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ある日の午後  作者: ラゼル
Chapter 2
22/72

ライフカードの有用性

今回は長めです。それと章分けしてみました。

タイトルもかぶっているので変えなければと思いつつ。

迷走しております。このタイトルにしといてあとで内容変わったらまた変えるっていうのはなしかな…やっぱり。


ふう。やっと普通にかけるようになってきました。芽衣もカイトも微塵も動いてくれなくて四苦八苦しました。丸一日空けちゃうともう駄目みたいですね、最低でも数行描いておかないと。

 



 カイトが刻一刻(こくいっこく)と近づいてくる。

もうこの突如起こった混乱状態では何をしてももう知ったことではない!

なんでうっかりあんな眼をうかつに見てしまったのか……。


 ――よし! ここはライフカードだ!!


 1、いつもどおりを全力で装う。

 2、何か他のもので釣って気をそらせる

 3、抱きついてみる

 4、ダッシュで逃走する

 5、蹴りを入れてみる



 さぁどうする!??



「…………。」


「…………。」


 あれ!? なんか妙な緊張感がお互いの間に流れている。

私の様子から何かを感じたのか、私の一歩手前でカイトが停止した。

実況するならば、両者相手の出方を見ながら睨み合っておりますー!! かな。


――っっ! もう駄目だ。なんでもいいから行動を起こそう。

何かしら事態が動くだろう。もー。なんでこんなことに精神削らなきゃならんのだ。



「せいっ」

と足をカイトの脛をめがけてシュッと勢いよく飛ばす。

いやー。私腕力ないから喧嘩は基本足技なんですわ。


しかしそれはさっと避けられる。なかばそれは予想がついていたのですぐに次の行動に移る。

両足を肩幅くらいに離して、踵にダンッと力を入れて左足で回し蹴りを放つ。



 パシッと音がして身動きが取れなくなる。


――あ。


「おい。」


――にょああああぁぁぁ!?!!!


なんか怒ってるー。怒ってらっしゃいますよー!!


 いや。当たり前だな。鍛錬終わってみればなぜか蹴りいれられそうになってんだもん。

怒っていいところですよねー。あはは……。


でもでも私だってなんでこんな事態に陥っているのか分かんないんですよー。

ていうか足掴まれっぱなしですよ。スカートなんですが私。宙ぶらりん。



「あーっと、ごめんなさい。マジで謝るんでとりあえず脚放してくださいませんでしょうか?」

「……ほう」

 ぎゃー脚をつかんで上に引っ張るなー!

私は一般的女性で筋力もたいしたことないんだよ。ぎゃースカートめくれるー。

吊り上げられてませんか。コレ。何でこんなことなってんの……。



 最初はじたばたして抵抗していたが力量の差がはっきりしているので。

もう諦めてしまった。もういいよどうにでもしてくれ……。



……はぁー。


いや、ため息つきたいのはこっちなんですけど。普通女子を脚で吊り上げます?

脚をゆっくりと下ろされてホッとしたのも束の間。今度は頭を拳固でグリグリとされる。


痛い。マジで痛い。もう声すらも発せない痛みである。あぁ気が遠くなっていく…。


――バタリと倒れる。それからの記憶は無い。











――だんだん意識が浮上する。


水の中の泡の様に 上へ 上へ ふわり ふわりと……





 んー何だかあったかい。けど頭がズキズキする。


「……痛い?」


「起きたか」

――うぉ! 顔が近い!


がばっと上体を上げるがカイトにはさっと避けられる。……器用だな。


「あぶねぇな。寝起きっから頭突きかよ。激しいな」

最後だけは耳元で色気を(にじ)ませつつ(ささや)かれる。あんた鬼だ。


「なんか言い回しがオヤジデスネ……」

追い討ちかけないでくださいませんか。お色気魔人。


「余計なお世話だ」

と頭を優しくなでられる。微妙に痛いんですけどー。

というかなぜに膝枕?



えーと。確か……テンぱって、蹴りいれてカイトに返りうちにあったと。

うん。わかりやすいな。


「もしかして私気ぃ失いました?」

「あぁ。まさか失神するとは思わなかったぞ」

「あー。頭を攻撃されるなんて中学生以来ですよ」


「喧嘩ふっかけてくるくらいお転婆なんだから、ちょっとぐらいは大丈夫かと思ったんだが、案外貧弱だな。」


「あなたと比べないでくださいよ。男に喧嘩ふっかけるなんて、小学生以来ですよ。力の差がありますし、それをカバーできるほどの実力は私には無いので基本は逃げの一択です。女の子とは取っ組み合いの喧嘩も極々たまにすることもありましたけど、今はしませんし」


「もう男に喧嘩ふっかけたことがある時点でじゃじゃ馬決定なんだが」

とやれやれと呆れられる。


「コミュニケーションの一種ですよ。じゃれてたんですよ」


 そうそう。あれはまだ可愛いもんだ。仲がいいからこそ喧嘩する。

私の場合どうでもいい人は基本スルーだ。あまりにしつこいと相手するけどあっちが手を出さない限りこちらからも手を出すことはない。男の子と違って女子って基本口喧嘩だから、手加減の仕方を知らないから嫌なんだよ。それにやり返される覚悟もなしに手を出すのもなー。


まぁ今回はカイトには傷ひとつ付かないだろうから出来たことなんだけどね。だって基本スペックが違いすぎるもん。


「で。どうして俺に蹴り入れようとしたわけ?」

「あー。なんか鍛錬後のカイトの雰囲気に吞まれましてうっかり混乱して、いつの間にか蹴りいれてました」


「………。」


――あぁ。そんな可哀相なものを見る眼で私を見ないでください。チロルチョコあげるから。



「ほんと。すんません」

「……まぁ 少し俺も興奮状態だったからな」

「えぇ。変な色気とか出てましたし、それと……」


「なんだよ」


「いえ。なんでもないです」

自分でもうまく説明できないし。まぁそのうち分かる……といいなあ。

あ。ここ木陰だ。そうだよね熱中症になっちゃうし。


「どのくらい倒れてました?」

「半刻弱だな」

「……そうですか。 すみませんお手数かけました」

と起き上がろうとする、が手でずいっと押しとどめられる。


「もう少し寝とけ」

「いや、頭グリグリされただけなんで……」

そんなんで寝てもなぁ……。大げさだよね。


「ほほう。俺の膝は金を払ってでも使いたい奴もいるんだが…

贅沢者め」

と頭を軽くコツンと小突かれる。


「それ自分で言っちゃうんですか……」

とうっかり脱力してしまって彼の膝の元に再び収まる。

まぁ金出す人もいるんだろうなぁ。私は恥ずかしいんで遠慮したい気がする。



「――ねぇ、カイトはこの状況をどう思っているの?」

「この状況って?」

「異世界に来て、私にしか認識されていない、それといつ戻れるかもまたいつここに現れるかもしれないこの状況」


 これはずっと気になっていた。多分だけど、カイトの感情はわりと読み取れているつもりだ。

だけど何を考えているのかがさっぱりわからない。


「んー。わりと楽しんでるぜ。おまえもいるし。今のところは上司への説明どうすっかなぁってことくらいだな」

たぶんこの言葉には嘘がない。だって彼の様子には微塵も気負いが感じられない。

あぁ…。なるほど。読み取れないわけだ。この人このことについては特に何も考えてない。


「そんなんでいいんですか?」

「考えて答え出ると思うか?」


「そりゃあ、そうですけど……うっかり思考の渦に(おちい)りません?」

私なんかつい考えちゃう時もあるんだけど。


「何かが起こったらその場で即決断・行動だ。理解の外にあるんなら考えても無駄だ。

誰かその能力があるものにまかせるのもアリだな。」

 なんだ。その無駄に男らしい思考は……。


 ふうと息をついて彼の身体に身を委ねる。この光景。

父さんが見たらものすごくショックを受けそうだ。あの人私に彼氏がいないのを知って超ご機嫌になる人だからな……。愛されてるなぁ。ははは。



「なんだか、再会してからスキンシップ多くなってません?」


「すきんしっぷ??」


「えーと。母親と子どもを始めとする家族関係にある者や、ごく親しい友人同士が抱きしめ合ったり手を握り合う、あるいは頬ずりするなど身体や肌の一部を触れ合わせることにより互いの親密感や帰属感を高め、一体感を共有しあう行為を指す言葉……だそうですよ(Wikiより)」

とピコピコとi-phoneで意味を検索する。


「つまり直接的接触?」


「日本語にするとなんでこうずばっと恥ずかしい表現になるんでしょうか」

せっかくわざわざ遠まわしにくどく説明したというのに。


「んー。嫌か?」

わかっていて訊いてるだろ。


「嫌じゃないです。そこにいるのが分かるから」

 本当はぺたぺたと触りまくってカイトにずっと張り付いていたほうが安心だ。

でもそれでは完全に痴女である。それはさすがに勘弁してほしい。


「……そうか。悪いな急に消えて」


「不可抗力だし。しょうがないですよ。それにジャケットも家に置いてあるし」

そう、カイトの所為(せい)ではない。

でも、やっぱりカタチにのこっているものがあると、あれは夢ではないと認識できるし、それにジャケットはカイトの普段の生活に密接している物質だ。

しかも本人の承諾を得て持たされているのだ。心強い寄る辺だ。私の方は結構見透かされているな。



「俺はお前の父親のシャツだがな」

……あぁ。それはなんか微妙だ。


「何かカイトも寄る辺が欲しいんですか?」

なんか意外……。私よりも動揺してなさそうなのに。

自分でも自覚はあるが私はけっこう不安定なところがある。けどカイトはきっと、そんなに不安定な性質ではない、と思う。


「もらえるもんならチョーダイ。」


 きっと否定するかと思ったのに。本当にこの人は考えがよめない。


「………。」

 私のモノか。ほっぺにチューでもしてやろうか。いや返り討ちに遭うな。ていうかモノじゃないし。


私が大切にしていて普段から身につけているものがそれっぽいよね。それにかさばらないものの方が便利だよね。できれば持ち歩いて欲しい、し。


お気に入りのネックレス、でもこれ女性物だし。家の鍵…いやないと私が困る。それか

カイトに倣ってバイトの制服のネクタイ、何十回と読み返したお気に入りの文庫本、たいせつ、大切なものねぇ……。


 写真、はその人を思い出すにはいいものだけど勘弁して欲しい……。写真写りはあまりよくないし。カメラを向けられると固くなっちゃうんだよ。成人式の時プロに撮ってもらったけどあのときはモデルさんってまじスゲエと思ったものだ。


 このピアスとか? でもカイト耳に穴開いてるのか? それに付けないなら失くす可能性大だ。


「カイトって耳に穴あいてます?」

と一応訊いてみる。

「ウチの国は耳に穴開ける習慣はないな。近隣国にはそういう文化があるところもあるな」

ふぅんそうなのか。


「耳に穴空けるのに抵抗あります?」


「別にないな」

うん。じゃあそうしようかな。

このピアスは一粒の鉱石(いし)のシンプルなものだ。男の人がつけていても違和感ないだろ。青味がかった無色の鉱石(いし)はカイトの顔に映えるだろうし。


「じゃあ。もし今度会ったら耳に穴開けさせてもらっていいですか?すこしチクッとするとは思いますけど……。それととりあえずこのピアス、ええと耳飾りは渡しておきます。この袋にでも入れて置いてください。ってこんな感じでいかがでしょうか?」

と片方のピアスを外して専用の袋に入れてそれを手渡す。言ってみてからはたっと我に帰ってカイトの顔色をおずおずと窺う。


あーやっぱり耳に穴あけるのは抵抗あるかもしんないのに話進めちゃった……。


「……あぁ、ありがとな。綺麗な鉱石(いし)だな。高価なものなんじゃないのか?」

 少しの間硬直していたようだが、何か気に障ることでもあったのかな。


「いえ、値段は知らないんです。母がくれたものなので」

たぶんそんなに高いものではないとは思う、たぶん。そうだったら注意のひとつでもする人だ。


「………。」


「………。」


 やっぱり気に入らない?

他のものにした方がいいのかな……。


「あー。嫌なら他のものに…」

とカイトの手の上に載っている袋に手を伸ばす。がひょいっと手を上げて私の手を避ける。


「……………。」

もうなんだってんだ。

カイトの方に目を向けると顔には“俺悩んでいます”と書いている様だ。



「………。あー、有難くもらっとく」

といそいそと胸ポケットにその袋を直す。





――えーとこれで一件落着? なのか。


本当は抱きしめるの選択肢にするつもりだったんですよ。

だけど芽衣さんは蹴るの選択肢だったようですね~。


作者もびっくりです。

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