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聖女に転生したみたいだが逃げ場がないので今すぐやめたい  作者: 紫雲 橙


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心当たり

 レインとストームが攻撃から耐えている頃、別の場所では必死に走っている女がいた。


(早くいかないと!二人が時間を稼いでくれているうちに私はいかないといけないところがあるんだ。あのまま私が戦っても良かったけど、それだとあの炎を使うことになりそうな気がした。それは今後を考えるとなかなか使いたくないって思ったんだよね......まあ、私は二人を信頼しているしあの男のことにもストームなら気づくはず。あの感じはあいつしかありえないからなあ)


 チェーロは走りながら少しの考え事をしていた。

 二人を信頼して任せたからこそ早くたどり着かなければならない場所がある。

 そして、あの男のことを彼女は知っていた。


(多分ミナミだろうな。あいつはいつも世界がほしいって言っていた。自分の手に届きそうなもの全部欲しいって。それを手に入れるためにって、あいつが一番欲しがったもの……私はそれを知っている)


  チェーロは男の欲しがっていたものを知っている。男の空っぽを埋められるものであるかは定かではないが、彼女はそれの在処に見当がついているのだ。

 いや、聞いたことがあるのだ。

 それに関係するものの存在を。


「クラウ!貴方の妹さんに会わせてください!」


 チェーロがたどり着いた場所で一番に言ったのはそれだった。

 クラウがいつもいる秘密の場所。

 彼女が来たのはその場所だった。


「そろそろだと思っていたよ。いや、あの子が言っていたからね……いいよ、ついてきな」


 クラウは動揺する様子もなく、座っていた椅子から立ち上がり歩き出した。

 そろそろ来るだろうと予想をしていたということはチェーロが来るというのを知っていたことになる。


「さあ、この先にあの子がいる。入りな」


 クラウは一つの扉を開いた。

 その扉の向こうの部屋に入ると、ベッドの上で布団をかけて座っている少女がチェーロの目に入った。


「お久しぶりですね、田宮さん。いえ、今はチェーロさんでしたっけ?」


  少女は微笑む。

 驚いた様子もなく、ただ待ち望んでいたというようにチェーロに笑いかけた。


「ああ、やっぱりそうだったんだね。私ね、クラウに病弱の妹がいると聞いた時からそうなんじゃないかって薄々思っていたんだ。でも、確証なかったから、いつかゆっくりできる時に会ってみたいってそう考えてた。けど、緊急事態なんだ。ごめんね」


「ふふっ、お父様からお聞きしたんですよね。お兄様が言ってはいないでしょうから。そして、お父様はきっと私の病気を治すこと、をお願いしたんでしょう。ですが、私のはそんな簡単に治るものではないです。それは田宮さんもよく分かっているでしょう?」


「君が病弱なのは、代わりに未来をみているからだよね?勝手にみえるものだから制御もしづらい、だったかな?」


「はい。今では少し制御できるようになりましたよ。そうでした、私の名前はニイナ。前とさほど変わりませんね」


 ニイナと名乗った人物は未来がみえる。

 それは前からのことであり、前ではその能力を狙ってきたものたちから守ったことが空たちとの出会いだった。


「まあ一番変わったことと言ったら、クラウの妹になったことじゃない?」


「それは私も驚きました。そうだ、こうやってお話をしている時間はない、ですよね」


 ニイナのその言葉にチェーロは静かに頷いた。


「連れていくのは本当はいけないのかもしれない。それに、君のことを危険に晒すことになるかもしれない。それでも、来てくれる?」


「えぇ。この未来も私にはみえておりましたから。だから先にお兄様にお伝えしておいたんです」


「待っていてと言われた時には何事かと思ったけどね」


「素直に待っていてくれてありがとうこざいます。そして、クラウも来てくださいね。あいつがそう簡単に折れると思えないので」


「行くに決まってるでしょ。相変わらずバカだね」


 慣れた手つきでニイナの立ち上がる手伝いをしながらクラウはチェーロに言う。


「来てくれるならバカって言われてもいいですよ」


「田宮さんたちはお変わりないですね……」


「ニイナ、今はチェーロだよ」


「はい、チェーロさん!」


  彼女たちは向かう。

 緊張感など微塵もない。しかし、不安はある。

 信頼しているとはいえ、今の強さでどうなっているか分からないという不安が。


 だからこそ彼女らは急ぐのだ。

 間に合うように、少しでも傷をつけさせないように。

 

(まだ大丈夫でいて!)

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