休息
「疲れた......」
チェーロは机に突っ伏してそう呟く。
「大げさ。そんなに長い時間してないでしょ」
「一回の勝負でもクラウとなら疲れるの!」
「君も楽しんでたじゃない」
「クラウを退屈させたくなかったんですよ」
チェーロはクラウが退屈しないようにと本気でしたから疲れている。
場所を移動して誰も来ないクラウの庭に来て話をすることにしたのだが、ついた瞬間に机に突っ伏してしまったのだ。
「チェーロさんがお前のためにって頑張ったんだから感謝しろよ」
ストームが紅茶を淹れてきてチェーロたちの前に置いた。
「いいんだよストーム。私が何も言わずに出たのも悪かったからさ。ん、相変わらずストームの淹れたお茶は美味しいねえ」
「いないと思ったらお茶淹れてきたんだ。気が利くじゃない」
「お前のためじゃなくてチェーロさんのためだけどな」
ストームは椅子に座る前に机の上にクッキーが乗っている皿を置いた。
紅茶に合うものを、と考えて持ってきたのである。
「もしかしてこれってストームが作ったやつ?」
「はい。作り置きしていたのでついでにと持ってきました」
「いつのまにそんなことしてたの⁈」
「チェーロさんにまた食べていただきたかったので」
「その気持ちは嬉しいけどちゃんと休んでね?私が言えたことじゃないけどさ」
チェーロは微笑み、クッキーを口へと運んだ。
前の時から馴染みのある味。
自分の好みを研究して作ってくれた味。
「やっぱり私は、ストームの作るものが好きだよ」
「なんともったいなきお言葉!感無量です!」
「大袈裟だよ……ほら、ストームも食べなよ?クラウも食べてるから減っていっちゃうよ」
「俺はチェーロさんに食べてほしくて作ったんですけどね」
「私も食べてるから。ね、一緒に休もう?ストームもさ、私が急にいなくなったから焦って疲れたでしょ?」
「そう思うなら一言かけてほしかったんですが......」
ストームがため息をつく。
居場所を聞いた時の驚き、姿を見た時の安堵をチェーロには分かってもらえない。
「いなくなる時声かけないよね君って」
「チェーロさんより自由だったやつが言うなよ」
「別に僕は常に組にいろと言われていたわけじゃないからね」
「本当、クラウは自由だったなあ。大体私だって急にいなくなってないし......ちゃんと置き手紙してく時もあったじゃん」
「もう少しわかりやすく書いてあると助かったんですけどね?」
「じゃあ次は分かりやすくしとくね!」
「次を作ろうとしないでください!」
三人は紅茶やクッキーを飲んだり食べたりしながら会話を楽しんでいく。
心労と体の疲れをどちらも取れるようにと話をしているのだ。
話題が途切れることはない。長年月日をともにしたからこそできる会話だってある。
彼女たちはつかの間の休息を存分に味わうのであった。




