一
神様が言うの。「ママ、ねえママどこぉ」って。
そうしたらママはすぐに言ったの。「ママはここよ」って、抱きしめて言ったの。
神様は安心して、ママに体を預けるの。あたたかい暗闇を枕にして、やっと神様は、太陽の世界へ遊びに行くの。
その世界には、緑色の原っぱが広がっているの。風に撫でられて、くすぐったがっている原っぱが。それに、そこには大きな木があるの。とても大きくてじっとしているけど、葉っぱが羊みたいに跳んでいるの。神様はその枝に座って、ずっと続く原っぱを眺めているんだ。向こうには何があるんだろう。向こうには何がいるんだろうって。
その世界は、夜になったら消えてしまうの。だけどそんなとき、ママはいつも「朝よ、起きて」って神様に言うの。
起きたらそこは、何もない世界。ううん、ただ暗くて、何も見えないだけ。
神様はごはんを食べるの。全部ママが口に運んでくれるの。今朝のごはんは、薄い味のお味噌汁と、ちょっぴり甘いご飯なの。
食べ終わったら、ママが神様を後ろから抱いて、「はみがきしましょう」って言ったの。いつもそう。神様は口を開けるの。いつもそうしてるの。口の中に、ひんやりとしててくすぐったいものが入ってくるの。
「それじゃ、行ってくるね。今日もおるすばんできるね」
そう言ってママは、神様を短く抱きしめて出ていったの。お仕事に出ていったの。
扉の閉まる音がしてから、神様は「うん」って小さく呟いたの。今日もおるすばん。だけど夜は暗くて、何もすることがないの。何も見えなくて、何もすることがないの。
じっと朝を待つの。




