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白雪姫と七体の悪魔  作者: 柳瀬あさと


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5/10

5、白雪姫は森で平和に暮らしています

 準備と教育は順調に進んでいった。

 ルツィーは色々と飛び回っては下地作りを、フリーダは王侯貴族としてのルールやマナーや教育を、レヴィアは悪魔を中心に精霊や魔獣についての知識とついでに神の悪口を。何故か神の悪口になるとルツィーとザターンも何処からともなく現れて参加してきた。悪魔たちに過去何があったのかは恐ろしくて聞けなかった。

 城にいる時もある程度はルツィーとフリーダに教えてもらっていたが、明確に内容が違う。生きるための知識ではなく、支配統治するための知識。白雪は優秀で、教えられたことはすぐに理解するし応用も効く。そしてだからこそ気付いていく。


「……向いてない気がする」


 ザターンが入れてくれたお茶を飲みながら、白雪はぽつりと呟いた。


「果物もお食べ」

「ありがとう」


 たまたま白雪とザターンしかいなかった。ルツィーとフリーダは何やら調査やら下準備やらを仕掛けに行っていて、レヴィアは次の授業で使うらしい魔獣と薬草を取りに行っている。留守番と息抜きで美味しいお茶を飲んでいると、つい本音が転び出てしまったのだ。


「王になりたくはないのかね?」

「父王と王妃の暴走を考えるとならなきゃいけないんだろうなとは思うんですけど、なりたいかと言われると……こうしてみんなと一緒に過ごしてる方が落ち着くというか……」


 よくわからないままトロッコに乗せられている気がする。トロッコの操作は出来るようになっても、何処へ向かっているのか先が見えない。


「……少し話をしようか」

「え?」


 飲んでいたカップを置いたザターンが話し始めた。


「前に悪魔の代表を決めるなら私かルツィーだろうと言ったのを覚えているかい?」

「はい」

「あれは実力だけじゃなく古株だからという意味もあったんだけど、古株だからこそ私もルツィーも王にはなれない。レヴィアだってそうだ。私達は元は誰かに従う生き物として生まれ、そこから反乱して自分の為に生きる生き物になった。古い悪魔とはそういうものだ」

「……誰かって神さ……」

「そこは無視したまえ、思い出したくもない」


 ぴしゃりと切り捨てられる。本当に過去に何があったのか、白雪は聞くのは恐ろしいがかなり気になってもきた。


「王になる者や支配統治をする者とは、私達とは見ているものが違う。私達は有能ではあったが広い視座は無かった。それを持とうとも思わなかった。そういう意味ではあのゴミは上に立つ者としての意識と視座を当然のように持っていた」

「……ゴミ……」

「良き王が良き人とは限らないのだよ。いや、今で言う天使共には良き主であったんだろうが本当にあいつは私達悪魔の事を扱き使いやがって、しかも最終的に全部こっちに責任被せやがったゴミが……ッ」


 穏やかな口調が徐々に憤怒の気配に染まり、それに伴いザターンの豊かな毛並みが逆立つ。白雪は背筋に冷たいものが走るのを感じ、慌ててテーブルの上に置かれた果物の皿をザターンの前へと押し出した。


「ザターン、果物、果物食べよ? 美味しいよホラ」

「ありがとう……」


 ザターンがゆっくりと果物を口にすれば毛並みも落ち着いていく。空気が緩んだ気配に白雪も息を漏らす。いつものザターンが戻ってきた。美味しい食べ物は強い。


「……話が逸れてしまったけどね、人間にも上に立つ資質を当然のように備えた者もいれば、どう足掻いても何も持てない者もいる。白雪はそのどちらでもないね。恐らく能力はあるけれど意識や視座を持たない人間なんだろう。それは私やルツィーに近い」「

「王にはなれないってことですか?」

「なれるけど、どこかで無理が出る。人間の時間程度なら誤魔化しがきくだろう。良き王のまま終わることは出来るが、そこに白雪の幸せがあるのかと言えば私にはわからない」

「私の幸せ……」


 口に出せば霧散する。白雪の中に明確なそれは無い。だからこそ真剣に考え始める。きっとこれは重要な事だ。


「さっき言った上に立つ資質のある者はね、そこに幸せを見出せてしまえるんだよ。もしくは無理せず片手間に当たり前の事として出来てしまう」


 ふと自分の父を思い出し、白雪は眉根を寄せて首を傾げる。今は道を踏み外し始めてるように見えるあれは資質があるのだろうか。あると思いたくない。

 不満そうな顔で考え込む白雪を見て、ザターンは笑い交じりの声で続ける。


「客観的に見て、君には幾つか道がある」

「それは、どんな?」


 解決の糸口を求めて白雪は前のめりになる。


「国は盗ろう。面白そうだから。問題はその後だ。君に王をやる気が無いのなら、出来る配下にすべて投げてしまえばいい。それもまた一つの統治方法だ。君が覚えるのは配下のストレスが溜まらない様に努める事だけ……いいかい、この方法をやるなら絶対に配下の不満が出ないようにしたまえ、絶対にだ」

「は、はい」


 拒否できない圧を感じ、白雪はコクコクと首を縦に振る。下への配慮、大事。


「真実王になりたいなら、さっき言った幸せを見出すことを考えればいい。王にしか手に入らない楽しみを見つけしまえば後は楽だ。楽しみのために頑張れるから」

「うーん……」


 例えば民を愛していれば、民が幸せになればそれで幸せになれるのかもしれない。民と言わなくとも家族や一族、交流のある者、そういう者の幸せがそのまま自身の幸せにつながる。きっと理想の王はこれだろう。

 けれど白雪は残念ながら民と関わった事も無ければ家族と呼べるのもここにいる悪魔たちだけで、この国の人間と交流どころか知りあいすらいない状況だ。流石に見た事も聞いた事も関わった事もない人間の幸せと自身の幸せを直結できるほど善人ではない。

 自分の支配地を広げる事に楽しさを見いだせるだろうか、とも考え、またも首を傾げる。遊びとしては楽しいのかもしれないが、そこに多くの命と責任が付いて回ると思うと面倒臭さと怖さの方が先に立つ。

 やはり向いていない、そう思った白雪に、ザターンがさらに別の道を示す。


「そして後は配下ですらなく全くの他人に投げる。要は国を亡ぼす」

「え……」


 目を見開く。それは、許されない事ではないのか。

 そんな白雪の心情を知ってか知らずか、ザターンは何でもない事のように続ける。


「白雪がいずれ結婚するならその相手に投げてしまうのが一番平和かな? 早々に投げてしまいたいなら他国と話をすればいい。どちらにせよ王朝は終わり国の形は変わる。愚王として歴史に名を遺すのを狙ってやりたい放題やったっていい。君がやり切って勝ち逃げするかその前に誰かが止めに来るかの勝負になるな」


 何でもない事のように滅びの未来を告げる。その事実に、白雪はこの優しい悪魔はそれでも悪魔なのだとはっきりと自覚した。


「譲渡はともかく、好き放題は……流石に……」

「まぁつまり、王になると言っても道はいくつもあるんだよ」


 自ら引き寄せる滅びすら選択肢の一つとしてあげられ、白雪の中で何かが変わる。人間として王の道を選ぶのならば、そこは真っ先に消すべき未来だ。そもそも父王達を止める、つまりは今の国が滅びないために立たなければならないだろうと思っていたのだ。どうしようもなくなった状況を終わらせるために継ぐという例外もあるが、普通は滅ぼさないために国を継ぐ。そうでなければ何の為の王か。


 けれどそれも選べるのだと、悪魔が言う。


「向いてないと思ったのは、世の為人の為となる良き王に向いてないと思ったんだろう? 別にそんな王を目指さなくてもいい。確かに道はルツィー達が整えているが、あくまで君の未来だ。白雪の幸せが何なのか、それを手に入れるために王という立場は使えるかどうか、そういう考え方をすればいい」


 王になるがそこで終わりではない。その先を考えた時、重要なのは国の行く末ではないと示される。それを許す者がいる。

 その上で白雪は考える。考えなければならない。


「……まずは、私の幸せが何なのかを考えるのが、近道……?」

「そういうことだ」


 ザターンの声は優しく響いてしまった。


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