とりあえず移動しましょうか。
「甘いのと苦いのどちらがお好きですか? おごりますよー」
そうそう、飲み物合ったほうがいいだろ。話長くなるだろうし、大学の授業どうしようかな……。あと2時間は大丈夫だけど。もしものときはノート友達に写させていただこう。
「どちらも好きだが、今は甘いものが欲しいかな。……いや、でも女性にお金を出させるわけには……」
何だか 恐縮している。まじめな人? フェミニストなのかなー、この人。
「でも日本円持ってないでしょ。ほら、こういうの」と1000円札を目の前でひらひらさせてやる。
「……。」
あら落ち込んじゃったよ いわゆるOrzってやつですね。いや実際手を床に突いてるわけではないんだけど……まぁ雰囲気ですよ。
「キャラメルマキアートでいいかな。私は抹茶ラテにしよ。じゃあ、あそこの席に座っていていただけますか?」
すると、彼は軽く頷いて席へ移動する。慌てた様子はなくスマートだった。
「では、始めましょうか。はい飲み物です」
――あぁ。大事なことを忘れてた。
「すみません。名乗るのが遅れました。藤宮芽衣と申します。」
「いや こちらこそ名乗っていなかったな カイト=ルー=シュピッツだ」
どう呼べばいいかな というか補足つけなきゃダメパターンだな 、これ。
「名前は芽衣のほうですから、それと苗字でも名前でもお好きに呼んでください」
「ああ。こちらとは逆なんだな 名前が後ろに来るのか。
では芽衣と呼ばせていただく 私のことはカイトと呼んでください。」
頭の回転結構速い。名前の順番の説明に関してはもうこれ以上はいいか。
ていうか男の人から呼び捨てって身内以外で久々にされたなぁ……。なんかくすぐったい感じがする。
~ここからはサクサクいこうということで
私の心象風景はカットで会話のみでお送りします~
「えっとおおざっぱにシンプルにまとめると」
「シンプル?」
「あ 簡単にっていうことです」
「ここはあなたのいた国ではありません。そしておそらくあなたのいた世界ではありません。ここはあなたからすれば異世界でちなみにこの国の名前は日本といいます。小さい? のかな。まぁ島国ですね」
「……。」
「……。」
「というか その格好で目立ちませんでした? どうみても騎士服なんですけど」
「あー 丁寧語じゃなくていい。こっからは普段どおりで話せ。なんかもう色々めんどうになってきた」
「……すげぇ豹変ですね びっくりです」
「あー。そうだな。でもちょっと余裕ないんだ。
で、だ。俺もいきなり見知らぬ場所 たぶん人種も違うであろう人の中に放り込まれたんだ。普通状況把握はかるだろ?」
「まぁ、そうですね」
「んで、とりあえずご婦人方ににっこり笑って話しかけたんだけどさ、無視されて通り過ぎられたんだよ」
「……。それはご愁傷様です。」
「10回目くらいで心折れたわ」
「むしろ10回もチャレンジしたのがすごいですよ」
「そんでさぁ これ無視とかじゃなくてこいつらには俺見えてねぇんじゃねぇ? って確信もしたわ」
「あー それで視線がこっちこないんですね やっぱここだけ遮断された空間みたいな感じなのかな。一人であの子話してるわー痛い子、みたいな視線もこないですね」
「つーか 俺自分のこと図太いと思ってたんだけど さすがに手がかり0はキツイわけ。方法すらも見あたら無いと……。
そんでわざわざ話しかけてきた女の子がいるとくりゃ手がかりだとばかりに食いつくだろ」
「あー それでホイホイついてきたんですか」
「まぁな よっぽどの予想外のことでも起こらないかぎりはお前に殺られることもないだろうしな」
「まぁ一般女子ですし」
「つか、これ美味いな」
「そりゃあ、よかったですね。」
「こっちから質問いいか?」
「どぞー。」
「お前の言うことが正しいかどうかわからんがここが俺のいた国ではないことはわかる。異世界ってのもなにいってんだコイツ頭おかしいんじゃねぇと言いたいところだが、
普通存在が目の前にいて認識されないとかないし、夢にしては細かいし、変な現実味がある。
んで、とりあえずお前の話の丸呑みして言うんだが、
還る方法わかるか?」
「…………こんなことできれば言いたくないんですが、私にはわかりません」
「……………………………はぁ。」
「ごめんなさい」
「いや、まぁ話し相手が居ただけ気分楽なんだがな」
「そういってもらえると助かります」
「どうすっかなー」
「どうしましょうねー」
「こっちで生きてくしかねぇのかなー」
「おー 絶対帰るとか、方法探すとか言うと思ってました」
「あてねぇし、お前以外に話せるヤツいんのか微妙だしな」
「というか私以外に話せないなら仕事もできないんじゃないんですか?」
「そうだった……」
――長い沈黙が両者に訪れた。