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3、世間と政治と部活の話

 本当に、部員は一人だった。

 この三年生の加木先輩が、部室に入り浸っていると噂の先輩。


「一年だよね? そのリボンタイだと」

「はい。一年の羽山あおばです」

「何組? オレは二組」

「私も、二組です」

「マジで? ヤバイな。体育祭、一緒じゃん」

「そうなんですか」

「うん。食いかけだけど、ポテチ食べる?」

「はい。いただきます」


 あれ? 世間話になってる? 政治の話に進展する前に、部活の話をしよう。


「ジュースは? オレンジとメロンソーダがあるけど。コーラはオレのだから、やれない」

「メロンソーダ、貰っても良いですか?」

「ほーい。紙コップは、そっちの本棚に……。あれ? 無かったか。わりぃ、これそのまま飲んで。開けてないから、何もない」

「あ、はい。すみません、ありがとうございます」


 そろそろ、部活の話を……。


「んで、食ったり飲んだりしながら、聞いて」

「はい」

「この同好会の噂は、聞いてると思うから、言わないけど。オレだって一応授業は受けてるから。そうじゃなきゃ、今頃退学してる」

「そうなんですか」

「登校後すぐに部室だし、昼休みも部室だし。帰りのホームルームが終われば、すぐに部室」

「そんなに、ここが好きなんですね」

「好きって言うかさ、誰かと群れるのが、嫌いでさ。ここに来れば、誰もいないから、落ち着く」


 噂は、嘘か真か。加木先輩がこう言っているなら、これが真実。


「まぁ、言いたい奴には、勝手に言わせてる。だからさ、羽山は物好きさんだよ。そういう噂があっても、ここに入りたいとか」

「私は、中学生の時に、ここの文化祭に、三年間来てました。最初は、好きな歌い手さんの、出身校って理由だったんです」

「あー、はいはい。KiRa(キラ)ね。小牧先生って、数学担当の先生、知ってる?」

「担任の先生です」

「マジかよ。あの人、KiRa(キラ)の二人と同級生で、名付け親のひとり」

「そうなんですか!? 結成当時を知っているんですか!?」


 小牧先生、そんなこと一度も、一言たりとも言ってくれなかった! なんだか悔しい!


「まぁまぁ。落ち着け? それで、文化祭に来て、どうだったのよ?」

「文芸同好会の販売エリアで、この小説と出会ったんです」


 鞄の中から、四六判サイズの薄い冊子を取り出す。

 表紙にはタイトルとペンネームの《ツバタ》の文字。

 加木先輩は表紙を見るなり、驚いた表情をしている。


「この《ツバタ》さんの小説と、中学二年生の時に出会って。このお話、私は凄く好きで。それで私、《ツバタ》さんに会いたくて。私も書いてみたくて」

「ふーん。会えると良いな。って、部員はオレだけだけど」

「加木先輩じゃないんですか?」

「どうだろうねぇ。オレかもしれないし、オレ以外の幽霊部員が、いるかもしれないし」

「神のみぞ知る感じですか?」

「ん~。まぁ、そんなとこ」


 加木先輩が何を考えているのか、出会って数十分の私には分からない。

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