秘密
チェーロは数分後に目を覚ました。
「え、ここどこ?」
「俺の家だ。お前が血はいたからな......とりあえず近くまで連れてきたってわけだ」
「そっか、本当にごめんね。迷惑かけた」
「んなこと気にしてんじゃねえ」
レノがチェーロの頭を小突いた。
そんなレノに対してチェーロは困ったように笑う。
「うーん、でも私はみんなに迷惑かけたくないからなあ」
「んなこと気にして倒れられるよりかは迷惑か
けられた方がずっといいぞ。んで、今回倒れた理由は分かってんのか?」
レノはチェーロにホットミルクを手渡し落ち着いて話ができるようにと自分も近くにある椅子に座った。
だが、チェーロはその問いに対して首を横に振る。
「分からない、なあ。噓だろそれ。どうせまた言いたくねえから俺に......俺たちに隠そうとしてる。噓つくの下手になったなお前」
「なんで分かるのさ.......というか隠すのが下手になったんじゃなくてレノが見抜くの上手いんだよ。はあ......」
噓をついて自分が急に倒れてしまった理由を言わないようにしたかった。
だが、彼女の噓はすぐにレノに見抜かれてしまったのだ。
(前から敵わないからなあ。そんな相手に嘘をつこうとした私も馬鹿だな。でも、余計な心配をかけたくないんだ。私のことで余計な負担をかけたくないんだ。私が抱えているものは自分でどうにかしないといけないのだから)
チェーロは心配をかけたくないからという思いで、本当の理由を分かっていながらも分かっていないと首を振った。
「ほおっておくと抱え込むやつだったからな、気づいたらお前の噓を見抜くのが上手くなってた。で、本当の理由は?」
「言わなきゃダメ?」
「言わなかったらお前が倒れたことストームたちに伝えんぞ」
「ひえっ、そ、それはやめて。騒がれるだろうし、もう戦うなとか修行やめろとか言われそうだし......」
一種の脅しのようなものだった。
ストームたちに言われてしまえば彼女に過保護な彼らが騒がないわけがない。
そうなれば修行をできなくなる可能性だってあると彼女は考えた。
「じゃあさっさと言え。俺も言いふらしはしねえから」
「......そこまで言うなら」
チェーロは頷く。
「私の炎はさ、私の寿命を削ってるんだよね。あの時大量の炎出そうとしちゃったから、今の私の限界を超えちゃったみたい」
その言葉を伝えた後にチェーロは今はなんともないと笑った。
「このバカが。俺には、俺達たちには最後まで全力で生きろとか言っといて自分は誰にも伝えず命削ってるだと?お前は、前から変わんねえバカだ。バカソラで、バカチェーロだ。この先も仲間といてえなら、生きる道を考えろ。力も慎重に使え。あとな、なんのための教育係だったと思ってんだ⁇今世ではその力の使い方も、それ以外のことも教えてやる。一人で抱えんじゃねえ」
レノはチェーロの目を見てそう伝える。
彼女がまた倒れてしまわないように。
一人ですべてをやろうとしてしまわないように。力の使い方も一緒に考えるために。
彼女の教育係をまた引き受けるのだ。
「いいの?レノは忙しいんじゃ......」
「お前のを見るのに忙しいとか思わねえよ。俺にも背負わせろ。生きろ、今度こそ最後までな」
「っ......私のこと、また強くしてくれる?」
「当たり前だ」
これが、レノとチェーロの交わした約束。
これが、再び結ばれたもの。
先生と生徒という絆。
この絆は決してほどけることはない。
チェーロがそう望んだのだから。