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 今夜は楽しい日なの。お休みの日なの。ママのお仕事がない日なの。

 だけどママはまだ、絵のない絵本を読んでくれないの。読んでくれるって約束したから神様は待っているの。

 ママはおばさんと話してるの。ママが、「お隣の、七〇五号室の人よ」って教えてくれた。

「あの子、仕事の間ここにおいているんだってね」

 おばさんが静かな声で言ったの。ママは何も言わない。

「再婚はしないの?」

 ママが何も言わなくても気にしないで、おばさんはそう言ったの。

「まだ……六ヶ月経ってないので」

「あら、六ヶ月経てば再婚できる相手がいる、というような言い方ね」

「……いいえ。言葉の綾です」

 ママの声は、ちょっとむっとしてたの。おばさんのことが嫌いみたい。

「とにかく、一人でいさせるのはよくないわよ。ベビーシッターでも雇ったら?」

「そんな金ありませんし……」

 ママの声は、なんだか痛かったの。ちくちくと。

「仕事場につれてけないのかしらねえ。その前にまず、この子、家の外に出してやったことはあるのかし」

「あの――」

 おばさんの言葉の途中で、ママが言ったの。神様はぴたりと体をとめてしまったの。

「あの、もう帰ってくれませんか」

 神様は泣いたの。痛くて泣いたの。ちくちくとして痛かったの。とても痛かったの。

 ママが大声をあげたの。

「めくらも涙を流すのね」って、絵本を読んでもらっているときみたいにおばさんが呟いたの。

 今夜もつまらない日なの。

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