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第7話「新たなる希望」

廃工場の偵察から戻った悠真とリタの報告を受け、小春はさらに強い決意を固めていた。オブシディアンという脅威が迫る中、自分たちの安全だけを考えてはいられない。小春たちは攻撃に備えると同時に、敵に反撃するための準備を急いで進める。

工房では、サクラノヴァの改造が佳境を迎えていた。新たに搭載される「妨害信号発生装置」は、リタが提供した特殊データを基に開発されている。この装置は敵ロボットの通信や制御を一時的に無効化する可能性を秘めていた。

小春は端末に向かい、プログラムのコードを調整する。

「これで敵の動きを止められれば、こちらが有利になる…!でも、エネルギー消費が激しいのが問題だな。」

隣で悠真が工具を手にしながら声をかける。

「エネルギー管理は俺に任せて。発電機周りを改良して、効率を上げてみるよ。」

「ありがとう、悠真。助かる!」

小春の声には少しだけ安心感がにじむ。しかし、悠真は気づいていた。小春の目にはまだ不安が宿っていることを。

その夕方、小春たちのもとに思いがけない訪問者が現れる。メカ・アスリート杯で知り合った仲間、エリック・フォスターと篠原 あかりだった。

「あんたたち、ここにいるって聞いてな!」

あかりは軽快な声で工房に飛び込んでくる。

エリックは一歩遅れて現れ、落ち着いた声で言った。

「ナイト・オルドの動きが不穏だって聞いて、協力しようと思ったんだ。」

小春は驚きつつも、すぐに二人を迎え入れた。

「あかり、エリック!来てくれてありがとう。でも、どうしてここが分かったの?」

あかりが得意げに言う。

「リタに聞いたのよ。アンタたちが危ない目に遭ってるって知ったら、黙ってられないでしょ!」

エリックも頷く。

「僕たちも力になりたい。僕の機体『ストームレイヴン』は、空中戦が得意だから、援護に使えるかもしれない。」

仲間が加わったことで、小春たちは工房で初めての本格的な作戦会議を開いた。テーブルの上にはリタが解析したナイト・オルドの廃工場の地図が広がっている。

リタが指し示す。

「ここが敵のメイン施設。この周辺には警備ロボットが多数配置されているわ。でも、ここに妨害信号を発生させれば、警備システムに一時的な混乱を起こせるはず。」

小春が話を引き継ぐ。

「その間にサクラノヴァで突破して、オブシディアンに直接挑む。でも…成功率は正直、五分五分。」

あかりが勢いよく手を挙げる。

「いいじゃない!やるしかないでしょ?それに、私の『サンダーバイト』が陸上でサクラノヴァを援護するわ。」

悠真が笑顔で応じる。

「頼もしいね。俺たちの勝機は、チームワークにあると思う。」

夜遅くまで工房では作業が続けられた。小春はサクラノヴァの最終チェックを行い、改良されたエネルギーシステムと妨害装置のテストを繰り返す。

一方、悠真はチーム全員のために簡易な通信システムを設置した。これにより、各機体がリアルタイムで情報を共有できるようになる。

「これでみんなの連携もバッチリだな。」悠真が自信満々に言う。

小春は夜空を見上げて、静かに呟いた。

「お父さん、私、やれるよね?サクラノヴァも私も、もっと強くなれるって信じてるから…。」

翌朝、小春たちは行動を開始する。サクラノヴァ、サンダーバイト、ストームレイヴンの3機が並ぶ光景は圧巻だった。

リタが無線で指示を出す。

「みんな、心して行くわよ。これは遊びじゃない。本気でやらないと全滅する。」

小春は操縦席で深呼吸をした。

「みんな、ありがとう。絶対に成功させよう!」

ナイト・オルドの拠点に向けて出発した小春たちの前に、最初の試練が立ちはだかった。廃工場周辺には、ナイト・オルドが配置した無数の自律型ドローンと警備ロボットが待ち構えている。これらの機体はAIにより高度に連携し、侵入者を排除するようプログラムされていた。

夜明け前の薄暗い森を抜け、小春たちは廃工場の外周部に到着した。サクラノヴァ、ストームレイヴン、サンダーバイトの3機が音を立てずに進む。リタの設計した妨害信号装置は、敵のセンサーを一時的に混乱させる仕様だが、使用できる時間は限られていた。

「これからが本番よ。全員、慎重に行動して。」

リタの冷静な声が全員の通信チャンネルに響く。

悠真が地図を確認しながら提案する。

「ここから先は、俺たちが陽動をかけて、サクラノヴァが直接施設内に侵入するのがベストだと思う。」

エリックがすぐに応じる。

「了解。ストームレイヴンは空中からサポートに徹する。」

あかりもサンダーバイトの操縦席から力強く叫ぶ。

「私は正面からガツンと行くわ!リタ、妨害信号のタイミングを任せるね。」

計画通り、あかりがサンダーバイトを先行させ、敵の注意を引いた。サンダーバイトの強力な腕部クローが目にも留まらぬ速さで警備ロボットを破壊していく。

「あー、来た来た!どんどん相手してやる!」

あかりは笑いながらも冷静に敵の動きを観察していた。

一方、エリックのストームレイヴンは空中での圧倒的な機動力を活かし、敵ドローンを次々と撃墜していく。彼の正確な射撃が周囲の援護を完璧にこなしていた。

小春は、悠真とともにサクラノヴァを施設の脇道に潜り込ませる。

「リタ、妨害信号の準備を!」

小春の声が緊張で少し震えている。

リタが即座に操作を開始し、ノートパソコンの画面に複雑なアルゴリズムが流れる。数秒後、廃工場一帯に強力なジャミング信号が放たれた。

「今よ!敵のセンサーが狂ってる!」

リタが叫ぶ。

サクラノヴァはその隙を突いて、施設のゲートを突破した。

廃工場の内部は暗く静まり返り、不気味な雰囲気が漂っていた。サクラノヴァのセンサーが、周囲に微弱な反応を示す。

「ここ、本当に人がいないの?」

悠真が疑問を口にする。

その時、突然、施設全体が赤い警報灯に包まれた。自律型の防衛システムが作動し、壁から無数の銃器とドローンが出現する。

「罠だったのか!」

小春が叫ぶと同時に、サクラノヴァが全力で回避行動を取る。

防衛システムは容赦なく攻撃を仕掛けてきたが、サクラノヴァの強化されたバリアが幾つかの直撃を防ぎ、小春は辛うじて反撃の機会を得た。

「悠真、右側のエネルギーラインを狙うよ!」

小春が指示を出す。

悠真は即座に制御台のレバーを引き、サクラノヴァの肩部から放たれた高出力レーザーが正確に目標を捉えた。施設の一部が爆発し、敵の攻撃が一瞬止む。

「よし、今のうちに進むわよ!」

施設の奥へ進んだ小春たちは、暗いホールに辿り着いた。その中央に巨大な機体が静かに待ち構えている。黒光りする装甲と、威圧的なフォルム。その姿は間違いなく「オブシディアン」だった。

「またこいつか…!」

小春は歯を食いしばる。

突如、通信が開かれ、低く冷たい声が響いた。

「桜庭小春、よくここまで来たな。だが、ここが貴様の墓場になる。」

その声を聞いた瞬間、小春は違和感を覚えた。どこかで聞いたことのある声。しかし、それを考える間もなく、オブシディアンが動き出した。

「みんな、ここからが本番だ!」

小春の叫びが響く中、サクラノヴァとオブシディアンの激突が始まる。

廃工場のホールで小春たちを待ち構えていたのは、黒い機体「オブシディアン」だった。暗闇に浮かび上がるその存在感は、小春たちの視線を釘付けにする。サクラノヴァの操縦席で小春は息を飲み、悠真が警戒心を露わにした声で叫ぶ。

「小春!ここは奴の罠だ!距離を取った方がいい!」

しかし、その悠真の言葉を遮るように、オブシディアンの操縦者が通信を開く。

「逃げられると思うか、桜庭小春?」

低く響く声が、小春の頭の奥を刺激する。どこか懐かしくも不気味なその声に、小春は眉をひそめた。

「…誰?あなたは一体…」

だが、その質問に答えることなく、オブシディアンが一気に動き出した。

オブシディアンはその巨体に似合わない俊敏な動きでサクラノヴァに迫る。鋭い爪のような形状のアームが振り下ろされ、小春は間一髪でそれを回避した。

「このスピード…サクラノヴァより速い!?」

小春は動揺を隠せない。

さらに、オブシディアンの装甲は従来の技術を遥かに超えた耐久性を持っていた。サクラノヴァのレーザー攻撃が命中しても、その表面にはほとんど傷がつかない。

「小春、エネルギー管理が限界に近づいてる!」

悠真が警告する。

「わかってる…けど、どこかに弱点があるはず!」

必死にオブシディアンの動きを分析する小春。しかし、その間にも敵の攻撃は続き、サクラノヴァのバリアが徐々に削られていく。

外部では、リタ、エリック、そしてあかりが、それぞれの機体で外部の警備ロボットを相手に奮闘していた。

「小春たちが中で戦ってる間に、ここを制圧しないと!」

あかりが叫びながらサンダーバイトのクローで敵を次々と破壊していく。

リタは、妨害信号を維持しつつ、敵AIの行動パターンを解析していた。

「もう少しで外部システムを完全に無力化できる…みんな、あと少し耐えて!」

エリックのストームレイヴンは空中からの正確な支援射撃で仲間を守る。

「小春たちが負けるわけがない。ここで俺たちが頑張らないと、全てが終わる!」

ホール内では、依然としてサクラノヴァがオブシディアンに追い詰められていた。しかし、小春はふと気づく。オブシディアンの動きには、何か違和感があったのだ。

「この動き…どこかで見たことがあるような…」

その瞬間、小春の脳裏に浮かんだのは、過去のメカ・アスリート杯での戦いだった。オブシディアンの動きは、以前戦ったある選手の操縦スタイルと酷似していたのだ。

「まさか…そんな…」

小春は息を呑む。

だが、考える間もなく、オブシディアンが再び攻撃を仕掛けてくる。

「悠真、右に回避!次に左だ!」

小春は直感的に指示を出し、辛うじて敵の攻撃を避けた。

「お前たちはよく戦っている。しかし、所詮それまでだ。」

操縦者の声が冷たく響く。

小春は短い時間の中で、サクラノヴァのセンサーを最大限に活用し、オブシディアンの装甲や武器のデータを収集していた。そして、ついに気づく。

「装甲の関節部分が他よりも脆弱…そこを狙えば!」

小春は悠真と連携し、サクラノヴァの全火力を集中させる。目標は、オブシディアンの右肩部の関節部分だ。

「悠真、フルパワーでいくよ!」

「了解!ここで決める!」

サクラノヴァの武装が輝き、強力なエネルギービームがオブシディアンの右肩部に直撃した。装甲が破壊され、オブシディアンの動きが一瞬止まる。

その隙を突こうとした小春だったが、突然、オブシディアンの操縦席から通信が途絶えた。そして、代わりにスクリーンに映し出されたのは、驚くべき顔だった。

「あなたが…どうして…?」

小春の声は震えていた。

その顔は、過去に彼女が技術を教えたことのある、かつての仲間だった。

「この力こそが新しい未来だ、桜庭小春。君もそれを理解する時が来る。」

通信が切れ、オブシディアンが再び動き出す。今度は、以前よりもさらに攻撃が激化していた。


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