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第11話「黒き刃の真相」

闇に包まれたナイト・オルドの施設内、黒いロボット「オブシディアン」が立ちはだかる。サクラノヴァのカメラ越しに見えるその姿は、以前にも増して威圧感を放ち、小春たちを圧倒した。

「小春…久しぶりだな。」

通信越しに聞こえたその声に、小春の心臓は跳ね上がった。

「…その声、まさか…!」

まるで時が止まったかのような沈黙が流れる中、オブシディアンの操縦者が名乗りを上げた。

「俺だ。桜庭 一真だ。」

その名前を聞いた瞬間、全員が息を呑んだ。小春の兄であり、数年前に失踪したはずの桜庭さくらば 一真かずまが、目の前の敵として立ちはだかっているのだ。

「お兄ちゃん…どうして…?」

小春の声は震えていた。だが、一真の返答は冷たく響いた。

「答える必要はない。ただ、お前たちにはここで消えてもらう。」

その言葉とともに、オブシディアンが動き出した。

オブシディアンの機動力は小春たちの想像を超えていた。

重厚な装甲にもかかわらず、驚異的な速さでサクラノヴァに迫り、鋭い刃を繰り出す。

「悠真、フォローして!」

小春が叫ぶと同時に、悠真のスカイランサーがサクラノヴァを援護するように前に出た。

「小春、冷静になれ!感情に流されるな!」

悠真の言葉に小春は我に返るが、それでも心の混乱は収まらなかった。

「なんで…お兄ちゃんがナイト・オルドの側にいるの?」

小春が問いかけるも、一真は答える代わりに攻撃を激化させる。

「聞く耳を持たないなら、お前を止めるだけだ。」

オブシディアンの刃がサクラノヴァをかすめ、火花が散る。小春は操縦桿を握りしめ、必死に応戦した。

戦いが続く中、クラウディアが小春に通信を送った。

「小春、聞いて。桜庭一真の記録を調べたわ。彼は…ナイト・オルドに強制的に協力させられている可能性が高い。」

「強制的に…?」

「そうよ。記録によれば、一真は失踪中にナイト・オルドの研究に関与させられていた。彼の技術は、オブシディアンを完成させるために必要不可欠だったみたい。」

クラウディアの言葉を聞きながら、小春は涙がこぼれそうになるのをこらえた。

「じゃあ…お兄ちゃんは仕方なく戦ってるの?」

「可能性は高いけど、真実を聞き出すには戦いを止めるしかない。」

小春は一瞬目を閉じ、深呼吸をした。

「お兄ちゃんを助ける…そのためには、まずこの戦いを終わらせなきゃ。」

サクラノヴァのシステムを最大稼働させ、新たに開発した武装「エターナルブレード」を展開した。これは高エネルギーを利用した近接武器で、瞬発力と正確さが求められる。

「悠真、クラウディア、援護をお願い!」

「了解!」

「任せて!」

サクラノヴァとオブシディアンの戦いは激化する。刃と刃がぶつかり合う音が施設内に響き渡り、火花が舞う。

「お兄ちゃん!私は絶対に諦めない!」

小春の叫びとともに、サクラノヴァがエターナルブレードでオブシディアンの武装を打ち砕いた。その瞬間、一真の声が響く。

「そこまでだ…小春。」

オブシディアンがその場に膝をつき、動きを止めた。

「…お兄ちゃん!」

小春は急いでコックピットを降り、オブシディアンへと駆け寄った。

オブシディアンのハッチが開き、一真が姿を現す。彼は疲れ切った顔をしていたが、どこか穏やかな表情だった。

「小春…お前は強くなったな。」

「お兄ちゃん…なんでナイト・オルドの側に…?」

一真はゆっくりと語り始めた。

「俺は…ナイト・オルドの技術開発に巻き込まれたんだ。あいつらは俺の技術を兵器に利用しようとして…逆らえば、お前や母さんに危害が及ぶと脅された。」

その言葉に、小春の目から涙があふれた。

「じゃあ、ずっと苦しんでたの…?」

「ああ。でも、お前がこうして立ち向かってきたことで、俺は…ようやく解放された気がする。」

一真は小春の肩に手を置き、微笑んだ。

「後は任せた。お前なら、ナイト・オルドの計画を止められる。」

オブシディアンとの激闘を終え、小春たちは施設内の隠れた部屋で一時的に休息を取っていた。兄・一真との衝撃的な再会と彼の告白は、小春の心に深い衝撃を与えたが、その余韻に浸る間もなく、次の行動が求められていた。

「ナイト・オルドの最終計画――『オーロラ計画』を止める。」

小春の声は震えながらも力強かった。目の前のスクリーンには、クラウディアが施設内の地図を投影している。

「ここが『オーロラ計画』の中核施設。最も厳重に守られた場所よ。」

地図上の赤い点滅箇所を指しながら、クラウディアは続けた。

「ただ、この施設には複数のセキュリティシステムが稼働しているわ。解除するには、私たち全員の協力が必要になる。」

「全員でやるんだ。俺たちがいる限り、小春を一人にはさせない。」

悠真が力強く言い、仲間たちもそれに続いた。

「よし、それじゃあ作戦を開始しよう。」

小春は小さくうなずき、サクラノヴァの操縦席へと戻った。

施設内を進む小春たちの前に、幾重にも張り巡らされた防衛メカが立ちはだかる。

「敵の動きが思った以上に早い…!」

悠真のスカイランサーが先行し、軽快な動きで防衛メカの攻撃を引きつける。その間に、小春とクラウディアがハッキングを試み、次のエリアへの扉を開放する。

「悠真、よくやった!次のエリアに進むよ!」

小春の指示で、全員が一斉に駆け出す。だが、施設の奥に近づくにつれ、敵の数は増え、攻撃も激化していった。

「これ以上は正面突破は厳しいわね…!」

クラウディアが叫ぶ中、小春は決断した。

「分散して行動しよう。一人が目標ルートを突破する間、他のみんなで時間を稼ぐ!」

「それなら、俺が囮になる!」

悠真が名乗りを上げると、すぐに動き出した。

「悠真、無茶はしないで…!」

「分かってる。小春、あとは任せた!」

悠真たちの奮闘で敵の注意が逸れる中、小春とクラウディアはついに中枢施設のドアにたどり着く。

「この先が『オーロラ計画』の中核ね。でも、ここから先は私たちだけじゃ難しい。」

「大丈夫。サクラノヴァの新機能を使えば突破できるはず。」

小春は改造されたサクラノヴァの新システム「プラズマバースト」を起動。高エネルギーを用いた強制突入モードで、施設の強固な扉を破壊することに成功した。

中に入ると、巨大なモニターが視界を覆い尽くす。そこには、ナイト・オルドのリーダーであるアルベリオ・クラヴィスが映し出されていた。

「ようこそ、桜庭 小春。君の到着を待っていたよ。」

アルベリオの冷酷な笑みを見て、小春は問いかける。

「オーロラ計画って一体何!?これ以上、あなたたちの好きにはさせない!」

アルベリオはあざ笑うように答える。

「オーロラ計画。それは…全世界のロボット技術を集結し、戦争の形を根本から変えるものだ。だが、その中核には君の技術が必要不可欠だ。」

モニターにはサクラノヴァの設計図が映し出され、さらに拡張された軍事仕様のデータが重ねられていく。

「君のサクラノヴァは、まさに完成形だ。この技術を兵器に転用すれば、どれほどの力を得られるか…君は分かっているだろう?」

「そんなこと…絶対に許さない!」

怒りに震える小春の言葉に、アルベリオは冷たく言い放つ。

「ならば力で示してもらおうか。この施設内に配置された最強の防衛システムを突破できるならな。」

アルベリオが言葉を終えると同時に、施設の中央部から巨大なロボットが現れた。それは、「クロノ・バルディア」と呼ばれるナイト・オルドの最新鋭兵器だった。

「これが…オーロラ計画の試作品…!?」

クロノ・バルディアは圧倒的な火力と防御力を備えており、サクラノヴァですら容易には太刀打ちできない相手だった。

「小春、何か策はあるの?」

クラウディアが焦りながら問いかける。

「…まだある!最後の切り札を使うしかない!」

小春はサクラノヴァに搭載された「エターナルブレード」のフルパワー解放を決断する。

「これが成功すれば…必ず打ち破れる!」

アルベリオの冷笑が響く中、巨大なロボット「クロノ・バルディア」が動き出した。施設全体がその巨体の振動で揺れる。

「なんてサイズ…!戦車以上の火力と防御力があるわけだ。」

クラウディアの声は驚きと焦りを帯びていた。だが、小春は冷静さを保とうと努め、操縦桿を握り直した。

「サクラノヴァには新しいシステムがある。きっと突破できる!」

小春は自らを奮い立たせるように言い放ち、サクラノヴァを前進させる。クロノ・バルディアの武装が展開し、施設内に轟音が響く中、両者の戦闘が始まった。

クロノ・バルディアは、誘導ミサイルと高出力ビーム砲を立て続けに放ち、圧倒的な火力で攻めてくる。サクラノヴァはその攻撃をギリギリで回避しながらも、機体にダメージを受けていく。

「エネルギー消耗が激しすぎる…でも、これを使うしかない!」

小春は新たに搭載した「プラズマバースト」を起動した。このシステムは、サクラノヴァの出力を一時的に限界まで引き上げるが、エネルギー消費が尋常ではないというリスクを伴っていた。

「行けぇぇぇ!」

サクラノヴァの全身が眩い光に包まれ、プラズマブレードがクロノ・バルディアの右腕を切断する。

「やった…!」

クラウディアが声を上げるが、その瞬間、クロノ・バルディアの胸部装甲が開き、新たな武器が現れる。それは高エネルギー収束砲だった。

「この一撃で貴様らを塵に変える!」

アルベリオの声が響き渡り、クロノ・バルディアがエネルギーをチャージし始める。

「まずい…この規模の攻撃を受けたら、この施設ごと吹き飛ぶ!」

悠真が通信越しに叫ぶ。その間も、クロノ・バルディアのエネルギー収束は進んでいく。

「やるしかない…!サクラノヴァの全出力を使えば、あの砲撃を止められるかもしれない。」

小春の決意は固まっていた。

小春は最後の切り札、「エターナルブレード」を発動する。このシステムは、サクラノヴァの全エネルギーを一点に集中し、最大限の破壊力を発揮するものであった。

「サクラノヴァ、お願い…!」

全身が赤熱するほどのエネルギーをまとったサクラノヴァがクロノ・バルディアに突進する。その刹那、クロノ・バルディアの高エネルギー収束砲が発射されるが、サクラノヴァはその光線を切り裂くように突き進み、エターナルブレードを敵の核へと叩き込んだ。

轟音とともにクロノ・バルディアが崩壊していく。だが、その爆発の余波でサクラノヴァも大きなダメージを受け、動きを止めてしまう。

「小春、大丈夫か!?」

通信越しに悠真の叫び声が聞こえる。

「…うん、なんとか…。」

小春は傷だらけの体で操縦席から顔を上げる。モニター越しに見える仲間たちの顔に、彼女は小さく笑みを浮かべた。

「これで…オーロラ計画を止められたはず…。」

だがその時、施設全体に警報が鳴り響く。

「警告!施設の自爆システムが起動しました。全員速やかに退避してください。」

「くっ、まだ終わりじゃないのか…!」

悠真たちは小春を救出するため、急いでサクラノヴァの元へ向かう。


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