第14話・鹿之助の夢
今回はちょっと長いです。
【永禄13年・山中鹿之助】
「鹿之助、準備は整った。
いつでも応戦できるぞ」
「叔父上、ありがとうございます。
我々の夢、尼子再興を成し遂げましょう」
「よしっ」
【永禄13年・毛利輝元】
元広の奴、落ち込んでいると聞いていたがまったくそんな気を見せないではないか。
せっかく慰めてやろうと思っていたのにな。
「輝元、準備はよいか?」
「はい、いつでも行けます。祖父上」
「では、尼子を、滅ぼすか」
「ですね」
【永禄13年・毛利元広】
「出陣前にあれだけ言ったが、結局ともに戦うか」
「そうなってしまいましたね」
「よいか。尼子には山中鹿之助という猛将がいる。
大内義隆もこの男に苦汁を強いられ、結果的には敗北している。
この男の実力は本物だ。十分注意せよ」
「ご忠告、ありがとうございます」
山中鹿之助。とうとう出てきたか。
どんな奴かは知らないけれど、きっと倒してやる。
【永禄13年・山中鹿之助】
「東の方向から毛利が攻めてきております」
「そうか。ではこちらも出ましょうか。
叔父上は西のほうを。
毛利は両方向から攻めてくるでしょう」
「わかった。東は頼んだ。鹿之助」
【永禄13年・布部山】
「毛利本隊が布部山を攻めはじめました」
「そうか、わかった。元広、我らもでるぞ」
「はいっ」
「これは・・・」
「結構な乱戦だな。
尼子もここで月山富田城に入られたら終わりだと思っているのだろう。
元広、一皮むけたお前を見せてもらうぞ」
「は、はい」
「行けい」
「「やーーー」」
これは、大友との戦いよりもすごい勢いではないか。
だがここでひるんでいてはあの時と同じ。
目指すは尼子の大将だ。
【永禄13年・立原久綱】
「立原様、西からも攻撃が始まっております」
「ええぃ、兵をそちらに行かせろ。
ここで負ければ、尼子の再興も夢となるぞ。
抑えろ。抑えるのだ」
【永禄13年・毛利元広″布部山″】
「元広、この先に尼子の勇将・立原久綱がいるらしい。
一気に突っ込むぞ」
「はいっ」
ここまで来たら勝つまでだ。
「叔父上、あそこですか?」
「あそこだ。皆の者、かかれぇ」
「「あーーー」」
【永禄13年・立原久綱】
「「あーーー」」
「皆の者、行け」
「「やーーー」」
ここを落とすことはできないのだ。
ここを落とせば、今までなし得てきた出雲奪還は意味のないものになってしまう。
わしの、尼子の野望は夢になってしまう。
「わしがでる。敵を打ち崩すぞ」
【永禄13年・毛利元広】
「山の上に登れ、陣を落とすのだ」
「元広、それほど焦るな。
焦りは負けにつながる」
「そうですか。叔父上」
落ち着け。落ち着け。
もう興奮が抑えられない。
どうするか。
「戦は興奮するのが当たり前だ。
人を殺めているんだからな」
お、叔父上。俺の心が読めるのか?
「元春様、隆景様の軍勢がこちらに来ております」
「わかった。
このまま隆景の軍と合流して本陣を攻略するぞ」
「兄上、お待たせいたしました」
「いや、隆景がいい具合で来たからな。
これで終わらせるぞ」
「はい」
この兄弟、揃うとすごい・・・・。
「元広、何している。いくぞ」
後ろからいこ。
【永禄13年・毛利輝元】
「のろしか。
どうやら陣が落ちたようだな」
「どうしますか?祖父上」
「元春たちと合流して月山富田城に入るぞ」
「はい」
今回は出番なしか。
やっぱり叔父上にはかなわないか。
【永禄13年・山中鹿之助】
のろし?
「あののろしはなんだ」
「山中様、あれは毛利のもので御座います」
なにっ、ということは、叔父上がやられてしまったか。
「くっ、撤退じゃ。早く退け」
私の夢も、夢で終わったか。
いや、夢では終わらせぬ。
必ずや、尼子家再興を。