10、いつもと違う昼休み
「今日のお昼、一緒に食べれないの⁉」
「ごめんね、向井さん。ちょっと小牧先生に呼ばれてて」
「あー、朝何か話してたもんね。うん。分かった」
何か言われてしまうのではないか。そんな不安がずっと気持ちを支配していく。
でも、KiRa のことが知りたい。その一心で、お弁当を持って部室へ。
「お疲れさまでーす」
部室の引き戸を開けると、すでに小牧先生が来ていた。
「おつ~。来たな。あとは翼だけか」
「えーと、加木先輩も何か関係あるんですか?」
「ん? まぁな」
少しして購買のパック詰めされたチャーハンと、紙袋に入った唐揚げとポテトのセットを持った加木先輩が部室へ来た。
「えーと、義兄さん。じゃなくて小牧先生、何してるんすか? 俺の姉がいながら、教え子に手を出そうなんて」
「来たな。もしかして、送ったチャット見てない?」
「授業中は見れないでしょ。ついさっき見ましたけど。何考えてるんすか。俺の昼休みぶち壊す気ですか?」
「KiRa のことで、少し話ておきたいことがあるんだ。まぁ、座ってくれ。食べながら聞いて」
加木先輩がいつもの所に座り、小牧先生が私が座っている方に座ったから、空いている椅子は、加木先輩の隣だけ。
「羽山、ここ空いてる。俺の隣で悪いけど」
先輩に促され、空いている椅子へ。
「羽山の弁当旨そうだな」
「ありがとうございます。高校生になってから、自分で作ってます」
「マジで⁉ 聞いたか、翼!」
「先生だって、彼女の手作り弁当でしょうが」
「そりゃあ、同棲してますし?」
「何で喧嘩腰なんすかね? 良いから早くKiRa のこと話してくださいよ」
加木先輩はチャーハンを食べながら、ポテトをつまみ、唐揚げは一口で。
「翼からどこまで聞いたのか知らないけど、一応、学校としては、ここがKiRa の出身校であることは、隠してる。だから、KiRa の事は話しても良いけど、SNSとかにあげるのは無しにしてな。話をしてて、人づてに聞いたとかは全然良いけど」
「グループチャットもダメですか? クラスの子達とかに話したりは?」
私もお弁当を食べながら、小牧先生に質問する。
「出来ればやらないで欲しい。どこで情報が漏れるか分からない」
「分かりました。話す分には大丈夫なんですね」
「節度は守ってくれ。それだけだ」
小牧先生は彼女お手製のお弁当の、卵焼きを一口でパクり。
「今はファンの暴徒化もあり得るし、アンチ勢が乗り込んでくる可能性もある。そう言うことっすか?」
「そう。そう言うこと。あと、俺と翼の姉が付き合ってるのは良いけど、晶楽と涼香のはトップシークレットでよろしく」
超人気歌い手の出身校となれば、ファンやアンチ勢がどう動くか分からない。私のように入学する可能性だってある。
KiRa のことで、KiRa の二人が悲しむことや、学校に迷惑をかけることだけは、やらないようにしよう。