どんな貴方でも
(結局私は一人にはなれないらしい。記憶を持った人がいると知っていた時点で分かっていたことなのだけどね。それでも一人で抱えようとしたのはただの意地。そんな意地も彼らには関係なくて、自分の意思を通そうと向かってくるんだから敵わないよなあ)
チェーロは二人を見ながらそんな事を考えていた。世界が変わっても自分と共に歩もうとしてくれる。一人になんてさせてくれない。意地を張っていたって仕方ない。それを乗り越えて自分の意思を通してくるのだから。
(でも、彼らがいるからまた強くなれる。俺は、一人ではだめだめだったから。どれだけ強くなったといっても彼らがいないとどうしようもない時もあったから。それなのに今世を一人で頑張ろうなんて無謀だったのかな)
「やっぱり一人じゃだめだったかもしれないですね......」
「たしかに君は守るものがあるとより強くなるよね。でも、だめってほどではない。それが僕の興味を引くんだけどね」
「ひっ、クラウがデレた?!」
自分が呟いたことに対して返ってきた答えに彼女は驚く。
驚いたと同時に怯えもしたようだが。クラウが優しい表情をしていたことも理由である。
「僕だって本音を言いたい時ぐらいあるんだよ」
「お前も変わったな。組長がいなくなってからお前も少なからず落ち込んでたもんな」
「うるさいよ忠犬。君みたいに毎日泣いてたわけじゃないから」
「毎日は泣いてねえよ!」
「泣いてはいたんだ?」
クラウとストームは二人で言い合っている。
空がいなくなってからのそれぞれのことを知っているのだから、話すことはいくらでもあるのだ。
そんな二人を見てチェーロは
「ふっ、ふふっ......」
涙を流しながら笑っている。
「ど、どうされたんですか?!」
チェーロの様子にいち早く反応したのはストームで彼女の近くに素早く移動した。
「ごめん、勝手に涙が出てきちゃったんだ。俺がいなくなったあとのみんながどうしてたんだろうとかずっと考えてたからさ。二人がこうして話しているのを見れて嬉しいんだ。たとえそこに今の俺が入れなくても、今世で元気そうに生きているのを見れるだけで嬉しいって思うよ」
「何を言っているんですか組長。ついていくと言ったのに今の貴方が入れないなんてことありません。それにこいつだけと話すとか嫌ですよ。貴方がどんな姿でも、俺にとっての貴方は変わりませんよ」
「それだけは忠犬に同意だね。僕も君がいないと面白くないよ。隣国にあのナスビもいるしあいつにも聞いてみれば?同じようなこと言ってくるんじゃない」
「げっ、あいつもいんのかよ......」
二人の言葉に彼女はまた涙を流す。どんな姿でも変わらないと、変わらず話をしてくれると言ってくれたことがなによりも幸せだと思う。彼女にとっても彼らがどんなふうになろうとしても大切な仲間だと思えるのだから。
「こうして会えたこと、ついてきてくれると言ってくれたこと、変わらないと言ってくれたこと......もう組長じゃないしみんなよりも幼い。それなのにそう言ってくれる人がいて......本当、私って幸せ者だね」
「俺もチェーロ様に出会えて幸せです!!」
「うん、これからもよろしくね」
「一人になること諦めたんだね」
「だって......」
チェーロは涙を拭いて微笑みこう言った。
「そうさせてくれないんでしょう?今さらついていくのやめるとかなしですからね」




