はちょうど話し始めていた。
「福、なぜあの時俺の前から姿を消したんだ」
「それは、貴方の子を宿してしまったから・・・」
「福、だからと言って」
「私の家はそんなに裕福じゃない。
この子をあなたのところで生んでも苦労を掛けるだけだと・・・」
「福・・・」
母上とおじさんの感動の再開?を果たしているところ、
玄関から声が聞こえてくる。
俺が玄関のほうを覗くと、おじさんと一緒にいたおじさんたちと、
新しく来たおじさんたちが戦っており、
その新しく来たおじさんの一人が
母上とおじさんがいる部屋のほうに入っていく。
だから、草履を脱いでって言ってるだろ。
「毛利隆元、てめえの命、貰いに来たぜ」
「何をぬかす」
え?毛利隆元って、あのおじさんのこと?
うそっ、有名人登場してたんかい。
毛利隆元って毛利元就の御長男の方でしょ。
なんでこの屋敷に?
「おお、姉ちゃん、きれいだね。
おれんとこに嫁に来ない?
楽させてやるぞ」
な、なに~。
母上を姉ちゃんと呼ぶとは。
もー、我慢ならない。
この木刀で母上を姉ちゃんなんて呼ぶやからをぶん殴ってやる。
「やー」
「「ガチン」」
「痛って」
男は地面に倒れる。
どうだ。見たか。母上を姉ちゃんなんて言ったから、
罰があったったんだ。
俺が満足げにしていると、
俺が目を話しているうちに、
母上が何者かに切られていた。
そしてそこには真っ赤に染まった刀が畳に落ちていた。
「は、母上~」
俺は泣いてしまった。
だれが、誰がこんなことを。
「隆元様、玄関にいた雑魚、片付けました」
「そ、そうか・・・」
雑魚なんて関係ない。
誰か母上を助けろよ。
すると、そこに妹の美祢もやってきた。
「えっ、母上?母上~」
俺ら兄妹は泣き崩れる。
「お、興丸」
「は、母上?」
母上が話し始めた。
「興丸、貴方に話しておかないといけない、行けないことが?」
「なに?」
「あなたは、隆、隆元様の、子供なの」
「えっ・・・」
「興丸、美祢のことを頼むわね。
美祢、元気でやるのよ」
「母上~」
それから、母上は全く動かなくなった。
すると、その後ろから、例のおじさんが声をかけてきた。
「おぬし、興丸といったな」
「は、はい」
「歳は、いくつだ?」
「8歳です」
「八つか。おぬしの木刀の腕前、見事だった。
行くところがないのであろう?
それなら、妹とともにわしのところに来るがよい」
「いいのですか?」
「いい」
「ところでおじさん」
「おじさんって、私の名は毛利隆元だ」
やっぱり、あの毛利隆元だったのか。
「あの、隆元さん、草履脱いで」
「えっ?あっ、済まん」
こんな調子で、俺の新しい生活が、幕を開けるのだった。