紹介
「えー、この人が千和の記憶を持っているレノです」
チェーロはいつもクラウたちと話をする場所にレノを連れてきた。
「久しぶりだなお前ら」
「え⁈レノさん⁈あの⁈」
「へえ、君もいたんだ」
「久々だな~元気そうでよかったぜ!」
クラウとストーム、そしてレインは三者三葉の反応を示す。
その中でもストームはレノという名前に反応した。
「あのってなに?ストーム」
「チェーロさんはご存じないですよね。この世界でレノさんといったら騎士団歴代最強なんですよ。文献にも残されていたはずです。それがまさか千和さんだったとは......」
「そんなことになってたの⁈前から強かったけどこの世界では騎士団に入ってたんだねえ。あれ、今は?」
チェーロは驚き、レノを見る。
「今は何もしてない。ずいぶん前に引退したからな。今は適当に歩き回ってるだけだ。あとは困ってるのを助けるとかな」
「え、それほんとに千和がしてる?」
疑いの目でチェーロがレノを見ている。
前の性格から考えてそういったことをしているレノが想像できないのだ。
「騎士団にいる時は他の奴らのためにとか、命令聞くのとかめんどうだと思ってたんだがな。だからやめてやったんだ。そのあとに気づいた……思い出した。お前が自分の体力削ってまでしてたことをな。街を守りたい、その場所にいる人を守りたい、だったか?もしお前がここに来た時に泣かねえように、お前が守りたいと思うものを先に助けておこうと考えた。その結果がこれだ」
「千和がそんなことを考えるようになるとはねえ......なんか嬉しいかも」
「生徒思いな先生だろ?」
「ははっ、自分で言うんだ?」
生徒思いだとどや顔をしながら言うレノにチェーロは笑う。
らしくないと思ったとしても、それがレノがしてきたことであり、自分の影響だというのならそれ以上の嬉しいことはないと感じているのだ。
(『俺』と過ごしていた時を思い出したことによって変わり出した、か。それは千和が『俺』のことを大事に思っていてくれたということな気がする。というか、そうだと思っていたい)
「ね、私が見つかったから今までしてきたことはどうするの?」
「変わんねえよ何も。お前がここにいるかどうかもわかんねえ間からずっとやってんだ。今更やめるわけないだろ。つーか、お前はどうすんだ?こんなに記憶あるやつらと一緒にいて何もしないとか考えてんじゃねえだろうな?ああ、でもさっきまで離れるつもりだったのか?だったら何も考えてなくてもおかしくねえのかもなあ」
レノはチェーロが隠したがっていたことを言う。
その言葉に
「離れたがっていた?う、噓ですよねチェーロさん......」
ストームが不安そうな顔をしてチェーロを見る。
そんなことは噓だと、自分たちから離れようとしていただなんて噓だと、彼女を信じていたいという気持ちがある。
だが、そんな気持ちを裏切るかのように
「ごめん、そうしようと思ってた」
と、チェーロは素直に答えた。
そして続けて言う。
「でもね、今はもう思ってないよ。決めたんだ。私が守るって。何が起ころうとも私が強くなればみんなが傷つかなくて済むって。だからね、私はもう迷わない。また自警団を作るよ。どうしようもなく怖いけど、どうなるか分からなくて不安だけど......泣き顔は見たくないから、苦しい顔は見たくないから。そのためなら私はまたボスになろう。みんなのことも、もう離さないよ」
覚悟は決まった。
自分のしたいことも決まった。それはもう変わることはない。
「君がそう決めたなら僕から言うことは何もないね。ただ、君が離さないんじゃなくて僕たちが君を離さないんだ」
「だな!チェーロが決めたことなら何も言うことないぜ!まあ、オレたちから離れようとしてたってのは寂しいけど、これからはずっと一緒にいてくれんだろ?」
「うん、私はもう決めたんだ。また巻き込むことになっちゃってごめんね」
チェーロが困ったように笑う。
「謝らないでください!俺は、俺たちはあなたがまた目の前からいなくなることの方が嫌です。だから、どんな形であってもそばにいられるならいいんですよ」
ストームは彼女に謝らないでと強く言う。
離れないでほしい。目の前からいなくならないでほしい。
「ありがとうストーム。私は自分のことしか考えられてなかったんだなあ……情けないや。自分がみんなに傷ついてほしくないからって遠ざけようとして……そんな情けなくてもいてくれるの?」
「もちろんですよ。俺があなたに憧れたのはそういうところ以外ですから。情けないところを見せられたぐらいでは幻滅なんてしません」
「そっか……なら、これからもよろしくね」
チェーロはストームの言葉で安心を得た。
この先もきっと前へ進めるという安心を。
(これからのことはまだ分からない。けれど、彼らがいてくれるなら大丈夫だと思うんだ。また一から作り上げていくことをひたすら頑張っていくとするかー!)




