閑話 初代とその仲間
「ただいま~」
「ただいまじゃねえよ!なにしてきてんだお前!」
「何って、孫に説明しに行っただけだが?」
「だからそれが急だっつってんだろうが!」
赤髮の男が金髪のつんつんした髪の男に対して怒っている。
「落ち着いたらどうです?うるさいですよ」
「全力で同意だな」
「うるさいのは元々じゃない?」
「そうだもんね」
「そうであるな」
うなずく男たち。
服装も口調もバラバラ。
一見何の共通点もないような男たちにはある共通点があった。
「昔からだが俺の幹部は少々俺に厳しくないか?」
「お前が集めたんだろうが文句言うな」
そう、男たちは金髪の男の幹部という立ち場にある。
金髪の男というのは、チェーロ......田宮空が継いだ組の初代組長をしていた男だ。
「そんなこと言うな。俺だって知らん人間と自警団を作ろうとは思わん。信頼できるからこそ任せたいと思ったのだ」
「その結果が、少しあれだったけどな」
「少しの悲劇はあった。苦痛もあった。だが、それら全てが俺の孫に......空につながった。そう考えるといいものだと思えんか?」
初代は目を細める。
自分が作った組織が途中で形が変わってしまっていたのを知っているから。
しかし、空が包み込んでくれた。自分の思いも全て継いでくれた。
「あの子は本当に名前の通り、空みたいな子だったな」
「だから気に入ってるんでしょ」
「精神世界にまでいって話をしてきたらしいですからね」
「正直急にこられたら怖かったと思うぞ」
「僕ちんも多分怖いよ」
「予告なしで急にきたら怖いものである」
そんな幹部たちの言葉に初代が言う。
「だって可愛い孫に会いたかったんだもん」
「もんじゃねえよ!で?ちゃんと伝えてきたのか?」
「ああ。俺があの子に伝えていなかったことは、な。あとは、彼女自身が気づくだろう」
「そういうとこ投げやりだよな」
「あの子なら大丈夫だと信じているだけだ。なんてったって俺よりも純度の高い炎を、覚悟を持っているからな。それに、俺と同じように彼女の近くには仲間がいるんだ。だから、きっと大丈夫だ」
初代は笑う。
チェーロを信じている。だからこそ、詳しいことを最後までは教えなかった。
「そうやって思い込んでいたいだけじゃないな?」
「そうかもしれんな。まあ、必要であればまたグローブから話しかけにいくさ」
「それはいいが、いつまでもこの空間が続いてるとは限らないからな?」
初代と仲間たちはどこか分からない空間にただいるだけ。自分たちがいる場所も分かっていない。
ただ分かっているのは自分たちが現生にいるわけではないということだけ。
「そうだな。だが、まだこの空間は崩れていないんだ。それまではこうして話をしたり、孫のところに行ったりさせてくれないか?」
初代が首を傾げて聞く。
「好きにすれば?」
「許可なんて取らずに勝手にすればいいじゃないですか」
「いつも適当だったもんね」
「全力で楽しめばいい!」
「楽しめばいいと思うのだ」
「別に、好きにしとけよ」
幹部たちは初代にそう言って答えた。
好きなようにしたらいい、と。
「いい仲間をもったものだな!では好きなようにさせてもらうとしよう」
初代は幹部たちの答えに笑って喜ぶのだった。




