Side彼
やぁっとカイトSideが書けた……!
ちなみに三話連続投稿なので少しお気をつけくださいませ~。
仕事を終えて王宮から彼に与えられた自室に戻る。
そして上着を椅子にどさっと掛けて、寝台に腰を下ろした。
あれから数日の時が経った……。
あの日の事はもう現実ではなく夢だったのではとも思えてしまう。
あちらでは半日以上過ごしたというのにこちらでは半刻だったというのもその一因である。
しかしジャケットが手元に無い上に、彼女の父のシャツが存在しているのである。
そのうえあちらから還って来た先が執務室……。
見られた相手があいつらだから妙な噂がたつ心配がないのが幸いだった、とは思いつつ、自室に戻ってこれたらよかったのにと思わずにはいられない。
あの日の事を思い出す。
朝執務先に向かおうとした先にいつのまにかあいつ曰く“駅”にいたのだ。
そこで状況把握をはかるもことごとく失敗し、苛ついていた時にあいつ ―芽衣― が現れた。
そりゃあ付いて行くしかないわな。他に手立てなさそうだったもんよ。
しかし女がひょいひょい男に声かけるもんじゃねぇよ。危ないな。
そんで、ここは“異世界”ですなんて突飛なことを言われつつもストンと納得してしまったのも、あいつの何のてらいも含みもない態度が原因だろう。
それに周りは知らないものばかりだったし、驚くばかりだった。
そのあとはこの際楽しんでしまおうと開き直り彼女に半日付き合った。
それに何だか彼女もそれを望んでいるようだったから。
こちらのことを気にかけて色々してくれる割に急にこちらを振り回す。もう最後は逆らうまいと思ったものだ。
たぶん、きっとお互いに恋愛感情はない。そこにあるのは親愛の情。
触れるのも触れられるのも心地がよくて、短かったけれど一緒に過ごす時間が楽しかった。
けれど不可抗力とはいえ、何も言わず姿を消したことに傷ついてはいないだろうか。
もう一度会って話がしたい……。
しかし……拘束錠やらナイフ、ジャケット、ブーツがたぶんあいつの部屋に残っている。
予想外の出費である。これは地味に痛い……。
「……陛下にもとうとう訊かれちまったしな。いつかは…とは思っていたが」
とポツリと漏らす。
「それを説明できる日は来るのかな…… 芽衣」
カイトさんはこんな感じ。割と普段はしっかりいつも通りに過ごしております。