雨、再び
ストームと肩を並べて戦いたい。それは間違いなんかじゃなくてその思いが消えることはなかった。けど、今感じてるこの気持ちはなにか別のもんだ。
ストームの一番はチェーロで、あいつはチェーロを守るために戦う。それは分かってる。
でも、なんかなオレもさっきからおかしいんだ。
組長、類......その単語にどこか聞き覚えがある。二人には聞こえなかったって言ったし気にすんなとも言った。でも、本当は気になって仕方なかった。
あの男が言った空っぽみたいな感覚。それはオレにもある。
オレもチェーロを見た時から満たされるみたいな感覚があった。ストームの隣にいる時には少ししか感じなかった満たされているような感覚がチェーロと話している時には完全に満たされているような気がした。
あんなにオレの方を見てほしいって思っていたストームに対しては少ししか感じなかったものを、チェーロに感じるとは思っていなかった。あんなに、チェーロのことを羨ましいって思ってたのにな。
けど、その満たされるっていう感情に戸惑う気持ちはない。チェーロとだと笑ってられるんじゃねえかって気持ちもさっき話してるうちに浮かんできた。そんで、オレは一つの記憶?みたいなのがよぎった。
オレが今持ってるみたいな剣を持ってる男が、親友だという男を守ってる姿。親友であり組長で恩人なのだと。大切だからずっと共にいたかったのだと泣いている姿。仲間をかばって死んでしまったと聞いた時にはそういう奴だからいつかはそんな日が来るんじゃないかって思っていた、と。それでも、親友は自分の笑顔が好きだと言っていたから笑っていようと、強がる姿。
その男の名前は蒼井真。親友はソラ。ソラがいたから生きていられた、ソラとのつながりを感じられる青い雫がついたネックレスだけは絶対に手放せなかった。あいつが組を継ぐって言った時にはついていくっていう気満々だったのに、来なくていいって巻き込みたくないからって、走って逃げられたんだっけな。懐かし......って、なんでオレは知らないはずなのに懐かしいとか思ってんだ?
なんで、あいつとかって......そもそもなんで、こんな記憶が流れてきたんだ?なんで、こんな苦しいんだ?なんでオレは今空の近くにいないんだ?
考えてっけどもう答えは出てる。
オレ自身が蒼井真。それだとしっくりくんだ。
そんでオレが肩並べて戦いたいって思ってたストームが急にチェーロに対しての態度を変えた理由も、思い出した今なら分かる。
チェーロがソラで、ストームがソラの右腕だった赤木。
それが分かったんだ。なら、今のオレがすることは一つ!
「加勢するぜ赤木!!」




