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聖女に転生したみたいだが逃げ場がないので今すぐやめたい  作者: 紫雲 橙


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74/84

自分

 寝させてほしい。そう初めて甘えてみた。

 甘えるというのも少し難しい。


 でも、私もすぐには変えられない。

 だって前もそうだったんでしょう?


⦅あれ、俺のこと気づいてたんだ?⦆


 そりゃ気がつかないわけないでしょ。自分の中にいるの分ってて気がつかないふりもできないよ。

 私の記憶、私の前世の記憶、私が歩んできたもの。

 その記憶たちを見るたびにどこか思うのは映画のようだなっていうこと。自分の出来事だという感覚もあったのだけれど、それも少しずつ薄れてきてたから。


⦅田宮空だった俺と、チェーロっていう存在である今との違いも少し出るようになってきたからだろうね。前みたいに決闘とかある時には俺の意識で動いてるようなものだよね⦆


 私が動いてる時もあるけど、深呼吸して田宮空の意識を出すようにはしてるよ。

 まあ私だけでやってたらきっとすぐに負けちゃうからなんだけどさ。


⦅さっき負けたって宣言してたもんね。俺もそうだったからよく分かるけど。みんなに何か言われると弱いよねえ⦆


 そうなんだよね。どうにもならないっていうか。

 私も自分でどうにかできるならって思ってたのになあ。

 でもあんなに強く言われちゃあね、私も折れてしまうというわけだよ。


⦅俺も折れてたかな。だからあの答えを出したんだろう?⦆


 うん。私の意思だけではなくて、田宮空としての意思でもあったよ。

 彼らに助けを求めてみよう。彼らを巻き込む気はあまりなかったけれど、また組織を作る気があるのだったら頼まないといけないことが出てくる。

 それなら、もう頼ってしまおうかとね。


⦅その判断は間違ってないよ。まあただ中で見ている俺が言えることではないんだけどさ。そうだ、君としてはどうなの?⦆


 どうって、なにが?


⦅聖女としての力を使うことで命を削られていく。それを抗おうとしなかったのは知ってる。でも、なんで抗おうとしなかったのか、なんで誰にも言おうとしなかったのか、俺はそれが気になるんだ⦆


 ああ、そのことなら……前のことを知っていたからだと思うよ。いや、知ってるからじゃなくて経験してきたから。私だって田宮空なんだからさ。

 抗おうとしなかった理由は俺も分かってるはずだよ。


⦅……抗ってもどうしようもない。そう思ったってとこかな。組長になった時と同じで、ね。あの時は最終的には自分で決めたから違うのかもしれないけれどね。もしくは、命が削られていったとしてもそれで仲間を守ることができるのならどうだって良かった、かな?⦆


 正解。どっちも正解だよ。

 やっぱり私たちは同じだねえ。

 こうやって夢の中で対話できるとしても同じなんだよ。

 ああでも、違うところができたね。


⦅そうだね。チェーロの方が素直だ⦆


 素直かどうかはさておき、私は自分がしたいことをしたいようにすることに決めたんだ。

 私はこの先も生きる。そのための方法を一緒に考えてくれる仲間がいるなら……


 全力で頼ることにした。

 ちょっと情けないよね。


⦅情けなくはないよ。頼ることが下手だった俺よりずっといい。重い荷物を誰かに支えてもらって少しずつ進んでいけるならそれがいい。俺の生きていけなかった分までみんなといてね⦆


 もちろん!みんなと最後までいるよ。

 私と俺は同じだから、田宮空の分まで私は生きていく。

 田宮空が甘えられなかった分まで甘えてみることにするよ。


 だからさ、これからもたまには自分同士で対話しようね。


⦅案外楽しいからいいよ⦆


 まったく、素直じゃないなあ……


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