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聖女に転生したみたいだが逃げ場がないので今すぐやめたい  作者: 紫雲 橙


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真実

「あっ、待って?もしかしてストームたちも今回のこと知って......」

「知ってますよ、チェーロさんが血を吐いて倒れたんでしょう?またあなたを失ってしまうのではないかと思って怖かったです」

「そうだな、あんときも急だったからな~今度こそずっと一緒にいるって決めてたのによ、なんの相談もしてくれねえのはちと悲しいよな」


 心配もさせてくれないというのは嫌だと。

 せめて話すぐらいはしてくれないかと彼らは思っていた。力になれないかもしれなくても相談してほしかった、くだらないことでも話してほしかった。共有してほしかったのだ。


(そっか。私が前で思っていたような気持ちと同じなんだな。みんなの相談相手にしてほしくて、相談ではなくてもなんでも話してほしくて......その想いを彼らにも持たせてしまったのか)


「ごめんね、私一人でどうにかしようって思ってたんだ。でも、無理なのかなって思ったよ。だって前からずっと私にはみんなが必要だったんだからさ。だからね、これからも話すよ。聞いてほしいこといっぱいあったんだ」


 チェーロはほほ笑む。

 もう曲げない覚悟が彼女の中に確かに根付いている。

 

『やっと決まったようだな』


 彼女のつけているグローブから声がした。

 そしてホログラムのように姿が映し出された。


「え?だ、だれ?てかグローブの真ん中に模様あるとこから人の姿が映し出されるとか知らなかったんですけど⁈」

『おじいちゃんを誰とか悲しいぞ?空よ。今はチェーロだったな』

「はいはいそうですねおじいちゃんですよ。何世代も前のね!で、この世界では初代聖女だったっけ?どうしたんですか」

『ぐすん孫が冷たい......』


 チェーロのグローブから映し出された人物は初代。

 組の初代にして、聖女の初代。そして空のひいひいひい......祖父である。


「そういうのいいから説明してくれるかな、おじいちゃん」


 チェーロがにっこりと笑う。

 そんな彼女の表情に


『ずるいぞチェーロ!そんな顔をされたらなんでもしたくなるだろう』

「そういうのいいから早よ話さんかい」

『う、うむ……』


 こほん、と咳払いをして初代は話し出した。


『実はだな、チェーロのグローブに私の力を込めていたのだ。その力はチェーロの想いが確実にならねば使えないように封印してあった。そして、チェーロの炎も私なら制御できたものだ』

「はぁ⁈それならそうって夢の中来た時に話してくれても良かったんじゃ……」

『それはできなかった。チェーロの想いは自分で決めるものであろう?私が言ったことによりこの先の選択が変わってしまうのを避けたのだ』

「制御については?」

『それは、チェーロに自分で限界を知ってもらう必要があると考えたのだ』

「なんだよそれ……」


 チェーロは頭を抱える。

 自分がずっと悩んできたものを解決する鍵は結局は自分の中にあったということに驚いている。


「それって、今回の件も起こさずに済んだかもしれないってこと?」


 クラウが初代に対して質問する。


『先程も言ったが、私は彼女に限界を知ってほしかった。もちろん危ないことがないようには制御していたがな』

「さっき急に出てきたがどこにいたんだ?」

『ずっとチェーロのグローブの中から見ていたぞ。チェーロが前の仲間たちと会いたいと強く願っているところも、な』

「それは言わないで⁈」


 秘密にしてほしかったことを簡単に初代に話されてしまいチェーロは動揺した。

 だが、そんな彼女と反するように彼女の仲間たちは笑っている。


「みんなそんな顔しないでよ……」

「チェーロさんが俺たちのこと覚えていたことが嬉しいんです」

「オレたちは忘れちゃってたけどな!でも、今あるんだからそれでいいよな〜」


 彼らは今まで記憶がなかった。チェーロと話をしたことにより少しずつ思い出していったのだ。

 田宮と過ごした自分のことを。

 組の一員として、田宮空の友人として、幹部として過ごしてきた自分のことを。


「あの頃は色々あったよなあ」

「うん、ほんとにね……終わらない書類の山との格闘とか……終わったと思ったら増えている書類とか……ああ睡眠が恋しい」


 チェーロは遠い目をする。

 かつてのことを思い出して、胃も痛くなっている。


『だがその日々も楽しかっただろう?』

「そうですよー私は結局あの日々も忘れられないぐらいには好きなんだ。今は今できっと好きになるんだけどさ」

『そうか。私も仲間が恋しいので帰るとしよう。ではまたな』


 そう言い残し初代はチェーロのグローブの中へと入っていった。


「結局何がしたかったんだ?あの人は……」


そんな疑問も共に残していったのであった。


 

 

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