組み立て
翌週の週末、私はまた明くんの家にお邪魔していた。私のパソコンの組立のためである。パソコンの中身は、私が酔っぱらっている間にいつの間にか決定していた。カサドンも同様のパソコンが欲しいと言うので、カサドンと真美ちゃんも来ている。私もカサドンもネットで部品を注文し、明くんの家着にさせてもらった。完成したパソコンは、持って帰るために近くのコインパーキングに車を止めてある。
荷物を置かしてもらって悪いなと思っていたが、部屋で見ると想像以上に箱がデカかった。大きいという表現ではとても足りない。そのデカい箱以上に存在感があったのは、こないだライブを鑑賞したメタルアイドルのポスターだった。修二くんは戦車、明くんはアイドルと、勉強以外のことに使えるエネルギーがよくあるなと思う。
いよいよ組み立てに入る。明くんの指導のもと、カサドンと私のパソコンが組み立てられるのだが、何故かネット経由で修二くんと父が参加している。
修二くん曰く「東海村でも札幌と同様に計算ができるよ」
父曰く「川崎にもどったときも、大学と同じように研究できるよ」
なんか似ているような事を言っていて怪しい。
そういうわけで中身が同じパソコンを4台いっぺんに作ることになった。違いはケースで、私は白、カサドンはブルー、修二くんと父は黒のケースになっている。約7000円。
まずマザーボードを箱から出す。いや、出すのを私は見ている。真美ちゃんが組み立てをやってみたいと言ったのだ。私もやってみたかったが、何故か全員が真美ちゃんが組み立てるのを強く強く賛成した。これは実験じゃないんだから、例の効果は関係ないと思うのだけれど。約20000円。
つぎはCPU。なんとか5である。私は明くんに7とか9でなくていいのかと聞いたのだけど、そうすると電源とかも強くする必要が出てきて予算オーバーしてしまうらしい。35000円。なお、最新モデルではない。リリースされてからしばらくして安定しているもののほうが、仕事には安全だということだ。
真美ちゃんは慎重にソケットにCPUを乗せ、付属のCPUクーラーを乗せた。
「うーん、プラスチックのピンがちゃんと入ってるかよくわからん」
とつぶやいている。明くんがそこに行って、
「ちょっと見せて」
と言ってマザーボードを裏返した。
「うん、大丈夫だね」
つぎはメモリー。私のノートパソコンの4倍も載せる。明くんがケチっちゃだめと言っていた。13000円。
「かったいなぁ」
カサドンが文句を言っている。真美ちゃんも指が痛いと言ってカサドンに甘えている。
いよいよ最高額パーツ、グラフィックボード45000円。
「ここで一回電源入れましょう」
明くんが発言した。電源ユニット(13000円)をつなげ、カサドンのはテレビ、私のは明くんのパソコンからモニターを借りてつなぐ。
私はのぞみと協力して、お茶とお菓子を用意する。
「それじゃあスイッチ・オン!」
明くんが合図を出し、みんなマザーボードにつなげたちっちゃいスイッチを押した。
ついモニターを見つめてしまう。画面がうつるまでがとても長く感じる。
私のがつながれたモニターはなんか映った。わーい。
カサドンのはだめだ。
修二くんのも映った。
父のはなんか真っ暗だ。
明くんは父のをチェックしている。その間に私とのぞみはお茶を配る。
「お父さん、電源のスイッチ入ってますか?」
「あ」
「カサドン、CPUクーラーのファンの配線忘れてる」
「あ」
明くんは私のをチェックしてくれたが、
「うーん真美ちゃん、メモリ1枚しか認識してないね。一回電源落として、メモリ抜き差ししてみて」
「うーん、痛い。カサドンおねがい」
「はいはーい」
明くんが次の指示を出す。
「次はSSDでーす」
「ハードディスクじゃないの?」
「お父さん、最近はこれです。速いです」
「ふーん」
真美ちゃんはマザーボードにSSDを指して、ドライバーでちっちゃいネジを固定している。
「これはかんたんだね」
「よし、ここでちょっと休憩しましょう」
明くんの提案で、みんなダラッとなった。
「これからいよいよケースに組み込んでいくからね。しっかり休憩しとこう。真美ちゃん、もう痛いのはないからね」
「よかった」
一休みして、いよいよケースへの組み込みが始まる。
「電源とグラフィックボード一回外しましょう。そのほうが多分組みやすいから」
みな言う通りにしている。
電源ユニットをPCケースの底の方に入れる。配線がうじゃうじゃと出てて、めんどくさそうだ。
そしてマザーボードをケースに入れる。
「ドライバーの先をマザーボードにぶつけないようにね。運が悪いと一発でパーになりまーす」
つづけてグラフィックボードも組み込む。
「配線にはいりまーす。ケースとの接続、マニュアルを見ながら慎重にやってください。あと、グラフィックボードの補助電源、忘れないようにしてくださーい」
父「老眼で見えん」
カサドン「真美先輩、もっときれいにケーブルまとめてください」
真美ちゃん「カサドン、やって」
OS(16000円)をインストールし、完成した。もちろん私は嬉しいが、真美ちゃんも喜んでいる。
車で家に運ぶためにケースの入っていた段ボールにパソコンをつめていると、真美ちゃんは、
「我が子を嫁に出すのはこんな気分なのかな?」
と言っていた。
「うちに来たとき、使わせてあげるから」
と言うと、
「姑には気をつけるのじゃぞー」
と、私は姑にされてしまった。まだ新婚なんだけど。
年末、私は川崎の実家に帰る機会があった。母は、
「最近お父さん、修二さんとなんかパソコンでやってるのよ」
と告げ口してくる。ちょうど父は外出していて、私は勝手に父のパソコンをみせてもらった。
父の書斎の椅子が変わっていた。なんか車のバケットシートみたいなのになっている。
パソコンを立ち上げると、キーボードとマウスが七色に光り始めた。無駄にかっこいいヘッドホンもつなげてある。
どんなアプリが入っているのか調べてみる。そしたらワールドなんとかタンクとかいうのが入っている。修二くんのパソコンにも入っていた。立ち上げてみたら戦車のゲームだった。
父はこのゲームを修二くんとやるために、パソコンを作ったのだろう。
父をとっちめるのが良いか、修二くんを問い詰めるのがいいのか、私はちょっと悩んだ。




