からかい
「さーてとこれでいっかな」
自分の想いを伝えたとチェーロは伸びをする。
そんな彼女に唯一人の人物が異議を唱えた。
「僕への答えは?!」
「え、欲しかったの?勝手についてくるだろうから別にいいのかと思ってた」
「他二人にはあんなにちゃんと答え出しといて僕にはなしですか?!」
「あはは、冗談だよ。ちゃんと答え言うからね」
チェーロはネビアを見る。
前でからかわれることが多かったため、一度仕返したいと考えていたのだ。
本当は言うことは決まっていたというのにからかうために、何も伝えないというふりをした。
「今世もともにあってもらわないと困る、だっけ?それは、私もなんだよね。ネビアの選択ってのがなんなのかも分からないし、間違ってないって証明することの手伝いができるとは思わないけど......ともにはいてほしいかな」
チェーロは微笑んでネビアに伝える。
ともにいること。それこそが彼女の願い。再び出会えた皆とともにいることこそが彼女にとって大事なことであり、ネビアの想いとの一致。
「言われなくてもともにいますよ。それに僕の選択というのはあなたには言いません。言ったらあなたにまた笑われてしまうでしょうからね。ですが、あなたならいつの日にか察してしまうかもしれませんね。変なところで鋭いですから」
ネビアも微笑む。
自分の言ったことへの答えが返ってきたこと、同じ想いであること、しかし完全に同じではないこと。それが分かっていたとしてもネビアがそれを言うことはない。自分の決めた選択についても告げることはない。それでいいと考えている。
(前から本音を言ってくれることが少ない奴だった。でも、会った時から嘘をつかれてたから今更気にすることはない。ただ一つ思うことはある)
チェーロはその一つを言うためネビアと目を合わせて
「......無理するなよ」
そう呟いた。
弥一が休まずに無理することが度々あったのを覚えているためその言葉を口にしたのだ。
「あなたが言えることではないと思いますけど?」
「ほら、私は前の分まで今自由にしてるから。でもネビアは今世でも無理しそうで怖いんだよね。ローゼもいるなら尚更でしょ?」
「そう思うならあなたが見張っていればいいんじゃないですか?どうせ一緒にいるのなら変わらないでしょう?」
一緒にいるなら変わらない。なんの疑いもなくネビアはそれを口にする。
「そっか、そうだよね!うん、私が見ておこうかな。でも、とりあえずまたちゃんと来るから帰るね」
「結局そうやって帰るんじゃないですか!」
「だってクラウたちが突撃してきちゃったわけだし早く戻らないと大騒ぎだよ」
「そうかもしれませんけど......」
ネビアは少々頬をふくらませる。分かりやすく不機嫌な様子である。
「すぐにまた来るから。楽しみに待っててね」
しゃがんで話をしていたため、手を伸ばした先にあるネビアの頭をチェーロは優しく撫でた。
「子供扱いやめてくれません?」
「子供扱いじゃないよ。仲間扱いだ」
「本当、変わりませんね」
「変わらないから一緒にいたいと思ったんでしょ?まあ、私は変わったと思ってるけどね」
「お人好しなところは変わらないでしょう」
ネビアは子供扱いするなと言っておきながらも満足そうな笑みを浮かべている。
それを見てチェーロも笑う。
「ネビアだってお人好しだよ。私のこととか放っておけばいいのに探しててくれたんだから」
「あなたが一人だとどんなことをするか分からなかったですからね」
「もう無茶しないよ。そっちこそ一人だとなにするか分かんないじゃん」
「お互いブーメランにしかならない会話やめません?」
「それもそうだね。とりあえず......今後もよろしく!」
チェーロはそう言って片手を前に出した。
ネビアは彼女の手を掴み
「よろしくお願いします。あなたが嫌と言っても離れませんからね」
と言うのだった。




