命
悪夢、なのだろうか。
けれど、忘れないためには必要だったのかもしれない。
俺の最後の瞬間は夢でも見たくはないものだった。
それでも流れてきたのだから仕方ない。
断片的に流れてくることはあっても最後の瞬間のすべてが流れてくることとかなかったのにな。
しかもこんなに意識がはっきりしている。もはや夢なのかも疑いたくなってくるものだ。
だが、これは夢だ。夢であり、記憶だ。
俺が体験してきたものだ。
徹夜続き、書類の山、そろそろ休めと言ってくる右腕。それが聞こえないふりをして俺は手を動かし続けていた。
それが夜まで続いて……急に音がしたのだ。
戸を容赦なく開けてくる音と、組長はどこだと叫んでくる声。
何が起こったのかと思った。
類はそこで待機していてと俺に言う。
けれど、動かないわけにはいかない。自分のことを探しに来ているのなら出なければならない。
出るまでの間に物が壊されているような音もしていた。
組の人間にまで手を出されたくない。
だから出たのだが、まさか襲撃してきた人物もうちの組の者だとは思わなかった。
見覚えのある顔、声。組に所属している者だと一目で分かった。動揺もしたが、理由を聞いてそういうことかと納得した。
襲撃してきた男は俺が継ぐまでの組が好きだった。俺が継ぐ前は好き勝手暴れられた。自由に動けていた。しかし、俺が組を継いだことにより暴れられなくなった。取り締まられて自由じゃなくなった。それが気に食わなかったのだ。
そう思ったから念入りに準備をして裏切った、と。
俺も少なからずその可能性は考えていた。いつかそんな不満を持って襲ってくる者はいるだろうと。予想はしていたが、本当に来ると悲しかった。
俺がまとめられてなかったからだ、とかもっとちゃんとしておけば、とか色々な考えが頭を支配した。
ただでさえ頭が疲れていてまともにものを考えられない時の出来事だった。
きっとその時を狙ったのだろう。
彼の他にも見知った顔の人間が襲ってきたのだから。
もはや俺の味方は幹部だけなのではないかという状況だった。
類、真、遊さん、翔、陵さん、零、弥一が戦っていた。
そんな状況で俺が前に出ないわけにはいかない。嫌でも向き合わなければならない。
大事な幹部たちだけに任せるわけにはいかないって思ったんだ。
そして戦った。
傷つけたくなかったし、傷ついてほしくなかった。今思い返せば、油断もしていたのだろう。
そのせいで弱点を突かれたときに判断を間違えたんだ。
俺の弱点は仲間だ。
だから類が狙われてしまった。とっさに前に出た。
そのあとすぐに腹に痛みが走ったことで状況を察した。
類が組長と叫んでいたし、なんで俺を庇って、とも言っていたからな。
もう時間がないのだと思った。
感謝も謝罪もどちらもする時間はなかった。
「うわ、汗すご......なんで今こんな夢見たんだろ。前に進もうとしているから忘れないために、か?忘れないし、忘れるわけがないのにな」
絶対忘れない。
あの時伝えられなかったものは伝えた。
けれど忘れられるわけがない。
「抱えて生きるよ。今度はあんなふうにならないように強くなるし、判断もできるようになるからさ」
とはいってもまた間違えるだろう。
私だって完璧なわけではない。前に進みたくても壁が現れることだってあると思う。
「壁は壊すか、乗り越えればなんてことないでしょ。私の力に期限があるのだって知ってるけど、それは進まない理由にはならない。力を使わない理由にはならないよ。全力で生きるから。最後の瞬間は笑ってやるから。突き進むだけだ」
俺の過去は全部連れていく。抱えて歩む。
その上で私がしたいことをする。
覚悟はもう決まっているのだから臆することなんてない。
「よっし、いっちょ頑張るか!」




