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 向こうには何があるんだろう。向こうには何がいるんだろう。

 神様はそう思ったの。向こうの原っぱを眺めて。大きな木の枝に座って。

 薄緑の草や、この大きな木を、太陽が抱きしめていたの。原っぱがなびいているのはまるで、くすぐったがっているよう。木の葉が揺れているのはまるで、喜んでいるよう。

 神様も、太陽に撫でてもらうの。木の葉がつくる陰は、ちょっとくすぐったい。途端、神様は前のめりになってしまって枝から落ちたの。どすんと音がして、神様は木の根に当たったの。だけど、ぜんぜん痛くはなかったの。神様は大きく笑ったの。なぜだかおかしくて、神様は笑ったの。それでもどうしてか、その笑顔には涙が混じっていたの。

 そうしているうちに、また夜が来たの。辺りが真っ暗になって、いま自分がどこにいるのかも分からなくなっちゃう。

「ママどこぉ」って、神様は呟いたの。

 だけど、ママの声はしなかったの。

 代わりに、変にのびた音がしたの。それは神様のまわり全部に響いているような、はっきりとしてるけどどこかぼんやりとした音。そういえば昨日おばさんが来たときも、こんな音がしていたかもしれない。

 そのあとすぐに「宅配でーっす」って知らない人の声がしたの。

 神様はゆっくりと、声のしたほうへ向かったの。

 すると、行き止まりに来てしまったの。先に行こうと思っても、何かが通せんぼしていて進めない。

 また「宅配でーっす」って声がしたの。それはこの壁の先から聞こえてきたの。

 どうにかしたら、先へ進めるのかもしれない。

 神様は手を上にのばしてみたの。ぺたぺたと、壁を伝って。そうしたら何か、出っ張ったものに手が当たったの。触ってもどうやら痛くはなかったの。神様はそれを掴んだの。

 そして壁は開いたの。

 だけど、もう声はしなかった。神様が遅かったから、もう帰ってしまったの。

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