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ある日の午後  作者: ラゼル
Chapter 2
21/72

続 発見☆ 探検♪ ぼくらのまちっ

プチ旅行から帰って来ました。

あー。書きたいシーンがまだまだ遠い。

「えーとキラメキリゾートホテル…かぁ」

 現在行き止まりに突き当たっております。前に進みたいと思うのだけどこの建物の所為で前に進めない…。だけど、さすがに宿泊客でもないのにここを通り抜けさせてもらうのは気が引ける。


「……どうすんだ?」

とカイトがこちらに質問を投げかける。二人とも足を止めてホテルを下から見上げる。

 手持ち無沙汰なのかカイトが首に手を回し、私の頭にあごを乗せてため息をついている。

 暑い……。今日は晴れていて気温も高いのに……。

 いや、でも行き止まりになった原因は私にあるのだ。

 もうカイトの好きにさせとこう。


さてと……どうしましょう?


 Uターンするのはとても面倒だ。

 しかも戻って違う道を通ってもまた行き止まりなんてこともあるかもしれない。……絶対イヤだ。


えーと昔はどう行ってた?

思い出せー。思い出すんだ!


ふっと小さい頃の私がこの道を歩いた光景が頭に浮かぶ。そういえば、確か駐車場の横に通り道があったような……。


「カイト 多分ですけど、駐車場の横に道があった気がします…」

多分…だ。でも合ってるとは思う。にゅっと手を上に回してカイトの頬をちょいちょいと触って

“離して”と合図する。


「んー。わかった。行ってみっか」

っちょ! (あご)で頭ぐりぐりすんな。 地味に痛いー!

お腹くすぐるぞ! コラ!


 駐車場の中を入り少し歩くと細い道があった。

あーそうだそうだ! ここ、ココ!


 昔はフリマ会場っていう矢印通りにいけばいつのまにか着いてたけど、今は記憶が頼りだ。


「ありましたよ! よかったー」

 あーよかった。あとはこの道を通って海の方向へ歩けばいいだけだ。

 少し歩くと大きな車道に出た。上では高速道路がたくさん交差している。そのおかげで陰になっていて涼しい……。信号が青に変わるのを待って長い横断歩道を渡る。


「あともう少しでつきますよ」

「んー 案内ありがとな」

「まぁここはい・ち・お・う 地元ですから」

「もう手探り状態で歩いてるもんなー」

 と笑いながらつないでいる手をぶんぶん振る。


 えぇ…。可笑しいですよねー。 あはは……。

 私もうこの市で10年は生活してるんですけどねー。




 うわー。荒れ放題の道だ。雑草だらけ……。

 煉瓦作りの道をコツコツと音をさせながら歩く。左を見ると新しく大きなホームセンターができていた。家族からなんだか聞いていたような気がするけど、土地が余っているとはいえ、こんな入り組んだ場所にあってもお客さんくるのかなー。まぁ私には関わりのないことかな。


 また少し歩くと流木の山があった。流れ着いたものを誰かが積み上げたんだろうな。


「なんだか、他の道と比べてかなり手が入ってないな」

 とカイトが辺りを見渡す。まぁ確かに、この雑草長いものだったら下手したら私の膝くらいまであるぞ……。

「えぇ。本当っに あんまり人が来ないんですね……。」

 あぁ、だから私来なかったのか…と少し納得しながらも同意する。



「おおー! 海だー」

 と少し興奮して腕を挙げる。障害物がないので空がひろーい。

 流木の山を避けながら歩くと、大きな広場に出た。ここは港みたいだ。でも漁業用ではなさそう。

 海のほうへ近づく。昔は汚いなーと思ってたけど今見ると普通だ。特にごみも浮かんでいない。だけど底が見えないので泳ぐのは怖いなと思う。波はゆらりと穏やかだ。


「海だなー それにここかなり広いな」

「ええ。かなり広いですね。昔は露天がたくさん出てたのでもう少し狭いイメージあったんですけど」

 しかし海の柵めちゃめちゃ低い。うっかり子どもとか落ちるんじゃないか?

 小さい子とかが探検にきたらうっかり事故が置きそうだ。船はあるのにその船に関係ありそうな人は一人も居ない。あっちのほうへ行けば誰かいるかな?


 あ。碇のモニュメントだ。なんだーここ意外と気合入れて開発してんじゃん。あっちには屋根つきの休憩場みたいなとこあるし…でも雑草に阻まれて行けそうにない。うーん。もったいないなー。

 全然利用されて無いけど、子どもにとったらけっこういい遊び場じゃない? 海に落ちないように気をつける必要はあるけど。



「少し歩いてみません?」

 けっこう広いみたいだし端までいったら何があるのか気になる…。

「いいぞ」

 柵をなぞりながらその横を歩く。柵に注意書きが書いている。

えーと雨が降った後は近づいてはいけません。それと……

「地面がゆれたら、海から離れましょう」

「………。」

 えー?


「………。なんだこれ? どういう意味だ?」

 私が微妙な顔をしていたので不思議に思ったのかカイトが聞いてくる。


「えーとですね。地面が揺れる。つまり地震がきたら津波が来る可能性があるんですよ。だから、危ないので海から離れなさい。海に呑まれますよってことです。たぶん。」

「津波?」

 あぁ……。最近は外国でもよくニュースになっているけどもともとは日本のつくった単語だしなぁ。


「あーっと、簡単にいうと高波かな? すごいのだとあの建物よりも高い場合もあります。人なんてほんとに一吞みですよ。抗えないんです」

 だから海から離れても運が悪ければもう無駄だと思ったんだ。


 だって昔社会の先生が行ってたけど、ウチの市はかなり海に近いし土地も低いから津波起こったらうちは確実に水浸しになるっていっていた。緊急避難訓練なんてしても地震で起きた火事に対してしか訓練できていない。高校のときは府の総力をあげて訓練したけど実際ほとんど役になんて立たないだろうな。焼け石に水だ。


 周期的にはそろそろ大きな地震がくるっていうけれど、私がおばあさんになるまでには来るんだろうか。大きな自然災害には人はけっこう無力だな、と思う。復興も何年もかかってしまうだろう。


「はぁ!? あれよりも高いのか!??」

 とカイトの方びっくりしている。あちらの国は海が近くないのだろうか? それとも海の様子も違うのかな? それかまだ起こっていないか、だな。まぁ私も始めて聞いたときはあそこまで水が上がるなんてどれだけのエネルギーが必要なんだ。有り得ないだろ……と思った。


「そうですよー 私もびっくりしましたよ。自然の力は時にものすごく脅威ですよね」

「あぁ…。」

 なんか話題間違えたなー。暗くなってしまった……


「ね。船が繋いでありますよ。少し乗ってみたいですねー」

「船乗ったことないのか?」

「あー。 ありますけど、こんな小さいのはないですね。操縦室もみたことないですし」

 だって小さい頃乗ったのはお母さんの田舎に行くために乗ったフェリーだ。今は大きな橋ができたからもう乗ることはなくなったのは残念だけど。



 数十分歩くと曲がり角に行き着いて左に曲がる。視界に50隻くらいの小型の船がたくさん並んでいる。壮観だ。


「うわーすごいですね これ何に利用されているんだろ?」

 あ。釣りをしてる人が居る。ここで何が釣れるんだろ?

ていうか遊泳禁止・釣り禁止って書いてるんだけど……。


「んー。俺にはわからんな」

「まぁ。私にも分かりませんが」


 ………。


「か、カイト! 元の場所に戻りましょう。たぶん広い場所で何かしたいことがあったんですよね?

 ね? ね? 早く行きましょ 行きましょ」

 とぐいぐいとカイトの背中を押して追いやる。


「どうしたんだ。唐突だな」

 とか憮然(ぶぜん)とした顔をしながらも抗わずに従ってくれる。


 助かった……と息をつく。なんか微妙に疲れてしまった。


「何があったんだ?」

 あー訊かれた……。まぁ怪しさ大爆発だよね~。

「あ~っと。えーとですね……」

 と言葉を濁す。

「なんだはっきりしないな」

 

 別に言ってもいいんだけどねぇ……まぁ普通さくっと言い出せないよね。

私も予想外だったし、まぁ有り得なくは無いよね。まぁ他でやれよと思うけど。


 つい気まずくなって、ふぃっと目を背ける。が、

ガッと顔を両手で挟まれる。カイトと目が合った。近いですよ旦那……。


「言え」

 わーい。圧力ビンビンです。使いどころ間違ってやすぜ。


 聞いても気分いいもんじゃないんだけどなー。

まぁ聞きたいっていうんなら教えてあげましょうか。


「カップルが、えーとつまり恋人同士でいちゃついてたんですよ。

まぁ人がいないし絶好の穴場ですよねー。」

 すぐに目を離したから服が脱げていたかは知らないけど、なんか濃密な空気が流れていて、まじで居た堪れなかった。ほんとあちらに気づかれていなくてよかった。


 まぁ初々しい感じにいちゃついてるんなら、ほほえましいなぁ…と思って流してそこからそっと離れるだけだけど。あの場合はこそこそしたくなるよね。しかも真昼間だぞ……。


 あー。もうなんでこんなことしなきゃいけないんですか。あっちの方には子ども連れの奥様が2人いたのに……。まぁあんな端っこまで行く人も珍しいけど。子どもだったら意外とちょろちょろしてて見つけちゃうんじゃかろうか……。なんかもう生々しいな。



「……………。」

「…………………。」


 気まずい沈黙が流れた。



「あぁ……。言わせて悪かったな。さっさとこの場から離れよう」

 と流石にバツが悪いのか、気まずそうに謝られた。


「じゃあ。いきましょう。あちらなら大丈夫でしょう」

 さっきの暗い雰囲気は払拭されたが今度は微妙な空気が流れた……。

せっかく会えたから楽しい話がしたいんだけど。


「気を取り直しまして」

 パンと両手で手を叩く。


「んー?」

「で、用事はなんだったんですか?」

 と本題に入る。


「あぁ。身体を軽く動かしたかったんだ。買い物終わったら少し鍛錬しようと思ってたんだよ。ちょうどナイフとかもあるし、手ごろな木もそこそこあるし。いい場所だな」


「それはよかったです」

「あぁ」

「………。」

「………。」

 駄目だ。まだ気まずい空気が流れている。


 カイトがすっと足を一歩下げて腕を構え、足をガッと上げる。そして、また元の位置に戻す。胸をぐいっとそらして、石畳に手を突いたと思ったら鋭い蹴りが繰り出される。そしてさらにその足を回してそして、またいつでも即時対応できるような基本的な構えに戻る。


 もうカイトの方は鍛錬に集中してしまうことに決めたみたいだ。私はどうしようか。


――へぇ。すごいなと感心しつつ、結局カイトの練習風景を見入った。


 相手の動きをシュミレーションして動いているのか。

 私では到底太刀打ちできないなー。せいぜいチカン対策のための護身術程度しか身につけていないし。動きもなれたものだ。ふうん足技中心なのか。



 一時間ほどの時が過ぎた。カイトの鍛錬を眺めながら、これからのことに思いをはせる。

 今度はいつ消えて、また会えることはあるのだろうか。とか、空間遮断の問題点。あちらの上司への説明。この後のこと。


 再会については、まぁ二度あることは三度あるって言うし。と思うことにしよう。考えてもどうにもならない。私の手には余る。


 空間遮断はやっぱり私に注意を向けている状態の人物、またはカイトを認識している人物がいないと実験のしようがない。


 上司には……なにかそれらしい説明でも創作してしまおうか。


 ……カイトはこの事についてどう思ってるんだろうな。




「せいっ はあぁっ!!」

 と声をあげて大技のようなものを繰り出す。うあー、マトモにくらったら痛そう……。


 ふぅと汗を拭い、カイトが身なりを整える。とりあえず一段落したようだ。

 ふぃと目が合う。なんかいつもと眼が違う。



 ――ゾクリ


 うわ。呑まれた……。というか汗がしたり落ちて艶っぽさがある。

 あ。ヤバイまだぞわぞわしている。警告音が頭の中で鳴る。

 さっきよりもある意味では目を離さなければならない代物だな。



「ん。終わったぞー」とカイトが早足で近づいてくる。


 ちょっ 待ったあぁ!! 心の準備がまだだ!

 なんか再会から私の方がやられっぱなしな気がする。まぁ触られるのに嫌悪感も無いし、むしろちゃんと居ることに安心する。それになんだか……。いや今はそんな場合ではない。何か手立ては……。

 必死で頭を回転させる。家で鞄に入れたものになにか役に立ちそうなものとかないのか。こういう場合は友達はどうしろっていったっけ? でも だけど しかし この場合は特殊すぎる。

自分でもいろんなことが把握できていないのに。


 脳が高速で働いているが、いかんせん時間が無い。




――あぁ、もういいや。やりたいことをやってしまおう。どちらにしても何かしでかすか、からかわれる可能性が高い。あとのことは後で考えよう。



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