組
家の中に入りチェーロはすぐさま自分の部屋に行った。
「箱の紋章……これは俺の組の紋。それなのにどうしてこの世界に?しかも、俺のグローブをこの箱の中にしまって……いや俺のか分からないしサイズも違うけど」
彼女は、あーでもないこーでもないと首を振りながら考えていた。田宮空が継いだ組織の紋が何故あるのかの答えが出てこないからだ。
「とりあえずこの箱になんかヒントがあるかもしれないし…」
そう言って箱を開けた。
すると、彼女は箱の底に一枚の紙があることに気がついた。彼女はその紙を手に取り見て驚く。
「はあ⁈ちょっ、ほあ⁈」
信じられないことが書いてあったからだ。
紙に書かれていたのは『このグローブ置いとくから使える子は使ってくれ。初代聖女兼橙組初代より』ということだった。
橙組というのは田宮が継いだ組のことである。初代は田宮のひいひいひい……祖父にあたる存在。
そんな存在なはずの初代がグローブを残している。そして紙には初代聖女とも書かれていた。
「えーと、初代が聖女の一番最初で?そんでこの箱を残して手紙も入れておいたと?はい?流石に俺も頭追いつかないんだよなあ……」
チェーロは頭を抱えた。
処理しきれない情報ばかりだとどうしたらいいか分からなくなるだろう。
自分の祖先が自分と同じく異世界にきていて、聖女という存在がその祖先からだということ、そして後から来た者のためにおそらく自分が使っていた物を残しておいたこと。
それら全てがチェーロには信じ難いことで、信じなくてはいけないことなのだ。
「はあ……これは事実、か。それに、この紋章が何よりの証拠だな。これを知っている人間は、組に関わっていた人間しかいないからなあ」
その事実を受け入れるためにチェーロは自分の頬を強くつねった。
「よしっ、夢じゃない。うん、ありがたく使わせてもらおう。俺のサイズにピッタリだし」
夢じゃないということを確かめて彼女はグローブを使うことにした。鍛えるためには必要な物だと思ったから。
それがどんな物であっても自分が貰ってきたのだから使うしかない。それに、使える人は使ってということは今回も自分しか扱えないのだろうという結論に至ったのだ。
「あのブレスレットの時と同じだな…さすがに適合しない者がつけると血を吐いてしまう、とかじゃないだろうけど……」
チェーロが田宮だった時、組を継ぐ時に受け継いだ物がブレスレットだった。そのブレスレットは血を引いていない者以外がつけると血を吐いて致命傷を負うといった代物で、呪いみたいだと彼は思っていた。
そのため今回のグローブも自分以外がつけてはいけないのではと不安でたまらない。
ソルが見つけた時につけてなくて良かった。彼女は今その気持ちでいっぱいだ。
「さてと、とりあえずこのグローブは俺が保存しておくとして……疲れたから寝よ」
チェーロは脳の処理に疲れたため眠る。
明日のことは明日考えようともう眠るのだ。
来年、聖女としての活動も始まるということが分かっているので猶予はない。それでも、休みたい時に休む。
組長をしている時にはできなかったことを今世は存分にするために、彼女は眠るのであった。