声と引き換えに恋は叶うの?
「しかし、自分で言うのは何だけど。
こう目立つ面々が見事にいない物として扱われる光景はどうにも異様だな」
とセシル様が言った。元々の見目の良さも言わずもがな。さらに今日の衣装で二割り増しの威力を誇っている。うん、人目引くのは容易に想像できる。
「……まぁ、これで色々はっきりとわかったじゃないですか」
「いい人避けができたなぁ。いいモノ拾った」
「まぁ、お役に立てて光栄です」
と陛下とカイトに話しかけた。というか落し物じゃないです、私。落とし者ではあるかもしれないですけど。人権はいずこ?
お腹も膨れ、ひと段落して。カイトの肩を借りて立っていた。ヒールで足が少し痛い。陛下たちはというとまた社交の場に戻った。今度はお腹も膨れたし頭に養分行って、しっかり動くから今度は心配ないそうだ。ていうかアレってお腹すいた所為で起きた事件だったんですか……? それと、カイトは参加しなくてもいいのだろうか。
くるくると私達の眼前では女性と男性がペアになって踊っている。その様は夜の闇の中で淡い光源で照らされた舞台は幻想的で先刻の王様のトンデモ挨拶を抜きにしても感動ものだ。
「綺麗だ……」
「そうか? 普通だろ」
……え。綺麗でしょ。
「何で普通?」
「だって当たり前のものだし」
つまりはもう慣れ親しんだものだから感動なんてない、ということか。
「踊るか?」
とスッと右手をとられた。エスコートというやつなのだろうか。
「踊り方わかんないよ?」
とグッと身を後ろに引いた。ヒールで踊るとか難易度高い。踏んだら痛いと思います。
「大丈夫、なんちゃってでいいからさ。教えるし」
と、外のテラスに連れてこられて、彼はステップを踏んでお手本を見せる。ちなみにヒールは脱いで裸足。だって洒落にならない。下手したら足の骨砕けると思うよ……。ピンヒールは凶器です。
それにはカイトも同意だったようだ。痛いものは痛いだそうです。うん、だよね。
「まずは俺の肩に手を置いてもう片方を俺の手に
それでさっき見せた手本のとおり三拍子で動いてみる」
とえらく簡単に説明されたので、なんとなくさっき見た人たちの雰囲気を真似てステップを踏んでみた。右、左、右とぎこちなく足を動かす。
1.2.3とカイトがリズムを取って腰を引いてなんとなく動く方向へ誘導してくれる。
「そう、上手い上手い……、次はもう少し膝を柔らかく。ステップさえちゃんと踏めば俺があとは何とかできるから」
と上から声が降ってくる。
「目線は上、俺の眼を見て」
とくい、と顎を上げられる。日本人は基本的に目を直接見て話さない人種です。
どうにも首が硬直してしまって自然に動いている気がしない。
「……なんか固い、もう少し力抜いて」
無理です。
――There was a little boy and a little girl,
Lived in an alley;
(小さな男の子と小さな女の子が裏通りに住んでいました)
それでもある程度の時間遠くから聞こえてくる音楽に、そしてカイトが刻む1,2,3の拍子に合わせてステップを踏み続けて、だんだんと自然にそれらしく踊れるようになってきて。
「うん、それっぽくなってきたんじゃない?」
「だな、楽しいか?」
「うん、楽しい」
トン、トン、トンとステップを早送りにしてみる。
――Says the little boy to the little girl,
Shall I, oh, shall I?
(男の子が女の子に話しかけました あのねっ あのね……)
基本のステップはそのままに自分の動きを真似るように、とまたカイトが促し、それに合わせて私も踊りの曲調を変えていく。くるくる、と回っているとひょいっと身体が抱き上げられて、それに身を委ねてふわっと身体が振り回される。……すごい身体が軽くなった錯覚に襲われる。こうもひょいひょいと簡単に抱き上げられてると。
――Says the little girl to the little boy,
What shall we do ?
(女の子が男の子にいいました なんの ごよう?)
「ホント、無意識って怖いな」
とポツリとカイトがつぶやく。
「……? 何が」
「んー、何でもない」
「そう」
Says the little boy to the little girl,
I will kiss you!
――男の子は女の子にいいました 君にキスしてあげたいの!
「まぁ、まだ大丈夫だろう」
「……だから何が」




