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聖女に転生したみたいだが逃げ場がないので今すぐやめたい  作者: 紫雲 橙


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報告

「さてと、集まってもらったので本題に入ります」

「この場所君のじゃないんだけど」

「はい、場所提供ありがとうございます」


 チェーロは話をしようとクラウに場所を貸してもらいストームに来てもらったのだ。

 そう、大事な話をするために。


「チェーロさん話ってなんですか?」

「えーと、まずは期間が来たら隣国に行くことになった。案内役はネビア。ああ、ネビアは弥一の記憶があるんだよ」

「あいつが案内役、ですか......」


 その言葉を聞きストームはちらりとクラウを見る。

 

「なに、別にあいつ見ただけで喧嘩ふっかけるとかしないから。まあ、気に食わないけどね」

「チェーロさんに迷惑かけるのだけは承知しねえからな!それとチェーロさん、まずと言っておられましたが他にあるんですか?」

「うん、こっちのが大事かな」


 そう言って彼女は手を見ててと言って笑った。

 

「そ、それって......」

「気づいたら出るようになってたんだよね。この炎」


 チェーロが目を瞑って拳を作ったあとに出てきたのは順度の高い白色の炎。

 それは彼女が覚悟を新たにした時から少しづつ出るようになっていたもの。それが揺るぎないものになったから伝えることにしたのだ。


「それって熱くはないの?」

「熱くはないですね。何に効くのかも分からないですし。あっ、ただ初代から譲り受けたグローブは無事なんで多分聖女の力なんじゃないですかね」

「チェーロさんの新しい力ってことですね!かっけえです!!」


 チェーロは自分の炎を聖女の力と判断付けた。そう判断したのは、初代聖女から受け継いだグローブをつけながらでも使用できるということ、炎の色が聖女の力を使う時の色だからという理由がある。

 

(何かを願った時にこの力は発動される。奥底にあるものを感知されるんだ。それは二人には言わない。確証なんてないからね。私が覚悟を決めた日から少しづつ使えるようになっていたということは、そういうことなのかなって思っただけで。それに、きっとこの力はあまりいいものではない気がする。なんか使ったあとには疲れてるというか......まあ、それも言えないな)


 心配させたくないから力について詳しいことは言わない。

 自分が不調にならない程度に使っていく。それが彼女の決めたことだ。

 そのため今出していた炎もすぐに消した。


「かっこいい、か。ありがとね。ストームと最初に戦った時の技もかっこよかったよ」

「あれは未完成でしたし、貴方を守れるようにもっと強くなりますから」

「うん、頼りにしてる」


 前も今も信頼を置く右腕。だからこそ彼女は言わない。

 

(君は強いよストーム。私のために強くなると言っているけど、前からずっと助けてもらってばかりだ。君は私を慕ってくれている。だから怖いんだよ。また前みたいなことをするんじゃないかって。私に何かが起きた時に自分の身を顧みないで助けてくれようとするんじゃないかって怖いんだ)


 前に一度あったこと。自分がどうなってもいいからと空を守ろうとした類のこと。その時には説得してどうにかなったが次にまた同じことをされたら......そんなことをチェーロは考えてしまうのだ。

 

「僕も前より強くなってるからね」

「貴方が強くなったら私今度こそ起き上がれないのでは?」

「這い上がってくる君が何言ってるのさ。まあ、抱え込みそうだったら相手してあげるよ」

「はは......お手柔らかにお願いしますね」


 クラウもチェーロが一人で抱え込む癖があることを知っている。

 そして話さないのも分かっている。

 それならばと、戦いでストレスを発散させてこようとするのだ。


(私はクラウみたいに戦闘狂じゃないんだけどなあ。でもさっきのタイミングで声かけてもらえて良かったかも。ちょっと暗い表情になりかけてたや。笑ってないと怪しまれるからね)


「チェーロさんに傷つけやがったらただじゃおかねえからな」

「忠犬はうるさいね。この子がそんなにやわじゃないの知ってるでしょ」

「そうだよ。私は弱くないから多少なら平気」


 チェーロは笑顔でクラウの言葉に賛同する。

 新たな力も得て、その扱いもできるようになればもっと強くなれるからと彼女は思っている。

 その力の源を察しておきながらも、彼女はそれに気づかないふりをする。

 

(まだ、大丈夫。私はまだこの世界で共にいてくれる人を大事にできる。きっとまだ大丈夫......)


 そう自分に言い聞かせるのだった。

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