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ある日の午後  作者: ラゼル
Chapter 2
19/72

フェティズムVs理性

うーん。楽しい。

 落ち着いて我に帰ってぎょっとした藤宮芽衣です。こんにちわー。

さきほど急に消えくさりやがった方とめでたく再会いたしました。


 今正常に脳が機能しているので、先ほどまでの行動を思い返し、穴を掘って埋りたい所存であります。


 涙で顔がぐちゃぐちゃであることが予想され顔が上げられません隊長ー。

「なんだなんだーそんなに俺に会いたかったのかー」

なでなでなで…と頭を撫でられる。うう、エンドレス……。

「…………。」

 そんなに私を苛めて楽しいわけか。ああそうだろうとも。

 私もあんたの立場だったらここぞとばかりにからかうだろうよ。

 あー。バイトの制服のままだ。つまり、この顔のまま一度戻らないといけないわけか…。


 ちなみにうちの制服はモノトーンのギャルソンスタイルである。

足元や髪型は衛生面にさえ気をつければ個性が尊重されていて自由である。


 樹さんはごついベルトのたくさん着いたブーツに髪はワックスで上品にまとめ、里奈ちゃんは可愛さ追求でバレリーナのような綺麗な色のリボンの着いたウェッジソールのパンプスにふわふわの可愛いヘアスタイルに大きなバレッタ。

 わたしはシンプルな黒のパンプスにかんざしを使った纏め髪の和風スタイル。だけど意外に凝ったつくりをしていて足が綺麗に見える仕様である。


 しかし先ほどからわしゃわしゃ撫でられているのでもう髪もぐっちゃぐちゃである。

 あーちくしょー。この手を完璧に拒絶できないのも弱いなぁ……。手フェチにはこの状況は拒めるはずがないだろうに。うう、力抜ける……。こんなん空間遮断がなければ憤死してしまう。私はそれなりに羞恥心というものを持っているんだ……。


 とりあえずこの状況をどうにかこうにか変えなければ……!


「そういえばカイトさんやー」

「なんだい、芽衣さん」

 ……わかってたけど、ノリいいな。


「お家にブーツとかナイフとか拘束錠とかその他諸々物騒なものが家に残っているのですが」

「あー。やっぱそっちにあったかー」

「ええ、籠の中を検分してたら他にも色々でてきましたけど」

 うわわ。首元を撫でるんじゃない…っ

「んー。忘れとけ忘れとけ。というか俺の持ち物をチェックしなおすって

お前相当寂しかったんだなぁ……」

 ピシリと硬直する。

 うわ。油断した。別方向から攻めてきやがった……。

 痛いところをざっくりついてくるな。まぁあんだけ泣き喚いたらバレバレだよなー。どうにも今は分が悪い。まぁせいぜいナイフとかを光にあてて眺めてたくらいなんだが。


「すみませんが、着替えてきていいですか。これ仕事の制服なんですよ。急いでたので私服に着換えてないんですよ、」

 店長と顔を合わすことなく退場ができれば御の字だ。

「おー仕事だったのか。お疲れー」

「いえいえ。今日は平日ですからまだましですね。ていうか今日はジャケット着てないんですね。腰に太刀もないですし」


「あー今日休日なんだよ。日常品の補充の買出しに出てたところ」


「仕事に穴開かなくてよかったですね。ジャケットも家にありますよ、持って帰ります?」

「あー。もう新しいの買っちまったんだよ。だからそれはお前がもっとけ」


 ちなみに現在もカイトの腕の中で抱き締められたままである。

 もう違和感を感じなくなってきているあたりマズイ感じがする。


「そんなんもってても使い道ないですよ?」

「一つくらいは何か持っていたいだろ?」

「………。あんな大きいものいつでも持っていられませんよ」

 振動が直に伝わる。こいつ笑いをこらえてやがる……。


「こっちにはお前の親父のシャツが残ってんぞ」

「あー。一枚くらいなくなっても大丈夫なんでどうぞご随意(ずいい)に」


 というかここ道のど真ん中だ。視線がこないとはいえせめて道の(はじ)っこに移動したい。ぐいっとカイトの胸元を押して、離れてくれと意思表示をする。

 それに気づいたカイトはさらにぎゅーっと力を更にこめて次の瞬間にぱっと手を離した。

少し体勢を崩し、たたらを踏んだものの、何とかまっすぐカイトの前に立つ。

 そしてカイトの腕をぐいっと引き、店の裏口へ回る。この際カイトの空間遮断を有効活用してやる。


 ん……? ていうか着替えどうすんだ、私と。我に帰る。

 今はカイトから目を話せない。見ていないところで消えられるのは今の精神状態ではキツイ。

 だからって瞬間早着替え(メタモルフォーゼ)が出来るわけも無い。


「………。」

 カイトの腕を掴みつつ頭を抱える。

 カイトは不思議な顔をしつつも頭を撫でてくる。

 ……なんだか、スキンシップが過剰になっている。いや、まぁ もういいわそれは。


 後ろ向いてもらって手でもつなぎながら着換えるか?いやそれは流石に無理があるな。

 もうそのまま着換えてしまおうか。下着くらいなら水着と一緒だし。

 ……なんかそれはさすがに叱られそうな気がするな。


「着換えたいんですけど、どうすればいいと思います?」

 ええい。もう相談しちゃえ。

「普通に着換えたらいいだろ。俺ドアの前に出てるし」

 まぁそう答えるのが普通だよねー。

「いや、でも目の届かないところにいると不安といいますか…」

「………。それはそれは、んーまぁ気持ちはわからなくもない。前回は半日であっちに戻ったし、次の瞬間消えても不思議ではないわなー」


「というかカイト前と変わりませんね」

 とパイプ椅子を用意してカイトに座るように促す。


「1月程度じゃ、あんまりかわんねぇよ」


「そうですけど。まぁよかったです。

 ん……? そういやそっちでも一月なんですね。

 そっちに戻った時なんか支障ありました?」

 離れている(あいだ)の時間に差はない……と。


「あー上司の前に出ちまった。しかも裸足(はだし)だしジャケット着てないしで言い訳が聞く状況じゃなかったな。ちなみにあっちでは半刻。時間に関してのみ言えばあんまり支障は無い」

……駄目じゃん。大問題じゃね?


「……上司さんどう言いくるめたんですか?」

「あー無理無理。っていうか言いくるめるの前提なんだな。

 まぁそのうち説明するって言っといた」

 

 おいおいおいおい……。


「あぁ、あんまり焦ってないんでそんなとこかと…ていうか、そんなんで本当に大丈夫なんですか?」


「だって俺にもわかんないことだらけで説明できねえもん」

「もん。なんて成人男性が使っても痛いだけですよ」

 足を組んで、ふうと息をつく。


「まぁ、会えてよかったですよ」

「だな。」


 で。結局問題は解決していないわけで。

「で、どうしましょうか?」

「………。俺の膝の上にでも座って着換えるか?目ぇ(つむ)ってるし」

 あららー。

「私は別にかまいませんけど、そんなことしたらカイト怒るかと思ってました。前回危機感を持て!とか言ってませんでした?」


「今回だけは目をつむる。さすがに今消えたらキツイだろ」

「……。そうですね」

 確かにきっついわ。しかも今は家じゃない外だ。ぼろぼろ泣いている女がいたら変な目で見られること確実だ。せめて消えるときは目を合わせるなり、手を振るなりしたい。


「じゃあ失礼します」

 膝の上に載ってネクタイを外しシャツのボタンに手をかける。


「なぁ。」

「んーなんですか」

「この後どうすんだ?」

 息が伝わるほど近くにいる……。

 今日はワンピースなので頭からがばっと腕と頭を通す。まだ下ズボンはいてるけどいいか。


「そうですねー。とりあえずナイフとか引き取ってください。うっかりあんな物騒なものが見つかったら私、要注意人物として警察につれていかれちゃいますよ。ああ、もう目開けて大丈夫ですよ」

 何気に隠すの大変だったんだよ。場所取るし。よっと肩膝に重心をかけて降りる。今更だけど、これかなりきわどいシチュエーションじゃないのかな。


「……はやいな」

 あとはズボンを脱いで靴下をはいて……と。鏡を使って(くし)で髪を整えた。

 ふわりとスカートをたなびかせて更衣室の全身鏡で全体をチェックする。

 今日はブルーを基調としたチェックのワンピースにシースルーのショートソックスにこの前買ったグリーンのウェッジソールだ。



「ん。終了 じゃあ行きましょうか」



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