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聖女に転生したみたいだが逃げ場がないので今すぐやめたい  作者: 紫雲 橙


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助っ人

「はあ......よく寝た」

「ほんとにね」

「うわ⁈な、なんでいるんですかクラウ!」


 チェーロが目を覚ますとクラウがいた。

 

「私もいますよ」


 驚くチェーロをよそにひょっこりと顔を出すニイナ。

 

「ニイナまで?なんでいるの?私の家ならともかくここレノの家だよ?」


 チェーロは驚いたまま質問をする。

 自分の家であるなら知られているためかってに来るだろうと予測はつくのだが、レノの家にいるのだからなぜいるのかという疑問は浮かんでくるものだ。


「俺が呼んだからだ」


 レノがチェーロの質問に答える。

 家主であるレノ自身が呼んだのだから問題はない。しかし、別の疑問が出てくるのだ。


「......なんで呼んだの?」

「まず、俺が呼んだのはニイナだけだった。それがまさかこいつまでついてくるとはなあ」


 レノがクラウを見て頭を押さえる。


「お兄様は私のことを心配してついてきてくださったんですよ。それと、チェーロさんのこともですね。私がこの場所に来る途中で言いましたから。いえ、こちらに飛ばされてきた伝書鳥からすでに知らされた後からだったかもしれませんね」

「ニイナと話してたら急に来る、って言って窓の外見たんでしょ。何事かと思ったよ」

「だって何かが来るという予感がしたんです。予感というか、みたからなのですが」


 彼女は......ニイナはすでに見ていたのだ。

 チェーロが限界になり、自分が呼ばれるという未来を。彼女はすでに予知していたのである。


「ほんと、ニイナの未来予知は正確だね」

「時々外れてほしいですよ?特にあなたが血を吐いて倒れてしまうだなんて未来は噓であってほしかったです。あなたの力にも限界があるとわかっているはずなのにどうしてそれを超えようとしてしまったんですか?」


 ニイナは困った顔をしている。

 しかし、チェーロを見る瞳はまっすぐだ。


「私、本気を出さなきゃって思ったんだ。だって、先生と手合わせだよ?今のお前の力を見せろって言われたんだよ?だったら全力でいかなきゃって、勝てないと分かってるけど全力でぶつかりたかったんだ。それにね、限界はギリギリ超えないだろうって思ってたんだ」

「超えてるじゃないですか」

「うん、ごめんね。私の考えが甘かったんだよ。今自分の寿命がどれぐらい減ってるのかも定かじゃないしなあ。私、本当にいつか危ない状態になっちゃうかも......」


 そんなことを言いながらも彼女は笑っている。

 まるでそうなったとしても仕方ないとでも言っているかのようである。

 

「そうさせたくないから僕たちが来たんでしょ」

「そうさせたくないから?私が、そうなりたくないと思っているから、じゃなくて?」

「私たちは、あなたに生きていてほしいんですよ。チェーロさんが仲間を頼りたくないと言っていたのを知っています。だから、あなたが覚悟をしてくださらないと動けなかった。あなたが生きたいと言ってくれないと動けなかった。あなた自身の言葉がないとダメだったんです」

「なんで私の言葉がないといけなかったの?」

「私たちがどれだけ説得したとしても、チェーロさんは頑固ですから危険なことには自分一人で突き進んでいきそうじゃないですか。そうすることでまた死線が近づいてしまう。そうならないためにあなたから私たちを頼るという考えになってもらう必要があった。やはりレノさんがいて良かったです」


 チェーロ自身の意思がなければ、チェーロ自身が心から願わなければいけなかった。

 そうでなければいつ覆ってしまうか分からないから。

 いつ自分一人で行動してしまうか分からないから。彼女から仲間を頼るという言葉を引き出さなければならなかった。


「チェーロが頑固なのは変わらないからな」

「なんでこのタイミングで私の名前言うのさ......さっきまでお前って言ってたのに......」

「俺が呼びたかったからだ」

「この自分勝手!でもそういうとこも憎めないから困るんだよなあ」

「結局君にとっての一番は教育係だよね」


 クラウがチェーロにそう言う。

 チェーロはその言葉に小さく首を横に振る。


「違いますよ。私にとっての一番......譲れない誇りは組のみんなであり、友人たちです。あなたが教えてくれたじゃないですか。誇りは譲るなって。自分の大事なものだから誇りっていうんだって。あの言葉ずっと忘れてないですから」

「そう、ならもっと生きて大事なもの増やしな。その分守りたいものも増えるだろうけど、それも含めて一緒に背負ってあげるよ」

「クラウも優しいですねえ。そうやって私のことをつなぎとめようとする。私はもう逃げないですよ。さっきまた覚悟決めたんです。みんなを頼る覚悟を。だから、私の人生見届けてくださいね」

「それはこっちの台詞」


 クラウは微笑む。

 前ではあまり笑うことがなかった彼が微笑むことが多くなったのは彼女の影響。彼女がいることで彼もまた感情が動くのだ。


「お前たちなんか仲良くなったか?」

「ん?前からだよ?時々一緒に和菓子食べたりしてたからねえ。それと疲れた時にはかくまってもらってました!」

「予告もなく急に来るのやめろって言ったけどね」

「それでもかくまってくれてありがとうございました!」

「別に。それより話し合いするって言ってなかった?」


 クラウがレノを見る。


「ったく、集まるといっつも脱線しやがる。対策考えんぞ」

「はい!私もチェーロさんのためにいろいろ案を出しますね」

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