雨音
(この雨がレインの魔法、か。ストームのときにも思ったが名前通りのようだな。雨の威力としてはさほど強くはないが少々厄介だな)
チェーロはどう戦おうか考えながら進んでいく。
だが、思ったように進めない。
「どうだ?オレの雨は!強さはないけどこの魔法はな、相手の動きがゆっくりなるような効果を混ぜてるんだぜ!雨は視界も遮るし動きづらいだろ?」
「そうだな動きづらいさ。しかし、レインはまだ本気ではないだろう。その剣は飾りか?」
チェーロがレインの剣を指差して言う。
ストームとの時は木刀であったが、レインは真剣を持っている。
「これ出したらチェーロ傷ついちゃうだろ?護衛隊なのに対象を傷つけるとかダメだっての!」
「俺は本気でこいと言ったのだがな。別に傷つきもしないさ。それに、洗練された剣の腕を見てみたいんだ」
「チェーロがそう言うなら、っと…『霧雨』」
レインがそう言うと、チェーロの視界がぼやけた。目の前にいたはずのレインの姿が見えなくなっているのである。
(どこにいるのか分からないようにしているのか。レインの残像のようなものは見えているが本体ではない。つまりはどこかにいったということだ。さて、気配を探すか……)
チェーロは集中するために目を閉じる。音を聞いてレインの動きを探っている。
「どこか分からないだろ?ちなみにこれに技名つけたのさ隊長なんだぜ!隊長とはよく戦うけどいっつもギリギリなんだよなあ。負けたり勝ったりの繰り返しだ。そんな隊長に勝ったチェーロのことは尊敬してんだ〜戦うときに口調変わるとことかもかっこいいぜ!でもよ、オレ負けたくはねえんだ」
レインの姿が見えないままで声だけが聞こえる状態。
だが、チェーロにとっては声だけで十分であった。否......
「そんなに殺気出してたら気づかれるよ。それとも気づかれたかったのか?」
彼女はレインの殺気というものを感じ取りその後にまわった。
「殺気なんて出した覚えはなかったんだけどなあ。だってオレがそんなものをチェーロに出す理由ないだろ?」
「そうだな。まあ、殺気ではないのかもしれないが似たようなものは感じたぞ。そういう感情は姿を消す時にはなくしておいた方がいい。気づかれる可能性が高いからな」
「戦いのときに忠告って......余裕なんだな!」
レインが再びチェーロを見て剣を構える。
「『バーストレイン』」
「ストップ!!そこまでだ!」
ストームが間に入り止めた。
「なぜ止めた?」
「すみませんレインのこの技は人に使うのには危険だと判断しました。あなたなら避けられるかもしれませんが、広範囲なので周りにも被害が及ぶ可能性を考えたんです」
「そういうことなら仕方ないな」
「俺の自己判断で止めてしまいすみませんでした」
「いや、いいんだ。君の判断にはいつも助けられてきたからね。危ないことがありそうだったなら止めてもらえて良かったよ」
チェーロはグローブを外してストームに微笑む。
「やっぱり......オレじゃ......」
レインは剣を鞘に納めたあとにそう呟きどこかへと走っていった。
(さっきのレインの言葉気になるな。それに、なにかを抱えたような表情。あの表情を見たらそのままになんてできない)
チェーロはレインを追いかける。
苦しいものを抱えているのだったらそのままにしておくことなどできないと考えたからだ。
見失わないように走って追いかけていくのだった。




