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師匠

 翌朝、チェーロは起きてすぐになんとも言えない空気を纏っていた。


(変な夢見た……変な夢ってか初代を名乗る人に俺の孫!って抱きつかれたんだけど…あんな人だったんだなあ。顔も前の俺そっくりすぎてドッペルゲンガーかと一瞬思った。武器は自由に使ってくれと言われたのでもう気にしないことにするのだが)


 彼女は夢の中で初代に出会ったのだ。初代は田宮空によく似た男性であった。空が子孫なので初代に似たというのが正しいことである。

 そしてチェーロにグローブを自由に使ってくれということと、聖女になるのなら仲間を見つけたほうが良いと伝えていったのだった。

 夢の中の出来事なのに、チェーロの頭の中に記憶として刻み込まれた。


「仲間、ねえ……俺はもう彼ら以外には認められないな…」


  チェーロはそう呟き空を見上げた。

 朝の眩しい日差しを、もう会えない仲間のことを思いながら見上げているのだ。

 そして気持ちを切り替えて、日課の走り込みをするために準備をして外へと出て行った。


(そういやなんか結婚迫られるとかなんとかも言ってたな……まっ、今の俺まだ四歳だし気にしない気にしない。とりあえずソルさんとこ行こ)


 走りながら誰にも聞こえないように心の中で考えごとをした。初代に伝えられたことはもう一つあり、それが結婚を迫られるというものであった。


 なんでも、聖女と結婚を結ぶと生涯病気にかからず元気に暮らせるやら、何かに失敗することがなくなるやら……色々な噂が出回ってしまったせいなのだとか。


 本来なら遠巻きに見られるような存在だというのにいつの間にかそんな噂が出てしまうようになったのだ。そのことを知っていたので初代は忠告をした。初代自身は最終的に自分の好きな者と結婚でき末長く暮らしたということであった。


(なんか最後惚気られてたんだよなあ。人の幸せ話聞くの別に嫌いじゃないからいいんだけど。なんて考えごとしてたらついたや)


 チェーロはソルの店の前まで来ていた。


「また来たのか?いらっしゃいなんだぞ!ソルなら今こっちにいるんだぞ!」


  リオが店の前に立っていてチェーロをソルのところまで案内する。彼は今店の中にはいないので誰か来たら案内するように頼まれていたのだ。


「ソルー、お客さんなんだぞ!」

「おお!チェーロか!すまないな、日課の鍛錬をしていた…滅多に人が来ないから空いた時間にしているんだ!!」


 リオが声をかけるまでソルがしていたことにチェーロは目を奪われていた。


(まさかそこまで似ているとは…格闘技でもしているのではないかと思っていたが空手の動き、か。益々あの人を思い出すなあ。俺の太陽みたいな人。組を明るい笑顔で照らすような人……あの人も空手が得意だった)


 ソルは空手のような動きをしていたのだ。その動きを見て彼女は自分の仲間をまた思い出していた。

 自分の先輩であり、道を照らしてくれた人。

 その人にソルが似ていたからだ。


「ソルさん、私にその動きを教えていただけませんか?私も、護身術として習っておきたいんです」


 これは建前や誤魔化しなどではなく本音。彼女は強くなるためには前のような教育係が必要だと考えていた。

 そんな時にちょうど良い人がいるのを見たらいてもたってもいられなかったから頼んだのである。


「もちろんだ!自分の身を守れるようになることも大事なことだからな!リオも時々教えておるから一人も二人も変わらん!!」


  ニカッと笑ってソルは言った。

 その答えにチェーロは嬉しくなって飛び跳ねそうだったが引かれそうなので


「ありがとうございます。よろしくお願いします!」


  お辞儀をするだけにとどめた。

 彼女はこうして体術の師匠を手に入れたのである。


(やった!強くなるためには先生がいないと…自分でもどうにか頑張ってきたけど客観的に見てどうかも知りたいし。なによりソルさんならすごい信頼できる。引き受けてくれたの本当に嬉しいな)


  内心ではこんなことを思いながらもソルとリオと共に体術の鍛錬に日々励んでいくことになるのだった——

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