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第5話「精密の舞台」

メカ・アスリート杯の第1種目「スピードレース」が終わり、サクラノヴァの見事な活躍で初勝利を飾った小春。だが、彼女には喜びに浸る間もなく、次なる競技「精密操作競技」が迫っていた。

控室で作戦を練る小春と悠真。彼らの間には、次の競技に向けた緊張感が漂っていた。

「精密操作競技は、ただの操作技術だけじゃない。ロボットの設計そのものが鍵を握るんだよね。」小春は手元のタブレットで競技内容を確認しながら呟く。

「そうだ。特にコースの後半は、小さなオブジェクトを正確に操作して配置しないといけないからな。サクラノヴァの腕部システムが役立つはずだ。」悠真が頷く。

「でも、他の選手たちもきっと対策してくるはず。気を抜けないよ!」小春の瞳には、負けず嫌いな闘志が燃え上がっていた。

会場に足を踏み入れると、そこには複雑なコースが広がっていた。狭い通路や急カーブ、小型のオブジェクトを移動させるためのステージが設置されている。観客席は熱気に包まれ、多くの視線が選手たちに注がれていた。

「見て、小春。あれが今回の競技の目玉だ。」悠真が指差した先には、競技の中盤に設置された「重力制御ゾーン」があった。特殊なフィールドではロボットの重量が変化し、バランスを崩しやすくなる仕掛けが施されている。

「これ……難易度高すぎでしょ!」小春は驚きながらも、挑戦心を抑えきれない様子だった。

競技が始まり、小春はサクラノヴァを慎重に動かしながらコースを進んでいく。

最初のセクションは狭い通路だ。両側に障害物が並び、少しでも操縦を誤れば接触する危険がある。

「ここは慎重に……」小春は呼吸を整え、微細な操作でサクラノヴァを進ませた。

コクピット内では、サクラノヴァのセンサーが障害物との距離を正確に計測し、モニターに映し出している。それを確認しながら小春は、絶妙なタイミングでロボットを前進させていった。

「いいぞ、その調子だ!」悠真の声が通信機から響く。

他の選手たちのロボットも慎重に進んでいるが、いくつかの機体は既に障害物に接触し、ペナルティを受けている様子だった。

中盤のハイライトである「重力制御ゾーン」に差し掛かったとき、観客席からは一段と大きな歓声が上がった。

「重力が変動するから、バランスを崩したら一気にタイムロスになる。慎重に行くよ!」小春は意識を集中させた。

特殊なフィールドに足を踏み入れると、サクラノヴァの挙動が明らかに変化した。突然軽くなったかと思えば、次の瞬間には急激に重くなる。

「右足を軸にして、バランスを取れ!」悠真が素早く指示を送る。

小春はその指示に従い、サクラノヴァの脚部システムを細かく調整した。彼女の操作によって、サクラノヴァは不安定な重力の中でも見事にバランスを保ちながら進んでいく。

「やった、抜けたよ!」小春が叫ぶと同時に、観客席からも拍手が巻き起こった。

競技の最後は、指定されたオブジェクトを正確な位置に配置するセクションだ。小さなボール状のオブジェクトを掴み、コース上の目標地点に置かなければならない。

「ここからが勝負だね。サクラノヴァの腕部システムを信じて!」小春は決意を込めて操作を開始した。

サクラノヴァの手は繊細な動きを見せ、ボールをしっかりと掴む。だが、目標地点まで運ぶ途中、風圧を発生させる仕掛けが作動した。

「風で流される!?どうしよう!」小春は焦りを見せるが、悠真がすかさず助言を送る。

「腕の角度を下げて重心を安定させろ。風を受け流すんだ!」

小春はその指示を即座に実行し、見事にボールを目標地点に配置することに成功。最後のボールを配置し終えた瞬間、観客席から大きな拍手が巻き起こった。

競技終了後、控室に戻った小春は、達成感に満ちた表情を浮かべていた。

「やっぱりサクラノヴァは最高だね!」

「それもこれも、小春が頑張ったからだよ。」悠真が微笑みながら答える。

だが、その一方で、小春の中には次の種目への不安も芽生えていた。特に、先日のレースで見かけたナイト・オルドの関係者らしき少年の存在が気になっていたのだ。

「次のチームバトル……もっと気を引き締めないとね。」小春はそう呟き、次の戦いに向けて新たな決意を固めるのだった。

メカ・アスリート杯の第3種目「チームバトル」の開催が迫る中、小春と悠真は控室で作戦会議をしていた。今回の競技は、2対2で行われるチーム戦。参加者同士の連携が鍵を握るこの競技では、戦術や瞬時の判断力が試される。

「私たちのチームの相手は、あのエリオットとカレン……世界トップクラスの選手たちだよね。」小春は緊張した面持ちで言った。

「エリオットは突撃型の戦術を得意とする操縦者で、カレンは防御とサポートに優れている。つまり、攻撃と守備のバランスが完璧なチームだ。」悠真が冷静に分析する。

「でも、サクラノヴァにはチェリーブレードとペタル・シールドがある。それに、私たちの息の合った連携なら、きっと勝てるよ!」小春は自らを鼓舞するように微笑んだ。

競技開始前、チーム戦のパートナーである中国代表のリャン・フェイと出会った。彼女は、俊敏な動きと高い攻撃力を誇るロボット「レッドスパロー」を操縦する天才少女だった。

「あなたが桜庭小春? 噂には聞いているわ。スピードレースも精密操作競技も見事だった。」リャンが微笑む。

「ありがとう! 一緒に頑張ろうね!」小春はその言葉に応えながら、すぐに作戦会議を始めた。

「私たちのロボットは機動力が強み。サクラノヴァが防御とサポートを担い、レッドスパローが敵を翻弄して攻撃するのが良いと思う。」悠真が提案する。

リャンもその案に納得し、作戦は固まった。

アリーナには巨大なフィールドが広がり、中央にはエネルギータワーがそびえていた。フィールドは起伏に富み、戦術を駆使して動き回るロボットたちの戦いが繰り広げられることを予感させた。

「目標は、相手を撃破するか、中央のタワーを制圧することだ。うまく連携すれば、勝機はある!」悠真の声が通信機を通じて響く。

「わかった! 行くよ、サクラノヴァ!」小春がコクピットで叫び、試合がスタートした。

試合開始直後、エリオットのロボット「ブラックナイト」が猛スピードで迫りくる。その攻撃力は凄まじく、正面衝突すれば一瞬でサクラノヴァの防御を突破されかねない。

「悠真、どうする!?」

「ペタル・シールドを広げて初撃を防げ。その間にリャンが側面から攻撃する!」

小春は悠真の指示通り、ペタル・シールドを展開。ブラックナイトの巨大なランスがシールドに直撃し、激しい衝撃が響いた。

「すごいパワー……でも、まだ大丈夫!」

その隙に、レッドスパローがブラックナイトの側面に回り込み、高速で繰り出す連続攻撃を叩き込む。

「よし、うまく当たった!」リャンの声が弾む。

だが、カレンのロボット「シルバーディフェンダー」が素早くカバーに入り、レッドスパローの攻撃を防いだ。

「防御が完璧すぎる……!」小春は焦りを感じたが、悠真の冷静な声が彼女を落ち着かせた。

「相手の守備に隙はない。でも、守備を崩す手段はあるはずだ。小春、チェリーブレードを使ってみろ!」

サクラノヴァの手に光るチェリーブレードが展開される。それを見た観客席からは歓声が上がった。

「わかった、行くよ!」小春は全神経を集中させ、サクラノヴァを操作。チェリーブレードでシルバーディフェンダーの盾を狙い、精密な動きで攻撃を繰り出した。

「リャン、今だ!」

小春の攻撃が相手の防御を引きつけている間に、レッドスパローが再び側面に回り込み、一撃を加えた。

「やった! 防御が崩れた!」リャンが叫ぶ。

崩れた防御の隙を突き、サクラノヴァとレッドスパローの連携攻撃が炸裂。ついにシルバーディフェンダーが戦闘不能となる。

残るはエリオットのブラックナイト一機。だが、猛攻にさらされていたブラックナイトは疲弊しており、最後はサクラノヴァのブロッサム・ブラスターの一撃で決着がついた。

「勝った……!」小春は歓喜の声を上げ、リャンも笑顔で応じた。

「最高のコンビネーションだったね、ありがとう!」

「こちらこそ、また一緒に戦いたい!」

競技後、小春と悠真はナイト・オルドの関係者らしき男がエリオットに何かを囁いているのを目撃する。

「あの人……絶対に普通の関係者じゃない。」小春が呟いたその時、悠真が不安そうに付け加えた。

「何かが動き出している。気をつけないと……」

次の模擬戦闘が、更なる試練をもたらすことを予感させながら、2人は控室へと戻った。

メカ・アスリート杯の最終種目、「模擬戦闘」の幕が上がった。これは個人戦であり、参加者の技量とロボットの性能が真っ向から問われる競技だ。これまでの試合で負った疲労やダメージが完全に回復しているわけではない中、サクラノヴァは再びフィールドに立つ。

小春はコクピット内で深呼吸を繰り返した。透明なディスプレイ越しに見える広大なバトルフィールドは、岩場や水場、そして高低差のある地形が組み合わされた複雑な構造だった。この場で、彼女は自らの力を最大限に発揮しなければならない。

「小春、気負わずにね。でも、あの相手には気をつけろ。」通信機越しに悠真の声が聞こえる。

「わかってる。相手は……あのリカルドだもんね。」

リカルド・ヴェラスケス。南米代表であり、これまでの競技で無敗を誇る強豪だ。彼の操縦するロボット「グリムフォージ」は、重装甲かつ高火力の武装を持ち、一撃必殺のパワーで知られていた。

「パワー勝負で正面から挑んだら勝ち目はない。サクラノヴァの機動力を活かして、隙を突く戦法でいくしかない。」

悠真の言葉に、小春は頷いた。そして、スタートの合図が鳴り響く。

開始早々、グリムフォージが動き出した。その巨体からは想像もつかないスピードで、小春は思わず息を呑む。

「速い……! でも、負けない!」

サクラノヴァは軽やかなステップで回避しつつ、距離を取りながらブロッサム・ブラスターを発射。桜の花びらを模したエネルギー弾がグリムフォージに迫るが、その分厚い装甲に阻まれる。

「やっぱり硬い……!?」

その瞬間、グリムフォージの右腕が動き、巨大なハンマーが振り下ろされた。サクラノヴァは間一髪で回避したものの、その衝撃波が地面を揺るがし、バランスを崩しかける。

「直撃したら終わりだ……悠真、どうする!?」

「今は相手を疲れさせるのが先だ。無駄にハンマーを振らせろ! グリムフォージの武器は強力だが、その分エネルギー消費も激しいはずだ。」

小春は悠真の指示に従い、岩場や水場を利用して戦いを続けた。サクラノヴァの機動力を活かし、グリムフォージを翻弄する。

「さあ、もっと追ってきなさい!」

小春の挑発に乗ったリカルドは、次々と攻撃を繰り出すが、いずれも命中しない。徐々に動きが鈍くなり、ハンマーの振りも遅れてきた。

「今がチャンスだ!」悠真が叫ぶ。

小春はサクラノヴァを急加速させ、グリムフォージの背後に回り込む。そしてチェリーブレードを展開し、一閃。だが、リカルドも即座に対応し、グリムフォージの左腕で刃を受け止めた。

「やっぱり強い……!」

だが、小春は怯まなかった。続けてブロッサム・ブラスターを接近戦で放ち、相手の視界を一瞬奪う。その隙に、再びチェリーブレードを振り下ろした。

「決まった……!」

サクラノヴァの刃がグリムフォージの右肩を切り裂き、その巨大なハンマーを地面に落とさせる。

しかし、リカルドはまだ諦めていなかった。グリムフォージは緊急モードに移行し、全身から高熱の蒸気を放出。小春の視界が一気に遮られる。

「しまった!」

蒸気の中から突如として現れたグリムフォージが、体当たりを仕掛けてきた。サクラノヴァは吹き飛ばされ、岩場に叩きつけられる。

「小春、大丈夫か!?」

「まだ……戦える!」

サクラノヴァが立ち上がると同時に、小春は決断する。

「悠真、全エネルギーをブロッサム・ブラスターに集中させる!」

「そんなことしたら、サクラノヴァがオーバーヒートするぞ!」

「でも、これしかない!」

小春は全力でブロッサム・ブラスターをチャージし、目の前のグリムフォージに向けて解き放った。桜色の閃光がフィールドを包み込み、グリムフォージの装甲を貫いた。

試合終了の合図が響く。審判の判定により、小春とサクラノヴァが勝利を収めた。

「やった……!」小春は喜びを爆発させるが、その視線の先には、観客席で冷ややかに見つめるナイト・オルドの関係者たちの姿があった。

「またあいつらだ……何を企んでいるの?」

勝利の余韻も束の間、小春たちは新たな試練を予感しながら控室へと戻るのだった。


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