予知少女と先生
「それではお次は私が......私も面白いお話ではないのですが......」
「別に私は面白い話を求めているわけじゃないよ?ただ、みんながこの世界で記憶を思い出してからのことを聞きたいだけ。もし戸惑いとかあったならそれも聞きたいからね」
「そうでしたか、では……」
ニイナは安心したようで話し始める。
「私が記憶を戻したのは、レノさんとお会いした時ですね。あの時は困惑していましたが、レノさんも随分前に記憶を思い出していたようでしたので相談に乗っていただいて助かりました」
「ああんなこともあったな。俺はお前らよりも先にこの世界で暮らしてたからな」
「待って?二人っていつのタイミングで会ったわけ?」
チェーロは少し待ってほしいと手を挙げる。
いつどこで二人が会ったのか聞いてみたいと思ったのだ。
「えーと、いつでしたっけ?」
「俺がなんか姫さんの話し相手として呼ばれたときじゃなかったか?」
「多分それだろうね、僕も記憶してる」
「お兄様が言うならそれですね」
ニイナは覚えていなかったようだが、クラウとレノは覚えていたようである。
レノが言ったことに合わせてクラウは相槌を打った。
「レノが姫さんとか言ってるの似合わなくて面白いね」
「たしかに違和感ありますよね」
こそこそとニイナとチェーロは耳打ちをする。
「聞こえてるからな?」
「だって似合わないのはほんとでしょ?で、そんなレノさんはいつ記憶思い出したの?」
「俺は、まあ一回死にかけた時だな。その時にお前の......バカソラの言葉を思い出してな。生きたいって言えだったか?あとは、後悔が残んねえようにだったか。まあとにかくお前の言葉思い出してそのまま芋づる式にな」
「死にかけたって何?!今生きてるから大丈夫だったのは分かるけどね?!そういうことは早めに言ってくんないかな?私の心臓に悪いんだよ急にそういうこと聞くのさ!」
「あ?別に関係ないだろ?」
レノのその言葉を聞きチェーロは深呼吸をした。
「俺にバカだなんだと言ってたけど、レノの方がバカなんじゃないか?何が関係ないだ?関係あるだろうが!大事な先生のことの心配させろ!このバカ!俺の言葉思い出してくれたのは嬉しいよ?だったら、それなら......関係ないなんて言うなよ......」
チェーロの目には涙が浮かんでいる。
話している途中には少し言葉がつっかえてしまうこともあった。
思わず前の意思が出てきてしまうほど、レノに関係ないと言われたことがチェーロにとってショックだったのだ。
「そうだな、お前はそういうやつだったんだ。関係ないなんて言ったら傷つくやつだったな......これは俺が悪いか」
「そうだよ、レノが悪いの。私は何も悪くないもん。関係ないなんて言わないでよ。一緒に歩んで行ってよ。私のことを心配するなら私にもレノのこと心配させてくれないと許さないから」
「ああ、ごめんな」
「なんか素直に謝られるのもそれはそれで違和感......」
「どうしてほしいんだよ」
「んー好きに生きてほしいかな!」
チェーロは涙を拭いて満面の笑みで全員に向かって言うのだった。




