表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

あなたの愛は真実でしたか?

作者: 夕霧 なな

初投稿です

「セレーナ、お前のような悪女は王妃としてふさわしくない!私はお前との婚約を破棄する!」


学園の卒業記念パーティーに全く似合わないそのような宣言をしたのは、この国の第一王子で、私の婚約者であるウィリアム殿下その人でした。


その横で少し怯えたような顔をしながら侍らされているのは、アリシア・トレナー男爵令嬢だったかしら。彼女は私たちの国の貴族ですが、長く病弱であったため大事を取って休養していましたけど、2年生から私たちと同じクラスに転入することになり、あっという間に殿下は篭絡させられてしまいました。彼女が田舎から来たこともあり周りの令嬢たちとは異なる天真爛漫な性格が殿下を惹きつけたのでしょうか。


ウィリアム殿下に腕を絡めさせ、こちらに対して勝ち誇るような顔をした彼女。そして、ウィリアム殿下もまた、私を強く睨めつけていました。



馬鹿な子たちですこと…。



まあ、都合は良かったのかもしれないですね。


「婚約破棄の理由は、どのようなものなのですか?」


「この期に及んで言い逃れようとでもする気か!悪女め!嫉妬したお前が私の真実の愛の相手であるアリシアに対して嫌がらせを行ったのだ!幸い目立った危害が加えられなかったからよかったものの、即刻謝罪しろ!」


その後の殿下の主張はひどく幼稚なものだと言わざるを得ません。階段から突き落としたとか教科書を奪って捨てただとか、後はお茶会で除け者にした、なども言っていますが。


正直に言いますと、もしも本気で彼女に嫉妬して嫌がらせをするのならこの程度で済むわけがないのですが、なぜこの王子はその考えに行き着かないのでしょうか?


「それらはすべて冤罪ですので後ほど公爵家として抗議を出させていただきますわ。それと婚約破棄の件は承知しました」


せっかくの卒業記念パーティーなのにも関わらずこんなことに巻き込んでしまった皆様にカーテシーをし、私は退出させていただこうとすると、


「ちょっと待て!そうやって言い逃れるつもりだろう!アリシアへの謝罪もなしに出ていこうとはどういうことだ!」


はぁ、思わずため息が出てしまいそう。こんなに殿下は愚かだったかしら?


「少なくとも、この場で言い争うことではありませんわね」


そう言って、私は会場を後にしました。






「まさかあそこまで馬鹿だと思っていなかったわ、でも真実の愛…ね」


あなたにとっての真実の愛はアリシアという名の彼女だったのですね。でも、私にだっていますのよ。一生叶うことはないと思っておりましたけど…。





「と、いうことがありましたのよお父様…お父様?」


「私のかわいいセレーナに婚約破棄をした、だと?しかも冤罪まで作り上げて?」


相変わらずお父様は私のことを溺愛していらっしゃるわ…。でもそうね、あの殿下たちの行動はとてもじゃないけど許されることではないわ、実質的な公爵家への宣戦布告とも受け取れるようなもの。


「私は正式に王家へと抗議をしておく。だが、セレーナ。過去の出来事だけでなく将来にも向き合わねばなるまい、お前はどうしたい?」


「…そうですね。もしも叶うのならば…」






1週間後には正式にウィリアム殿下と婚約破棄が成立した。お父様が強く今回の事件を非難したこと、また国王陛下がこの事件に対して相当お怒りになったらしく王家有責であっさりと終わってしまったそうですね。

そして私は…




「それにしても、本当に君は愛されてるね、セレーナ」


「だとしても、私が愛しているのはあなただけですわよ、ルーク様?」


「なら、僕はその愛に応えてあげないといけないね。あの王子の婚約者に君がなったときは諦めていたけど、人生とは分からないものだね」


「ええ、本当に…」


婚約破棄騒動の後、私がお父様に願ったのは私の初恋のその人で、シヴェール侯爵家長男のルーク・シヴェール様との婚約をできるだけ早く行いたいと、そう願いました。彼はもう17歳ではありますが、未だに婚約者はいません。子供の頃の約束を、覚えていらっしゃるのかしら。そうだと嬉しいけれど、聞いてみるのは少し怖いわ。


そうして、2週間という異例の早さではありましたが私はルーク様と婚約することとなりました。


それにしても、やはり初恋というものは褪せないものですね。私は殿下とは違うので、殿下の婚約者に選ばれてからルーク様と会うことはありませんでしたが。それでもこの好きだという気持ちに嘘はないと断言できます。


「私たちも、真実の愛で繋がった相手だったのかもしれませんね?」


「そうかもしれないね、これもまた運命なのかな」



ふふ、私は今幸せですわ。ですが殿下、あなたの真実の愛とやらは本物だったのかしら?





─────────────────────

sideウィリアム


「ねぇウィリアム様~、私新しい宝石が欲しいわ」


「つい先日買ったばかりだろう!?今回の件で国王陛下にもひどく怒られたんだからしばらくは大人しくしてくれよ!」


「なんでなのよ!今までずっと贈ってくれたじゃない!!」


「もういい加減にしろ!!私は公務で忙しいんだ、帰ってくれ!」


はぁ…どうしてこうなったんだ。


私は昔からセレーナが嫌いだった。あからさまに義務的で、私にすぐケチをつけてくるし、とにかく口うるさくて煩わしかった。


アリシアはかわいらしいし、プレゼントするとすごく喜んでくれたり、私を持ち上げてくれて、何をしても埋まらなかった心が満たされるような感覚だったはずなのに。


今ではもう、彼女の何もかもが煩わしくて。


セレーナだったら、こうはなっていなかっただろうか?


これが、私の求めた真実の愛だったのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
王子、怒られたくらいで済んでよかったね。 わかってないと思うけど。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ