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聖女に転生したみたいだが逃げ場がないので今すぐやめたい  作者: 紫雲 橙


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衝撃

「お久しぶりですチェーロ様!」

「あはは......久しぶり......頭は上げてくれるかな?」

「はい!」


 チェーロはクラウに頼み、場所を提供してもらってストームに会っている。

 クラウは一人を好むので、自分用に場所を作ってもらったのだという。その場所には誰も近寄ることがないので秘密の話をするのにはちょうどいいのだ。


「えーと、元気そうでなによりだよ」

「チェーロ様を最近お見かけしませんでしたので少し不調でしたが今は調子がいいです!!」


 ストームはニコニコとチェーロを見て笑っている。

 会えていなかった時間を埋めるように目に焼き付けようとしているのだ。彼のチェーロへの感情は尊敬や親愛の類なので、そこには決して恋愛感情というものはない。

 

「そっかあ......」


 チェーロはストームの勢いに戸惑いながらもどのようにして話を切り出そうかと考えている。

 そんな彼女を見かねてか


「ストーム、この子が君に聞きたいことがあるらしいから何言われてもそのまま聞きな」


 クラウがそう言った。

 それはアシスタントではなく、ただ見ているのが退屈になったからの発言にも思える。

 自分のタイミングで話そうとしていたチェーロは驚きクラウを見るが自分は悪くないといったように顔を背けられた。


「チェーロ様が俺に聞きたいことですか?!なんでもお答えします!」

「あの、最近不思議な夢とかみてない?」

「夢、ですか......不思議かどうかはおきますが、俺に似た男が出てきてその男は組長と呼ぶ尊敬する者がいて、自分のことを右腕だなんだと言っていましたね」

「......え?」


 チェーロはすぐに処理できない情報を得て困惑している。

 ストームが最近見た夢の内容が受け止めきれない。ストームに似ていて自分のことを右腕と言っている男の夢。それはチェーロの知っている人物で間違いないだろう。


「その男に関することで特に気になったのは、その男が尊敬していた組長が倒れた時ですね。男は涙を流して何度も謝っていました。自分のせいで倒れてしまったと思ったからでしょう。自分を庇って瀕死になったんですから。そのあとの男は毎日組長のことを思って泣いていましたね。でも自害しなかったのはきっとあの言葉があったからです。君は最後まで生きろ、と言ってくださいましたよねチェーロ様......いえ、組長」


 ストームは目を閉じて語ったあとにチェーロを見て微笑む。


「な、な、なんで?私はチェーロだよ?」

「すみません、俺も夢を見始めた時には自分のことではないと思っていたのですが......段々と、自分の記憶だと分かってきたといいますか......そうですね、友人であり尊敬する組長を感じた前世の俺が我慢できなくなったんです。俺を大切だと、誇りだと言ってくれた組長を俺は忘れることはなかった。そして、夢を見始めたのはチェーロ様に負けた時。類と呼ばれた男との一致。それが引き金となり記憶が戻ったんでしょう。今では前の記憶含めて俺は強くなろうと思ってますよ」

「私を組長と呼んだのは?」


 ストームが類だということは理解した。理解しきれてはないが彼女は一旦理解したと思うことにした。

 そして疑問に思ったことを聞いたのだ。


「だって組長ですよね?空さんと雰囲気が同じですし、戦い方もそっくりでした」


 ストームは即座に答える。当然のことだというかのように。

 

「え、違いましたか?!そんな......俺の組長センサーが鈍ったのか?」

「センサーってなに?!合ってるから!俺が空で合ってるから!」


 センサーという言葉に思わずツッコミを入れチェーロは自分が空だと慌てて言う。

 その言葉を聞きストームは目を輝かせたが、すぐに暗い顔になった。


「組長......俺のせいで、俺が弱かったせいで!もっと強かったら貴方に庇われることもなかったし、貴方を守れたのに!!」

「類、泣かないで。俺はね、君が最後まで俺のそばにいてくれたこと、俺の右腕でいてくれたこと、俺を大事に思っていてくれたこと、俺のことを忘れないでいてくれたこと......それがとても嬉しいんだから。歳の差はどうしたってうまらないけど、また一緒にいてくれる?友達になってくれる?」


 チェーロは泣きそうなストームを見て自分もつられそうになりながらもそう聞いた。

 どうしたってうまらないものはある。それでもまたこうして出会えたのだからそれを大切にしたい。記憶がまたあるのなら共に歩んでほしい。


「く、組長......俺をまた貴方の右腕にしてください」

「俺のその場所は君以外いないからね」


 ストームの願いに彼女は笑って答える。

 自分のその位置には他に入れる者がいないのだと。


「というか......私と戦ってから夢をみるようになったってことはもうすでに記憶あったよね?なんで今日顔合わせたときに言わないの?!」

「いや急にそんなことを言ったら驚かれるでしょうし、センサーが反応しても確証は持てませんでしたから」

「そのセンサーが怖いよ......」


 組長センサーというストームが空からつねに離れないようにと前から持っているもの。反応しているからこの世界にも空がいるのだと感動したようである。

 空本人には怖がられているのだが。


「ねえ、手はどうなった?」


 静かにしていたクラウが口を開いた。

 本来の目的はチェーロの紋章を覆っていた赤黒いバラの紋の原因を探るため。

 

「あっ、そうでした!」


 目的を忘れていたチェーロは声を上げてつけていた手袋を外した。

 

「あれもうない?!元々あるのだけになってる?!」


 手袋を外して自分の手を見てチェーロは驚いた顔をする。

 数日前からあったものがなくなっていたからである。今は、生まれた時からある聖女の紋章だけが彼女の手にあった。


「なにかあったんですか?」

「いや私の聖女の紋の上に赤黒いバラがあったんだけど、それが跡形もなく消えてるんだよね......」

「じゃあやっぱり原因はストームだったんでしょ」

「俺が原因で組長が悩んでたんですか?!てかお前その喋り方と態度絶対記憶あるだろ」


 ストームはクラウを見て言った。自分と同じように記憶があるのだろう、と。


「あるけどそれがなに?君の記憶が戻る前から僕はチェーロのそばにいるし、悩んでる時も相談に乗ったからね」

「くそっ!肝心な時におそばにいられないなんて!!」


 そんな会話は聞かず


(いつのまに消えたんだろ。まあ、消えたんならいっか。結局原因はなんだったのかね。まあ、別にいっか!ストームもクラウも楽しそうに話してるみたいでなによりだな)


 ということを考えるチェーロなのであった。

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