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ある日の午後  作者: ラゼル
Chapter 1.5
17/72

心が折られるフラグ

三話連続投稿です。

読む時は順番にお気をつけくださいませ。

 


 まぁカイトが居ようが居まいが毎日は過ぎていくわけで、少しずつだが心の整理もつけられてきた。心の片隅はモヤモヤするけれど……。そしてバイトも前期考査期間でお休みである。


 しかし1年生の時と比べ単位数は2倍しかも共通教養科目ではなく、専門科目が9割を占めている。

ちなみに1年生時は6割強が共通教養科目である。


……つまり。1年生の時と同じ要領で過ごすとえらいことになるのである。


しかし、まさに今その状況に芽衣はあるのである。


 昼間に少し寝て夕方から明け方にかけてずっと民法の教科書を音読、集中力がなくなってきたらその場で足踏みをしたり、かかとを上げてストレッチをしたり10分仮眠を取ったり、のどが渇いたら桃をむいてちびちび食べながらページをめくっていく。


わからないところがあったらその場でスマートフォンで調べる。そして去年の試験を見てこんな感じの問題が出るんだなぁということを頭に叩き込んだ。だんだん声を出していられなくなって目だけで文字を追っていく、しかし頭に入ってこなくて無理やり声を出して続ける。ときどき頭をかきむしりたい衝動が沸いてくる。そして半分以上に目を通した時にはケラケラと笑い出してしまった。まぁそんなこんなを繰り返しつつ…も朝を迎えた。


 ―ああ 何も考えずに寝たい……! とは彼女を含めのテスト中の大学生の心の叫びではなかろうか。


 そして迎えた前期試験1日目。始めから慌てたスタートを切った。


 朝時計を忘れたことに気づき100円ショップで時計を買い、試験をおこなう教室で荷物を直してくださいと急かされながら電池を入れて時間をセットする。仲良しの先生が試験監視役でにっこり微笑んでくれてすこし和む。


 本日は1教科のみである。帰ったら少し仮眠を取って日本法制史勉強して、行政法も……なんて指折り数えているあたり……ゆっくり何も考えずに寝ることが出来る日は遠いようである。


 民法はちょうど電車の中で見ていたところが出たので、たぶんだが大丈夫だと思いながらも、さんさんと照りつける太陽の中日傘を差しつつ家路を急ぐ。


 行政法は試験範囲が限定されているので勉強しやすい。落とすことは無いだろう。

 問題は日本法制史である。例年の傾向から出題形式は察することはできるが、いかんせん範囲が広い上歴史的というのか専門用語が多い。

 しかもその用語が直訳的なものが多く似ている単語が多いのだ。


 昨日と同様に夕方から明け方まで黙々と頭に入れていく。

今まで自慢ではないが徹夜なんてしたこともないのである。自分にこんなことが出来るのかとびっくりでだ。人間追い込まれたときの集中力はすごいものだなぁ。


 高校までは授業をうけていれば最低限取れたし、赤点は30点未満だったし、うっかり悪い点数をとっても授業に出ていれば留年ということはないが、大学は60点以上が必須である。その上単位数が足りないと留年となる。


『“高校と違って大学は勉強したいと思う人がいくところ”である。

だからやる気が無い人が言ってもお金の無駄だ』が父の言である。


 それをつくづく実感せざるを得ない。1年生の時は大学での勉強の仕方がわからなくて

悪い成績を2教科ほど取って、さんざん怒られた。

 そしてそういうときは『相談しろ! 要領が悪いなおまえ……。』とさんざん叱られて、わかりやすい参考書を与えられ、なんとか1年後期はいい成績を修めることが出来た。


 その時は「おっしゃるとおりです……」と正しすぎる正論にうなだれるしかなかった。


 反論できないからぐさぐさ突き刺さるんだよ。マジで

なんだかんだと自分の非を既に認めているからさらにダメージ……。


 少しでも悪い成績を減らさないと私の心が父さんにパッキリと折られる……!

と恐怖に打ち震えながらも勉強を進めていく。


 きっと父さんという抑止力がないとここまではかどらなかったな……。


ーー恐怖政治という言葉が浮かんでくる。いやいやそれしてはきっちり愛情も含まれているのだが。いかんせん心臓に悪い。私には贅沢すぎる出来た人間である父さんに怒られることはめったにない。

数えても片手で足りてしまうほどだ。だからよりいっそう怖い。子どもからの刷り込みとは恐ろしいものだ。父さんに叱られると自分が何も出来ない頼りない幼子のような気持ちになってわぁっと泣きたくなる。誰に言われるよりも父さんに見放されるような言葉をいわれるのが一番キツイ。子どもにとってよくも悪くも親は絶対的な存在なのである。


 2日目も終了した。行政法はなかなかいい感じだったが、日本法制史は先生の慈悲がないとやばそうだ。

しかしあの先生はツンデレならぬツンドラである。

 

 歴史オタクで昔の拷問方法とかほかにもエグイことをにこにこしながら熱く語り、さわやかに授業中騒ぐ生徒に出て行きなさいとブリザードを放つ先生である。慈悲は期待できそうにないな、とため息をつく。

……なんてったってレポートをしてきていない生徒にレポート内容を聞かれて

「いいんじゃない? 別にやらなくて テストで良い点取れればいいんだし」

とか可愛い笑顔と共にいいのけた方である。


 明日は土日と休みで月曜も私が受ける科目がない。ここできっちり火曜からのテストに備えなければ!と意気込む。でもここらへんでストレス発散をしておかないとプツンと切れる……絶対。


 というわけでゴディバによって新作のショコラリキサーを飲んで少し難波を短時間散策し、服を試着し、店員さんと楽しく会話し、ロングワンピースとグリーンの綺麗なウェッジソールのサンダルお買い上げした。……今思えばこれ結構正気の沙汰じゃないな。



 家について仮眠を取ろうとするが、なんだか徹夜のせいかテンションがナチュラルハイで眠れそうにない。しょうがないので一番やばそうな会社法に手を付けることにした。


しかし過去問題を解いていくとだんだん血の気がひいていく。

 さっぱりわからない……!と心の中で絶叫する。


 どうしよう……。そうだ。父さんに相談しよう。あぁ…相談するのが遅いっていわれる。絶対。

でも相談するのが一番の近道だろう、今のところ。……嫌だなぁ。


 父さんの部屋をおずおずとノックしてわからないところを聞く。ちなみに父さんはアメリカのロースクールを卒業しており、会社の法律関係の仕事もこなしている。私が法学部入ったのは父の影響である。


『参考書が足りていない』と叱られ密林(アマゾン)で数冊購入。問題の意図を説明してもらい。なんとかきりのいいところまで問題を解いていく。思考しながら言葉が口から外に出るので静かにしろと弟に言われながらも、これが終わるまで安心して眠れないとちょっとずつ解いていく。


うー。情けないな……。でも、いま甘やかされたらヤバイ 成績とかその他諸々(もろもろ)が……


 試験終わったら絶対プールとかカラオケとかいってやるーっ!


土日月を労働法や国際法や会社法や民法<親族>の勉強に、小説が読みたい欲と戦いつつ、ときどき負けながらも費やした。


 結局、会社法は間に合わなかった。しかし来年は勉強の仕方がわかったので落とすことはもうないだろう。しかし今度落としたら本気で父さんに顔向けが出来ない……。


 刑法Ⅱは風邪でぶっ倒れたときに中間テストがあったため既に単位はとれないのでこれはもう諦めるしかない。刑法の先生テストがあるとか連絡一切ないんだもん。先生のこと嫌いになりそうだ。



心のもやもやが解消されることもなく(まさ)しく怒涛(どとう)のように

――なんやかんやと芽衣の夏休み到来である。



少し芽衣さん回復です。



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