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聖女に転生したみたいだが逃げ場がないので今すぐやめたい  作者: 紫雲 橙


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「ソルさーん、リオー!久しぶり〜」


 チェーロは手を降っている。

 隣国から帰ってきて真っ先に向かったのはソルたちの場所だった。


「久しぶりだな!って、なぜ王子を連れてきているんだ?!」


 チェーロの隣りにいるクラウを見てソルは驚いている。

 ストームもいるのだが連れてきているのを見たことがあるためか驚きはないようである。


「久しぶりに来たと思ったのにまたオレッちへの用じゃないんだぞ?」


 不満を顔に出すように頬を膨らませている。

 チェーロが最近来なかったことと、来たとしても自分への用事ではなかったことに対して不満を抱いているのだ。


「ごめんねリオ。今日はねちょっとお願いがあってきたの」

「お願い?」


 ソルとリオは揃って首を傾げる。チェーロのお願いが何なのかを聞くために。


「はい。ソルさん、いつもの場所貸してもらえますか?」

「かまわないが......何をするんだ?」

「ちょっと、罰を受けなきゃみたいなので......」


 いつもの場所。それはチェーロたちがいつも力をつけるためにトレーニングを行っている場所のことである。ソルが所有している場所だからとお願いをしに来たのだ。


「ば、罰?」


 ソルは不思議そうにチェーロと彼女についていくクラウたちを見る。

 罰だと言った彼女のことが気になりソルもリオを連れてあとに続くのだった。



「というか、本当にしないとですか?」


 チェーロはクラウを見てそう言った。


「勝手にいなくなっていたことと、前での僕との約束」

「うっ、はーい」


 チェーロの言う罰とはクラウとの手合わせのことであった。

 

(帰るときに急に言われたから断りたかったんだけどなあ。でも、クラウが一度言ったこと曲げないのは知ってるし、勝手にいなくなったのは悪いと思ってたしいっか。城の方で手合わせするとうるさいだろうからってソルさんのところ借りることになったけど貸してもらえて良かったな)


 チェーロはそんなことを考えながらグローブをはめた。

 そしていつものように深呼吸をする。


「いつでも始めていいぞ」

「相変わらず戦い始める時には変わるよね......まあ、強いならどっちでもいいけどさ」


 クラウは杖を構えてチェーロに勢いよく向かっていく。


「クラウの武器は変わらないんだな」

「使いやすいものを使うのは当然でしょ?君だってグローブを使ってるじゃない」

「手に馴染んだものを使ったほうがいいだろう?手加減してほしいというのなら外すが」

「何寝ぼけたこと言ってるのさ。本気できな」


 手加減なんてクラウは求めない。

 チェーロだって手加減する気はない。クラウが強い存在が好きなのだと知っているから。自分も強くあり続けなければと思っているのだ。

 そして、彼女はクラウからの攻撃を防いでいる。杖を振るっている勢いをいなして自分にダメージが来ないようにしているのであった。


「す、すごいんだぞ!」

「ああ、すごいな......」

「さすがチェーロさんだ!!」


 見ている三人は中々決着のつかない手合わせを見てそんな反応を示している。

 特にリオは自分と似たような歳の女の子が、体格がはるかに違う者と互角にやり合っているということにすごさを感じている。


「オレっちもあんなふうになれる?」

「なれるさ、リオだって頑張っているからな!!」


 ソルはリオの頭を撫でて励ます。

 

(聞こえてはいる。私のようになれるか聞いているのかクラウのようになれるか聞いているのかは分からないが、リオには未来がある。この先、きっと強くなれるさ。私が言ったところで響かないかもしれないからソルさんが伝えることで意味のあるものになる。成長を見届けていくというのも楽しいものだからな)


 チェーロは微笑んでいる。

 手合の途中だということも忘れて。


「なに笑ってるのさ。僕との勝負に集中してくれない?」

「ああ、すまないな。集中はしているよ」

「あっそ。じゃあもう終わらそうか」

「そうだな」


 チェーロは拳を握りクラウへと放った。

 クラウは杖でそれを受け止めたあと、チェーロの足を引っ掛けて転ばせ杖を彼女の顔の横についた。


「僕の勝ち、だ」

「負けたよクラウ」

「僕と君との勝負はいつも引き分けに近いけどね」

「そうですね。あなたは強いですから」

「あれ、戻ったんだ?」

「いつまでも戦闘モードのままでいたくないですから」

「そう」


 クラウとチェーロの今回の勝負はクラウの勝ちで終わった。

 どちらが勝つか分からないのが彼らの戦い。

 前からの通算だと、どちらも同じようなものである。

 

「またやるからね」

「また、って......クラウとの手合わせって数時間続くときもあるじゃないですか......」

「別にいいでしょ?」

「いいですけど......」


 罰だったはずだが、彼女はクラウとの手合わせを楽しんでいた。

 その手合わせは前の時のようだったと遠くから見ていたストームは思うのだった。

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