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聖女に転生したみたいだが逃げ場がないので今すぐやめたい  作者: 紫雲 橙


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懐かしい

 二人の王子と会った数日後、チェーロは再び呼び出しをされていた。


「そなたに護衛をつけることにする。護衛騎士はこちらで選抜した信頼できる者たちだ」

 

 すでにクラウに聞いていた内容だと思いながら彼女は静かに聞いた。

 記憶を覚えていないとしても、護衛の中に自分の仲間に似た人物がいるということを聞いていたので浮足立っている。

 

(早く会えないかな?いやでも記憶ないんだよな......けど、クラウが雨に似てるって言ってたし!きっと性格も似ているのだろう。なおさら会いたいものだな)


「私のためにありがとうございます。そのご期待に添えるように聖女としての活動も頑張ります」


 チェーロはソワソワしているのを表情にださないようにしながら王にお辞儀をする。

 心の中の考え事を悟られないようにすることも前の人生ですっかり慣れてしまった。嫌な慣れなのかいい慣れなのかは彼女には分からない。

 しかし、組長として他の組織と話す時には本音を悟られてはいけない。だから、彼女は自分の本音をひた隠ししてきた。隠していても仲間には見抜かれていたのだが。


(体調悪いときとかに平気そうにしてても絶対に誰か気付くのがすごいよなあ。特に幹部......友人たちには隠し事はできなかった)


 彼女がそういったことを思い出していると王が言葉を発した。


「さて、そなたの護衛に今から会ってもらおう。この場で良いと思っておったのだが、普段わがままを言わぬ息子に自分に案内させろと頼まれたのでな......ついていってくれ」

「承知いたしました」


 いつの間にかそばに来ていたクラウに驚いたが、彼女は素直についていく。

 少し歩いたところでクラウが話し出す。


「この間も思ったけど君その格好動きづらくないの?」


 前でも着ていなかったスカート。丈だって長い。

 それなのにそれを着てくるチェーロを疑問に思いクラウは聞いたのだ。


「動きづらいですけど?でも、まあ私のことを思ってくれているからなのは分かってるので反抗できないんですよね」


 母が選んでくれたものだと知っている。家計が苦しくなる可能性だってあるのにいいものを選んでくれたのだと知っている。だからチェーロはその気持ちを無碍にできない。


「君は自分の言葉を飲み込んでしまうこともあるけど、言いたいことは言ってもいいんじゃない?飲み込んで吐き出せなくて苦しそうな顔をされてるほうが嫌だよ」


 クラウはそう言った。


「クラウだって普段のわがまま言ってないらしいじゃないですか。前はあんなに自由でわがまま三昧だったくせに」

 

 自分だけ飲み込まずに気持ちを伝えろと言われたことに納得がいかず、チェーロは頬を膨らませて不満を述べた。


「今は特に不満はなかったし、わがままも一応言ってたはずなんだけど父にとってはわがままに入らなかったんじゃない?」

「ちなみにそれってなんですか?」

「婚約者はいらない。ただ一人の空がいればいいから。これだけどなにか文句ある?」


 クラウはいたずらが成功したとでも言うようにチェーロを見た。

 彼女は少し顔が赤くなっている。


「ないですよ......というかあなた表情変わるようになりましたね......」

「誰かさんのおかげかもね」


 そう言って彼は広い場所の前で止まった。

 チェーロの目の前には剣を握った者たちが立っている。


「全員揃ってるね?」


 クラウがそう言うと一人の男が答えた。


「ああ」


 センター分けの銀髪で赤目。その姿にチェーロは覚えがあった。

 クラウが似たような人がいると言ったのとは別の、空の親友であり右腕だった男。

 その人にそっくりなのだ。

 空以外の人とは最低限しか話さなかった。そして、空が最後にかばった人物。

 

「......っ、う......」


(初対面なのに目の前で泣かれるとかどうしたのかって思っちゃうよなあ。でも、こればかりはどうしようもない。泣きたくないのに勝手に出てしまうんだ)


「あーあなーかせたー!」


 黒い短髪で青い目の爽やかな男。

 チェーロは泣きながらその男を見る。

 自分の親友で頼りにしていた人に似た者を。


(あんなに会うのを楽しみにしていたのに先に彼を見てしまったら、私は涙腺をコントロールできないよ。というか、君たちはまた同じ場所にいるんだね。結局仲良かったからな......その中に自分がいないことが悲しいよ)


「うるせえ!別に俺のせいで泣いたわけじゃねえだろ!」


 男のその声で、チェーロは涙を拭いてこう言った。


「すみません、知り合いにそっくりだったもので取り乱してしまいました......」

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