7、下校は先輩と
「おー、珍しく間に合いそうだな。加木」
私たちが生徒玄関に行くと、ドアの所に中肉中背の、五、六十代くらいの男性が立っていた。
「そりゃ、後輩いるんで。間に合わなかったら、中庭通らなきゃ帰れないし」
「後輩? 文芸同好会に?」
「そーなんすよ。重山さんが驚くのも無理無いっす」
「そうか。加木に後輩がねぇ。事務員人生、何が起こるかわからんな」
「そっすね。そんじゃ、さよーなら。重山さん。羽山、帰れそう?」
「あ、えっと。はい。重山さん、さようなら」
加木先輩に続いて、私も重山さんという事務員さんに挨拶をして玄関を出る。
「事務員さんと仲良いんですね」
「ん~。まぁ、知り合いだしな」
「お知り合いでしたか」
「そう。姉貴の事も知ってるし。もしかしたら、KiRaの事も知ってんじゃないか?」
「おお! それは、お話を聞いてみたいです!」
校門まで少し歩く。ここで先輩の事を少しでも知ることが出来たら、いいな。
「葉山は歩き? それともチャリだったりする?」
「自転車です。先輩はいつも何で来てるんですか?」
「俺は歩き。校門を出たら左だけど、羽山は?」
「私も左です」
「じゃあ、途中まで送る。流石にこの時間じゃ、女の子を一人にするわけにはいかない」
「大丈夫ですよ。街灯点いてますし」
「いやいや。最近、不審者情報多いからさ、危ない」
そういえば、小牧先生も言ってた。小学生の後をつけたっていう不審者が出たとか。
私は自転車だから、逃げようと思えば逃げれるけど。
「同じ方向なのに、羽山を一人にしたなんて、竹ノ内先生に知られたら、俺の命が危ない」
本音は多分こっちなんだろうな。それでも、私を心配してくれてるから、お言葉に甘えよう。
「ありがとうございます。先輩。自転車、持ってきますね」
そう言って駐輪場に向かった。
駐輪場には五人の男子生徒がいて、談笑中。私の自転車の辺りに男子生徒がいるもんだから、私の自転車が出せない。
どうしよう。早く自転車を持って行かないと、加木先輩が。
「そこ退いて。俺の後輩が、チャリ出せねぇ」
私の背後から声がして、声の主が私の前に現れた。
「加木かよ。この時間まで寝てた?」
「あ? 普通に部活してた。後輩が」
「へぇ。ぐーたら同好会に、後輩が入ったん?」
「物好きな後輩がな。いいから、そこ退いて。帰れねぇだろうが」
「へいへい。どーぞぉ」
加木先輩の同級生だろうか。仲が良さそうとも、悪そうとも言えない様な関係性に見える。
退いてくれたことにお礼と謝罪をして、私の自転車を動かす。
「そんじゃ、俺らは行くわ。またな小川。早くエプロン返せよ」
「それは明日な!」
やっぱり仲が良いのだろうか。誰かと群れるのが苦手と言っていたけれど、加木先輩にも友人はいた。
「ったく。小川の奴が悪かったな。あんなとこで、喋ってんだから」
「いえ。こちらこそ、ありがとうございます。先輩が声を掛けてくれなかったら、どうしようかと思ってました」
「小川は悪い奴じゃないんだけどな。ただ、ぐーたら同好会は言い過ぎだよな。一応活動してるんだし」
「加木先輩にも、お友達いるんですね」
「いるよ。少ないだけだし、一人でいる方が楽なだけだし」
「そうでしたか」
方向が同じという理由で、送ってくれている加木先輩。これから少しずつ先輩のことを知っていこう。




