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聖女に転生したみたいだが逃げ場がないので今すぐやめたい  作者: 紫雲 橙


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確信

「そもそも君はなんで一人でどうにかしようと思ったわけ?それとこの手、なに」


 クラウはチェーロの手を掴み言う。

 彼女の隠していたものだが家の中では手袋を外していたため、紋章は見えるようになっていた。

 聖女の紋が覆われているのをクラウはしっかりと目に入れた。


「えっと、私も分かんないんですよねえ。だから逃げようとしてた、と言いますか......」


 言いづらそうに顔を背けながらチェーロは言う。

 その言葉を聞いてクラウは一層不機嫌な顔をする。


「自分でも分からないなら尚更相談しなよ。今の君にも頼れるのはいるでしょ。まあ、前の君は頼れるのがいたにも関わらず相談しなかったけどね」

「だって心配かけたくなかったですもん」

「だってじゃない。そんな言い訳ばかりだと君の教育係にしごかれるんじゃない」

「今はいないですからいいんですよ」

「いないから、ね......君の右腕がいたらうるさかっただろうね」


 前のことを思い出してクラウが言う。

 空が何かを隠して一人で全て解決したあとにひどく疲れていると、空の右腕を名乗っている者が休めと言い聞かせていた。それは空が寝床で寝るまで静まることはなく、寝て起きてからも次は自分に相談しろとか幹部のうちの誰かに相談しろとか言っていたのだ。


「普段は俺の言う事すぐに聞くのにああいう時は引き下がってくれないんですよね......」

「君が危なっかしいからでしょ。あの忠犬がいないから次は僕が言うよ」

「うっ、勘弁してください......」

「少しは大人しくすることも覚えな。でも今はストームもいるから大丈夫かもね」

「いや私はもうストームと関わる気ないですよ?」


 素早く否定した。もう関わる気はない、と。

 彼女はこれまで関わってきた者たちと関わる気はないので、当然ストームもそれに含まれているのだ。


「まだそんなこと言ってるの?」

「もう貴方は仕方ないですけど、ほかは絶対に巻き込みたくないですから。というか、貴方だってなんかあった時巻き込みたくないんですけど......」

「その話はさっき終わったはずだけど?僕だって弱くないから自分の身は自分で守れるよ。それより、その妙なので体調悪くなったりとかの影響は?」


 チェーロの元からある聖女の紋章が見えないほどの黒バラ。それが人体への影響を与えるものなのかどうかクラウは聞く。

 どういったものなのか分からなければ対処にも当たれないからだ。


「そうですね、別に元気ですよ。特になんか不調だと思うこともないですし」

「本当に?」

「本当ですよ!てか嘘ついたってどうにもならないでしょ?!」


 空は体調に関して嘘をつくことが度々あった。だから疑われたのだ。

 悪いときでも体調がいいかと平気で嘘をつく。それでもその嘘はすぐに気づかれるのだが。


「人体に影響がないならとりあえずは大丈夫か。けどそれが何なのかは考える必要があるね」

「んーまあ、急がないですよ」

「急いで離れようとしてた人が言うことじゃないよね?」

「はいすみませんでした」


 クラウに圧をかけられてチェーロは即座に謝った。自分が急ごうとしていたのにクラウに対しては急がないでいいと言ったのだ。彼だって怒るだろう。


「私ですね、遅かれ早かれ出ていくつもりだったんですよ。たしかにきっかけはこの黒いバラの紋章です。でも、これがなくても私は出ていくつもりでしたよ」


 彼女は更に彼を怒らせそうな情報を足す。


「僕にも告げずに?」

「そうですよ。誰にも告げたくなかったですから」

「なんで?」

「もう誰の泣き顔も見たくない。もう誰かに迷惑をかけたくない。もう誰かの足かせになりたくない......まあそんなとこですよ」


 彼女は素直にクラウに話した。

 なぜ自分が誰にも告げずにいなくなりたかったのかを。


「だったら、僕には関係ないね。泣かないし、迷惑をかけられた覚えもないし、君を足かせだと思ったこともない」


 クラウは彼女の言ったことに自分は当てはまらないと主張した。

 

「ほんと、貴方は変わらないですね.......だからつれていけって言うんでしょう?」

「さっきも言ったよ」

「許可してないですけどね。でも......うん、クラウだったらいいかなって気がしてきました」


 彼女は頷きクラウを見て微笑む。

 信頼できると、この人なら何があっても大丈夫だろう、と。


「そう」


 クラウは一言。しかし、その一言がチェーロにとっては良かった。


(またこの人に背中を押してもらった。口数は少ないのにいつも心が軽くなることを言ってくる。それに、よく考えたら、この人が泣くわけないし、何かがあったとしても自分で対処できる)


 チェーロはクラウについてきてもらうことを決めた。

 この人なら平気だという確信を得たからである。クラウならたとえ何が起こっても動じない。

 そんな確信が彼女の中に芽生えたのだった。

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