表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

 神様が言うの。「ママ、ねえママどこぉ」って。

 だけどママは何も言わなかったの。昨日と同じで、今夜もいなかったの。

「ママ……」

 神様は、暗闇の中を彷徨ったの。覚えているはずの道が、今夜はなぜだか分からなかったの。どこがどこだか分からなかったの。

 壁にぶつかって、痛くて泣いたの。静かに泣いたの。誰かの声がしないか、耳を澄ませながら泣いたの。

 時間が経つと、涙は出なくなったの。頬がひりひりしてる。

 ふと気がついて、神様は壁を叩いたの。そして手を上にのばしたの。

 壁は、扉は簡単に開いたの。

 ふいに、風が神様に当たったの。驚いた。ここは太陽の出ているときと同じで、ずっと向こうまで広がっているのかもしれない。

 向こうには何があるんだろう。向こうには何がいるんだろう。

 神様は、進んだの。風がいっそう強くなったの。

 向こうには何があるんだろう。向こうには何がいるんだろう。

 地面がなくなっているところがあったの。でも慎重にそこを踏んでみたら、ちょっと下になって地面があることに気付いたの。その地面から先も、ちょっと下のところに、その先も下に。ゆっくりと、転ばないように神様はそこを下りていったの。

 叫び声が聞こえたのは、そのすぐあとのことだった。神様はすぐに分かったよ。その声がママのものだってこと。

「ごめんね、ごめんね、ごめんね」

 いつの間にか神様は抱き上げられていたの。いつの間にかママがいて、なぜだかママは謝っていたの。

 ああ、神様どうか助けて――ママの声は、パパと月がいなくなったときのと似ていたの。

 神様はママを助けるの。そう決めたの。

 でも、向こうには何があるのか、向こうには何がいるのか、知りたかったのに、今日も分かることはなかったの。

 ママと朝を待つの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ