紫
「じゃあ次は僕だね」
「あれ、クラウも話してくれるんですか?てっきりただ聞いてるだけかと......」
「君って僕のこと分かってるのか分かっていないのかどっちなのさ。別に、面白みのない話をするだけだよ」
クラウはそう言って目を細めた。
「生まれ変わった君と出会う前から僕の記憶はすでに存在していた。ただ生活していただけだったはずなのに気がついたら紫雲稜だった時のことを思い出してたんだ。半信半疑だった僕の記憶に確信を持ったのはネビアに会ったからだけど」
「え、クラウがネビアを名前で呼んでる?!明日雨かな......」
「そこに反応しないでくれる?
クラウはチェーロと会う前から全てを思い出していた。
きっかけは定かではない。
だが、チェーロはこう考えた。
「ごめんなさい......にしても、あなたらしいですね。稜さんは街のことを大切に思っている人でしたから。だからじゃないですか?ただ過ごしているだけでもあなたの前と繋がった。記憶が戻るきっかけって案外簡単なことかもしれないですからね」
「君もそうだったの?」
「いや、私はずっとありましたから。生まれた瞬間から田宮空の記憶ありましたからね。まあ、最初はそれはもう戸惑いましたよ。だって、男だった俺が女になったんですよ?なんで違うんだろうって悩みましたし......それにみんなにも一目でいいから会えないかってずっと考えてたんです。その時に容姿が違ったら気づかれる可能性下がるなあとか色々と。それに体力の違いも最初は苦労しましたね」
「君の容姿が違ったところで僕は変わらないと思ってるよ。だって君は空でしょ?いつまでも、ずっと。橙色の輝きを持っている、僕が唯一認めた男だ。それなのに、君がそういう弱音はいてるの聞くとイライラするよ」
どんな姿だったとしてもクラウは空に気付くのだと言う。
その言葉を聞いてチェーロが微笑んだ。
「たしかに、あなたならどんな俺だったとしても気が付いてくれそうですね。あ、でも最初に会った時私が言うまで分かってなかったじゃないですか」
「あれはめんどくさくてまともに君を見てなかったからね」
「え~じゃあ次は分かってくれます?」
「次なんてないと思いたいけどね。でも、まあもし次があるのだとしたら最初から最後まで隣にいるよ」
「な、なんでそんなに素直なんですか......こっちが照れるんですけど?まあ、もしもがあったらその時はよろしくお願いします......」
クラウからのまっすぐな言葉にチェーロは顔を赤くして頷くのだった。




