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聖女に転生したみたいだが逃げ場がないので今すぐやめたい  作者: 紫雲 橙


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もう一人の王子

「そうだ、君隣国の王子のことは聞いたかい?」

「あーあのクラウが会うたびに喧嘩しているという......まあ、なんとなく誰かは分かりますけどね」

 

 チェーロは前のことを思い返して隣国の王子も記憶がある人間なのだと察する。

 クラウの前とよく喧嘩をしていた人物。


(あいつもいるってこと考えると私の胃がやられそうなんだが......まあ少しは喧嘩の頻度は減っただろう。さすがに建物は壊さなくなっただろうし)


 彼女は自身の胃の心配をしていた。組長をしていた時にも胃薬が手放せなかった。

 さすがにやりすぎだと怒ったことも何度もあった。それなのに今も喧嘩続きとあれば頭を悩ませられるに違いないとすでに困っているチェーロである。


「まあ君なら分かるだろうね。因みにこのあと来るらしいんだけどそれは聞いた?」

「聞いてないですよ!というか後に予定がある王子にこんな小娘と面会させるってどうなってるんですか?!」

「自分のこと小娘っていうんだね。多分だけど君がどっちにも会いたいって言ったから手っ取り早い方法にしたんじゃない?」

「いや隣国なら自分から出向くわ!!」


 チェーロは声を大にして言った。

 そのツッコミはかつての空を彷彿させるようだったとクラウは語った。

 

「来るって言ってるんだから別にいいんじゃない?あ、僕も同席するから」


 クラウは自分も同席すると告げる。

 その言葉にチェーロは再び驚かされた。


「なんで同席しようとしてるんですか?!喧嘩するだろうから絶対やめたほうがいいです!!」


 彼女は必死に止める。

 しかしそれも無駄に終わったのだった。


「なにやら騒がしいようですがどうかされたのですか?」


 そう言って入ってきたのは紫色の長い髪を一つにして結んでいる高貴なオーラを放つ男性。

 その男はチェーロに近づいて一言。


「小さなお嬢さん初めまして、僕はネビア・フォグ。どうぞよろしくお願いします」


 男はチェーロの手の甲にキスをする。

 その様子を見て彼女は


「こ、こちらこそよろしくお願いします、チェーロ・アーランです、っ、ふっ」


 震えた声で挨拶をした。

 それはネビアにとっては照れているだけにしか見えない。

 しかし実際は


(はー無理!だって髪型が変わらないし見た目も変わった様子がない!それなのにあんなキザな感じで挨拶されたら笑いこらえるのもきつい!!)


 と、ただ笑いをこらえていただけである。


「そんなに緊張なさらなくても......そちらの男に高圧的な態度を取られたのかもしれませんが僕はそのようにしませんからね」


 ネビアはチェーロと目を合わせて微笑む。


「ねえクラウ、もういいですかね?」

「いいんじゃない?君ももう苦しいでしょ」


 彼女は許可をとり


「っふふ、もう笑いこらえるの無理!!なんでそんな態度なの?!初めて会った時も油断させる為みたいな感じで優しい雰囲気で近づいてきたけどさあ!!さすがに笑いこらえきれなかったよ?!」


 腹を抱えて笑った。

 自分の知っている男の態度と違いすぎることが、彼女にとって笑わずにはいられなかった。

 

「え......は?」


ネビアは目を丸くしてクラウを見た。


「その驚いた顔面白いねナスビ」

「ナスって言うな!ってそんなことはどうでもいいんですよ。その子はなんなんですか?」

「なにってお前が探してた組長ですけど?」


 いえーいと言ってチェーロは顔の前でピースをする。

 その言葉にネビアは


「はああ?!え、なんでそんなに幼くなってるんですか?!てか女の子って、はあ?!」


 大声を出して驚く。

 その反応にチェーロとクラウは笑った。


「いやーいい反応してくれて嬉しいねえ。あ、ネビアって呼ぶからね」

「それはかまいませんけど、なぜそうなっているのかの説明は?」

「知らん!!」


 本当に知らないのだ。なぜ自分が女になっていてしかも二人よりも幼いのかの理由はチェーロは一切知らない。

 だから笑顔で即答した。


「そうですか......まあ、また会えたので良しとしましょう」

「僕のが先に会ったからね」

「マウントとるのやめてくれます?」


 クラウとネビアが喧嘩しそうな雰囲気を出していたので、チェーロはその間に割って入る。


「どっちも今日会ったし数分の差なんだから気にしない!それにこれからたくさん会うんだからそれでいいでしょ!」

 

 彼女はそう言って喧嘩をとめる。

 たくさん会うという言葉で彼らは落ち着いた。

 長年探していた人物にこれからも会えるということに喜びを感じたからだ。


「また会ってくれるんですか?」

「当たり前でしょ。だって私も会いたかったんだから。終わりがあんなのでごめんね」


 彼女は空として謝る。最後自分がろくにお礼も謝罪もできていなかったことを少しだけ悔やんでいたのだ。


(ついてきてくれたお礼も言いたかったし、巻き込んでごめんも言いたかった。こうして記憶のある二人には会えたけれど他にはいない気がする。それでも一人ではないって安心する)


「僕は謝罪は聞きたくないです」

「癪だけど僕もそれには同意だ」


 二人は謝罪に不服そうな顔をする。

 謝罪は求めない。


「そうですか……」

「代わりに感謝なら言ってくださってもいいんですよ?」


 ネビアは茶化すようにチェーロに言った。

 このままだと彼女が思い詰めることを分かっているからだ。

 受け取ってもらいたい謝罪を受けてもらえないと、彼女が困る。それなら代わりのものを要求する。

 

「ネビアは相変わらず優しさが分かりにくいな。そういうところも好きだよ。一緒にいてくれてありがとね」


 彼女は微笑む。

 最大の感謝を伝えるために。そしてクラウも見て


「クラウも、本当にたくさんお世話になりました。ありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね」


 そう言った。

 すると二人は満足そうに笑う。


「そうだね、これから長い付き合いになるからね」

「ちょっと、めんどいのがいなくなったと思ったら君ですか?抜け駆けしようとしないでくださいよ」

「抜け駆けなんてしようとしてないよ。チェーロは元々僕のだからね」

「君のというわけではないでしょう?!」


(なんかまた口喧嘩始めてるし......この二人同族嫌悪とかな気がするんだけどなあ。ていうか一つ言わせてもらいたいことがある)


「私は誰のものでもないんですけど?!」

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