第8話・元服!毛利元広
大変遅れてしまい申し訳ございません。
【永禄10年・毛利興丸】
ついにこの日がやってきた。
そう、俺の元服である。
俺は幼名を捨て、名乗りを毛利元広と改めた。
元広の「元」の字は、兄上からもらったものである。
「興丸、いや、元広元服おめでとう」
「兄上、ありがとうございます」
「これから働いてもらうぞ」
「はいっ」
この日から、俺の家臣生活が始まった。
一応、当主の弟である俺には城が与えられた。
″多治比猿掛城”
祖父上の代から重要な城らしいがとてもそうは思えない。
なんだこのボロボロ具合は。
絶対に長年放置されていそうな城じゃないか。
まあ、それはそれとして問題はもう一つ。俺の家臣にある。
「殿、あまり動き回らないでくだされ」
この男が俺の家臣となった香川春継。
祖父上に重用されていた?らしいが、叔父上の強い要望により俺につけられることになったらしい。
だがこの男、かなり癖のある。
「す、済まん」
「殿、あなたは戦で戦功を上げねばいけませぬ。
ただでさえ家中で風当たりが強いにもかかわらず武功を上げないとなれば
とうとう見放されますぞ」
「わ、わかっている」
この男、口を開けば武功武功。
うるさいくらいに武功武功。
俺を見たなら武功武功。
……誰か助けて……
【永禄11年・毛利元広】
今日、出陣の命令が出た。
そう、これが俺の初陣になる。
そう、叔父上がいるから大丈夫だ。
そう、祖父上のいるから大丈夫だ。
そういえば、合戦って殺し合いなんだよな。
そういえば、合戦って討ち死にとかありえるんだよな。
べ、別にビビってるわけじゃない。
べ、別に・・・・
「殿、何をやっている。
早く出陣の準備を」
「ビ、ビビってないよ」
「何を言っているのですか」
「い、いや・・・」
「戦に出る前からその調子では、戦場に行っても使い物になりませぬな」
「そ、そんなことはない。俺が敵を倒してやる」
「戦場はそれほど簡単なものではございません。
とにかく早くご準備を」
さっきは武功武功言ってたじゃないか。
【永禄11年・吉田郡山城】
「父上、万事整っております」
「そうか、それで隆景、秋月のほうは?」
「は、そちらも問題なく」
「今回は元広の初陣じゃ。どのような働きをするか楽しみじゃ。のう、元春」
「はい、私が鍛えた成果を出せればいいのですが・・・」
「なに、おぬしがどうしてもいい元広の家臣につけた春継が居るのだ。
問題ないであろう」
「は、あのことは誠に有難うございます」
「まあのう、奴には優秀な家臣をつけてやらねばいけなかったから、ちょうどよかったわ。
では、元春、隆景、出陣じゃ」
「「はっ」」
※2015年12月29日
会話部分を変更