決闘
いつも騎士団が決闘をする場所。
今の自分がどのくらいのものなのかと確かめるために利用する者が多い。
その場にチェーロたちは来ていた。
「真剣だと危ないから俺は木刀を使うが......」
「あっ、私素手でいくので」
自分にも木刀を渡そうとしていたストームにチェーロはそう告げる。準備運動をしながらというやる気満々な状態だ。
素手でいくと言った彼女にストームは驚き、木刀を置こうとする。
「本気できてもらわないと意味がない。なので自分の戦いやすいもの全部使ってね?」
自分に手加減をしようとするストームを彼女は見逃さない。組長時代の圧を出して真っ直ぐと言った。
その表情と雰囲気にストームは一瞬気圧された。そしてすぐに木刀を構え直した。気合を入れないと下手を打てば負けてしまうのではと思ったのだ。
「ふふっ、やる気になってくれて嬉しいよ。さて、ルールの確認をしたいので審判お願いします」
チェーロはレインを見る。
「おう!まあ、簡単に倒れたら負けにしようかと思ったけどそれじゃ危ないだろ?だからこれな!」
レインは二つの長い紐がついた鈴を取り出し二人に見せた。彼はそのまま説明を続ける。
「この鈴を手首にくくりつけといて取られたら負けな!簡単だろ?」
「簡単ではあるけど手首ってどっちの?」
「利き手じゃない方だな!」
「ん、了解」
チェーロはレインの手から鈴を受け取り左手首に紐をくくりつけた。
ストームも同じ位置に紐をくくる。
これで準備は整った。
チェーロは目を閉じ深呼吸をする。そうすることにより前でのことを思い出しながら戦うことができるのだ。
「じゃあ、始めていいか?」
「ああ、いつでもいい」
ストームの問いかけにチェーロが答える。
先程の雰囲気と変わった彼女にストームはまた驚いたが、相手の出方を見るために少し動きを止めている。チェーロも動き出そうとしない。
「俺からいかせてもらう!」
沈黙を先に破ったのはストーム。彼は木刀でチェーロの足元を狙った。
足元を狙った理由は転ばせて鈴を奪うため。
「甘い」
彼女は軽々とそれを避けた。
ストームの太刀筋にはまだ迷いがあるのだ。本当に自分が守るべき者と戦っていいのかという迷いが。
その迷いが太刀筋にも出てしまっているためか、彼女にとっては簡単に避けられるものとなってしまった。
(本気でこいといったというのにまだ手加減しているようだなそもそも彼の本質が剣ではないような気がする。もし私の感があっていて彼の本質が剣でないとするなら私は最初から手加減されているということになる......彼が本気を出していないとしても私は本気でぶつかるのだがな)
「剣が扱いづらいのであればそれを置け。使いやすいものを全て使えと言っただろう」
チェーロは拳を勢いよく振りながらまっすぐ言う。
手加減されていることが気に入らない。彼女は彼女なりの......体格の差があっても戦える方法で戦っているというのに。
「風よ舞いあがれ!『ストームバースト』」
ストームがそう言うと風が吹き荒れた。
(なるほど、この世界は魔法もあるからなんでもありってとこかな。まるで嵐みたいだ。でも私だって今扱えるものがある)
チェーロは冷静に分析をして、その攻撃を防いだ。
聖女の力である魔獣を寄せつけない結界に似たような力......一種の壁を作り上げた。
その壁は彼の攻撃を完全に防ぐことができた。
「お望み通り俺の持ってる力だ」
「ああ、使ってくれありがとう。けれど、それじゃあ今回の勝利条件を満たすことはできなかったようだね」
チェーロは風が止みそうな瞬間を察知し壁をなくしてストームに向かっていった。
彼女は気配を消して彼の背後に立ち後ろから彼の手首についていた鈴を取った。
「なんで鈴をつけてる方を無防備にしていたのかな。私がさっきので吹き飛ばされるとでも考えた?」
鈴を取ったことにより自分の勝ちが決まったチェーロは雰囲気を戻す。
戦う前の彼女の雰囲気だ。
「聖女様って呼んでいいですか?!」
「は、ええ?!」
先程までのストームとは違う態度。
その態度にチェーロは戸惑ってしまう。同時に自分の前でのことも思い出していた。
(あの時も戦ったあとに懐かれたけど......そんなところまで似なくていいのになあ。だいたい様ってつけて呼ばれるとか......)
「絶対にやめて!」
「そんな!」
「まさかストームが負けるなんてな!今度オレともやってくれるか?」
二人の戦いが終わったのを見てレインが寄ってきた。
「僕はチェーロが負けるわけないって思ってたけどね。僕とも戦ってよ」
クラウもレインの後ろからやってくる。
「えーと、約束してたのがクラウが先なのでレインとはまた今度で」
「分かったぜチェーロ!!」
「チェーロ様とお呼びしろ!」
「いやだからそれはやめてってば!!」




