表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女に転生したみたいだが逃げ場がないので今すぐやめたい  作者: 紫雲 橙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/84

滞在

「そうだ、空く......いや、チェーロは聖女になったんだって?」

「なったというか生まれた時からというかね。今回もその立場を利用して交渉するつもりだったのにその必要はなくなったね。それで、それを聞いてどうしたのかな」


 チェーロは急に聖女になったことについてを言われて警戒している。

 警戒しているとまでは言わないのかもしれないが、どういうことなのか不審に感じているのだ。

 

「ふふっ、使えるものは何でも使おうとするところ変わっていないんだね。まあ、それは置いておいて......また抱え込んで徹夜とかしすぎちゃだめだよ」

「その言葉そっくりそのまま返すよ?」

「はは......よく一緒に愚痴言ってたね」

「そうだよ。それにさ、今は私よりもアランの方が大変でしょ?」

「さっきも言ったけど楽しいから平気だよ。みんなが過ごしやすいように考えていくのは苦じゃないからね」

「王様も変わりませんね」


 チェーロはわざと王様と言って笑う。

 かつての友と昔話をして楽しくてついからかいたくなったのだ。

 前では一緒に愚痴を言っていた相手が自分よりもはるかに上になっていることへの寂しさもある。


(どうして私だけこんなに離れているのだろう。たしかに私はもう巻き込みたくないからとみんなに会うつもりはなかった。けれど、みんなに記憶があって私と共にいることを選んでくれるのに、歳も身長も基礎的な力もかなわない。それは、とても悔しいよ。悔しいし、悲しいよ。それに、みんながこれまでどう歩んできたのかも分からない。本当にどうして、こんなにも離れてしまったのだろう)


「チェーロに王様って言われると変だから、それで呼ばないでね」

「私も不思議な感じだからもうやめようかな。って、だから私はもう帰るんだよ」

「そうだったね。まあ、一日ぐらいここにいたら?ほら、ローゼもいてほしそうだよ」

「そう言えば残ると思ってるでしょ......」

「君がローゼには弱いの知ってるからね」

「私は仲間には弱いよ」


 チェーロは仲間には弱い。わがままを言われた時に断ることが難しい。

 しかし、そのわがままさえも彼女にとってはあってほしいものであった。

 いつも苦労させていると思っていたからこそ、組のみんなにはわがままでいてほしいと考えていた。

 

(そのわがままを聞いてあげられなかった子がいたからあんなことになったんだけどね。でも、やっぱり関係ない人が傷つくようなわがままは聞き入れてあげられない。まあ、幹部はわがままというよりお願いみたいなものだったかなあ)


「組長......まだ帰らないでここにいてほしいわ。一緒に寝たり髪をアレンジしたりしたいの」

「うぐっ、うーん......」

「いたらいいじゃないですか。別にあの戦闘狂にバレたとしてもあなたなら平気でしょう」

「バレたら強制的に戦闘モードでくると思うから嫌なんだよ!」

「組長なら避けれるし逃げれるわ」

「うう......両サイドから訴えてくるのやめて......」


 チェーロはローゼとネビアに挟まれている。

 挟まれたまま帰らないでと言われているため悩んでいるのだ。

 

(このままここにいたいけど、クラウにバレたときのことを考えるとな......でも、ローゼがおねだりしてくるの珍しいし......うーん、ネビアにも言われるとなあ。避けれるし逃げれる、か。よし、自分の力を信じよう)


「じゃあ、一日だけね」


 チェーロはそう言った。

 悩んだ結果このままここに滞在することに決めたのである。


「本当に?嬉しいわ組長!」

「うん、よく考えたらクラウにバレないかもしれないし!」

「あなたのその自信はどこからくるんですかねえ。まあ、一日羽伸ばしでもすればいいんじゃないですか」

「そんなこと言ってるけど頬が緩んでるの分かるからねネビア」

「アランだって同じでしょう」

「僕はネビアと違って表に出すからいいの」


 ネビアもローゼもアランも嬉しそうに笑う。

 久しぶりに会えたというのにもう帰ると言っていた彼女が滞在すると決めてくれたからだ。

 一日だけでも関係ない。いるという事実が彼らにとってはたまらないのだ。

 

「そんなに喜んでくれるなら良かったよ。私もネビアたちと昔話したり今のことについて聞きたかったりしたしちょうどいいかな」

「昔話?ろくなもの出ないでしょう」

「は?分かった。お前の黒歴史の話してやる!」

「僕も気になるなあ」

「この趣味の悪い二人が!」

「私も聞きたいわ」

「ローゼまで?!僕の味方はどこにいるんですか?!」

「そこにいないならいないな」


 チェーロは昔話......主にネビアの黒歴史を話そうと記憶を掘りおこす。

 掘り起こさなくても彼女の頭の中にはいつだって仲間との思い出があるのだが。

 だから、その中からいくつか話すことにしたのだった。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ